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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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番外編 エルネット編 奴隷

今日は皆、どこに行ったのだろう?

俺はそう思いながら屋敷の中を見て回る。

朝、怜華さん達が来たのは知っているのだが、それからどこに行ったのかは知らないんだよな。

う~ん、今日は1人でお留守番かな?

俺がそう思っていると、


「ここは私がやります!」

「いえ、私が」


ルリィとエルネットの声が外から聞こえる。

俺はその方向に歩いて部屋の窓から外を見ると、エルネットとルリィが鎌を手にして臨戦態勢になっている!?


「ちょ、ちょっと2人共!危ない事しちゃダメだよ!」


俺が慌てて窓を開けて2人に大きな声でそう言うと、エルネットとルリィが体をビクッとさせた後、俺の方を向いてくる。

その顔は、2人共拗ねた様なムッとした顔だった。

その後、一度屋敷に入ってきた2人は今度はどちらが俺にお茶を入れるか、どのようなお茶が良いのかで言い争いを始めてしまう。

言い争いといっても、これがいいと思うとか互いの意見を主張していて悪口などを言っている訳ではない。

この2人、こんなに普段から言い争いをしていたっけ?

俺がそう思っていると、


「旦那様には、このエルフの森で採取した薬草のお茶が良いと言っているんです。旦那様は日々勉学に励んでおり、疲れているはずです」

「私はこのハーブティーがおすすめです。ご主人様はエルネット様の言う通り勉学に集中していますので、目に良いと言われている葉を厳選しました」


2人がそう言って互いにお茶を出し合い、それぞれが相手の推薦したお茶を口に含むと、


「…及第点でしょう。葉の匂いがキツクならない様にされており、とても飲みやすくなっています」

「美味しいです!このどうやったらこの深みが出るんですか?」


互いに褒め合う。

仲良いな~。

俺が微笑ましい光景に頬を緩めてその光景を見ていると、


「…分かりました。今日はルリィさんのお茶を旦那様に出しましょう」

「いえ、エルネット様のお茶を出すべきです!」


今度は相手のお茶を薦め始めてしまった…。

またもや意見が分かれた2人は、


「「むぅ~~~~ッ!」」


互いの事をにらみ合う…。

なんていうか、仲が良すぎる所為で衝突しているな。

俺はそう思い、


「ルリィ、エルネット!今すごく喉乾いてるから2つ共飲みたい気分なんだ!」


にらみ合うルリィとエルネットに声をかけると、2人が凄い勢いで俺の元にやって来る!?

よ、よく溢さなかったな…。

俺がそう思っていると、


「どうぞ、旦那様」

「どうぞ、ご主人様」


2人は互いの薦めたお茶を差し出してきた…。

えっと、ルリィが持っているのがエルネットの淹れてくれたお茶で、エルフの森の薬草が使われた物だったよな。

それで、エルネットの持っているお茶がルリィが淹れてくれた、目に良いハーブティーだよな。

少し混乱しながらも、


「2人とも、いただくね」


俺はそう言ってお茶を飲む。

ルリィが差し出してきたエルフの森の薬草が使われているお茶は、少し苦味があるのだが渋味は無く、少し甘みを入れてくれているのか飲みにくい事もない。

丁度良い苦さということだ。

俺はそれを飲み干すと、今度はエルネットが差し出してきたハーブティーを飲む。

爽やかなハーブの香りが口の中に広がり、意識を覚醒させるような爽やかな刺激がある。

どっちも同じお茶なのに、全くと言っていい程違うんだな~。

俺がそう思っていると、


「旦那様、どちらの方がより旦那様の好みでしょうか?」


エルネットがそう聞いてくる。

その質問に俺は、


「好みと言うよりも、2つとも飲みたいと思う時があると思うんだ。エルネットが淹れてくれたお茶は少し疲れた時や眠たい時に飲みたいを思った。反対にルリィの淹れてくれたお茶は、あの爽やかさを活かして寝起きとか、勉強の合間に飲みたいと思ったかな」


自分が思った事を2人に伝える。

すると、


「…やはり、手ごわい」

「まだまだ努力しないといけませんね!」


何故か2人は互いの事を意識した様子でそう言う。

仲が悪い訳では無いのだが、互いの事をライバルと意識しすぎている様な気がするな。

俺がそう思っていると、


「次は、掃除。私が旦那様の最初の奴隷だという事を証明する」

「負けません!私がご主人様の1番の奴隷だという事を知らしめてあげます!」


2人はそう言って失礼しますと言って食堂から出て行ってしまった…。

…まさか互いのライバル視していた意味が、俺の最初の奴隷という立場とは考えなかった。

出会った時期で言うとエルネットが最初ではあるのだが、彼女とはすぐに奴隷の契約を解除した。

その後に出会ったルリィとの関係は専属のメイド的な立場なのだが、ルリィの手首には俺との契約印が施されている。

奴隷に近い立場は、ルリィの方なのかな?

俺はそう思いつつ、前にエルネットが自分が俺の1番の奴隷と言う発言にもう奴隷じゃないよと言った時、とても悲しそうな表情をしていたのを思い出す。

2人とも、過去に色々あったのに俺の奴隷を名乗りたいのかな?

でも、2人はすでに俺とは深い関係を築けているから、奴隷という立場で争うのは止めて欲しいと思う。

喧嘩と言うより、じゃれ合っているのは分かる。

それでも、出来れば2人にはもう少し仲良くしてもらいたいと思っている。

会話とかも含めて。

俺がそう思っていると、


「ここはこうした方が良いですよ。この紙で窓を拭くと綺麗になります」

「なるほど、書き物をする以外に使い道が」


ルリィとエルネットがそう言っているのが聞こえる。

食堂の扉から廊下を覗くと、廊下の窓の前でルリィが俺達の世界から買った霧吹きを持って、新聞紙を濡らしながら窓を拭いていく。

それを見ていたエルネットも、ルリィが拭いている窓の隣をルリィと同じように霧吹きで新聞紙を濡らした後に拭き始め、


「こうですか?」


ルリィに確認している。

そのエルネットの言葉に、


「そうですそうです!その調子でお願いします」


ルリィが嬉しそうな声を出す。

…やっぱり無理に何かを言わない方が良いかな?

俺がそんなルリィとエルネットの微笑ましい光景を見ながらそう思った瞬間、


「これで、私がご主人様の1番である事を認めて下さいますね?」


ルリィのそんな言葉が聞こえ、


「そんな事は無い。むしろどんな手でも使って旦那様に尽くす私が1番」


ルリィの言葉に、エルネットが反論する声が聞こえた…。


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