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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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番外編 リザベルト編 悪戯

リザベルトさんの言葉を聞いて、俺はまた弄られている事に気がつく。

大体の話は本当だろうけど、そこまで話しておいて結果がまだわからないというのが怖い。

その小説では結局、そのドロドロな関係になった家族の結末が知りたい…。

…気になって仕方がないのだが…。

俺がそう思っていると、リザベルトさんがまた頭を撫でてきた。

そして、


「シュウ君となら、皆幸せになると信じてるわよ。シュウ君は鬼畜かもしれないけど、それ以上に私達がそんなシュウ君がいないと生きていけないのだから。ルネリアちゃんとか、こことは別の世界の皆はどうか分からないけれど、私や怜華ちゃんとかはもう駄目ね。シュウ君がいなくなったらさっさと後を追うに決まってるわ。シュウ君と歩めない未来なんて、いらないもの。それにもう、愛する人が亡くなってしまった気持ちを耐える事は出来ないと思うわ」


そう言ってくる…。

リザベルトさんの言葉は嬉しいと感じると共に、リザベルトさん達の事を考えると俺も命を大切にしないとと思う。

確かに、今の俺の命は俺だけのものではない。

皆の命も託されていると考えたほうがいいな。

俺がそう思っていると、


「だから、シュウ君は私達を殺さないでね?約束ね?」


リザベルトさんがそう言ってくる。


「はい」


俺はリザベルトさんの言葉に、短くてもはっきりと力強く返事をした。

すると、リザベルトさんが頭を撫でていた手を移動させて俺の頬に触れて撫でてくる。


「シュウ君って不思議よね…。勇ましい部分があるのだけれど、それとは別に幼いというか…母性本能を刺激してくる部分があるのよね。だからつい何回も撫でちゃうのよ」


俺の頬を撫でてくるリザベルトさんが、少し不思議そうな顔をしながら手をひたすら動かす。

…自覚は無かったが、俺って幼いのか?

いや、ハイエルフであるリザベルトさんの年齢と比べると全然子供と言われても仕方がないとは思うが、これでも頑張ってるんだけどな…。

俺がそう思っていると、


「…今シュウ君、何か失礼な事考えなかった?」


リザベルトさんが少しムッとした顔をして、頬を撫でていた手で頬を抓ってくる…。


「か、考えてませんよ」


抓られている所為か少し話し辛くなっている状態で、俺はリザベルトさんにそう言う。

いつも思うのだが、リザベルトさんは勘が鋭い。

俺がそう思っていると、


「そう言えばシュウ君、エルネットはどうかしら?」


リザベルトさんがそう聞いてくるのだが、何を聞かれたのか俺には分からない。


「どうって…どういう事ですか?」


俺がそうリザベルトさんに聞き返すと、


「子供の事よ。ちゃんとシテるの?」

「ブッ!」


リザベルトさんが、今の穏やかな空気を壊す話題を聞いてくる。


「その反応はどういう事か聞かないわよ~。…エルフって子供が出来にくいのよ。食べてる物がいけないのかしら?」


そう言うリザベルトさんに、俺は意外と真剣な問題なのかもしれないと思い、


「まぁ、それは俺には何とも言えないですが…」


言葉を濁す。

流石に母親に、娘さんとの夜の交流を話す訳には…あっ、いつも一緒だわ…。

俺がそう考えて、こう思うと皆プライベートな時間取れているのだろうかと心配してしまう。

俺がそう思っていると、


「まったくエルネットは、私より…私より胸が大きいからって…成長したって言わなくても良いじゃないッ!!」

「イテ…」


リザベルトさんがエルネットさんに怒りだして動いてしまった所為で、俺はリザベルトさんの膝から頭がずり落ちてしまった。

いつもは優雅で凛々しいリザベルトさんも、娘に胸を誇らしげに見せられるのは嫉妬するのだろう。

…たまに春乃とコソコソ内緒話をしているのは、胸の事を話しているのではないだろうか?

俺がそう思っていると、


「シュウ君、胸は大きいのが全てじゃないわよ。分かってるわよね?」


虚ろな目で俺の事を見てくるリザベルトさんに、


「その通りですよね!!」


俺は恐怖でそう答えるしかない。

お母さんが怒ったら怖いのだ…。

俺にはどうする事も出来ない…。

俺がリザベルトさんの事を見ながらそう思っていると、リザベルトさんの周りをクルクル回る緑色の光の玉が見える。

リザベルトさんが使役している風の精霊だろう。

何やらリザベルトさんに訴えている様だ。


「…?どうしたの?」


リザベルトさんもその事に気づいて、風の精霊に問う。

リザベルトさんがそう問うと、風の精霊が付いて来てと言う様に森の奥へ誘ってくる。

俺はそれを見て、


「森の奥って、何かありましたっけ?」


リザベルトさんに質問すると、


「大切に管理してきた樹木以外は無かったと思うのだけれど…」


リザベルトさんが俺の質問にそう答える。

俺とリザベルトさんはそう言い合いながら立ち上がって、風の精霊の後を追いかけ始める。

こうやってエルフの森を歩いていると、少し昔の事を思い出してしまう。

まだリザベルトさんやエルネットと友好的では無かった頃、初めてこの大木が生い茂るエルフの森に入った時はエルフの皆に警戒されて軟禁とかされたな…。

俺がそう思っていると、風の精霊がリザベルトさんの傍にやって来て少し急いで欲しそうにしている。

俺には精霊の声が聞こえないが、リザベルトさんにはどう聞こえているのだろう?

俺がそう思っていると、


「ッ!それはマズいわ!」


リザベルトさんが慌てた様子で声を荒げると、精霊の後を駆け足で追いかける。

俺は何が起きたのか理解できずに、とりあえずリザベルトさんと風の精霊の後を追いかける。

そうして2人の後を走ると、風の精霊が1本の大木の根元に近寄る。

リザベルトさんも風の精霊と同じ所に近寄ると、しゃがみ込んで何かを丁寧にすくい上げる様に手に持つ。

俺は邪魔にならない様に少しリザベルトさんから離れた位置でリザベルトさんの手の中を見ると、そこには弱弱しく光っていてもう少しで消えてしまう様な光の玉が収まっている。

…俺には精霊の事は分からないが、それでもリザベルトさんの手に乗っている精霊が弱っているくらいは分かる。

何かあったのだろうか?

俺がそう思っていると、


「もう大丈夫よ。貴女は成し遂げた、これ以上は飛ばないで」


リザベルトさんが、優しい声で手に乗っている精霊にそう囁いた。


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