番外編 エルミール編 肌
俺にそう言ってくるエルミールの言葉を聞いて、俺は彼女がそこまで自分の体を受け入れている事に嬉しく感じると共に、その原因は自分だという事を聞いて恥ずかしい感じがする。
俺は別にそこまで大層な言葉をエルミールに言った訳では無いが、それでも彼女の心が少しでも癒えたのなら誇らしい気持ちだ。
「そ、そっか。…ありがとう」
俺がそう言ってお礼を言うと、
「?お礼を言うのは私の方ですよシュウさん」
エルミールが不思議そうな顔をした後にそう言ってくれる。
そんな事ないよ、そう言おうと口を開いた瞬間、
「それで、どれがよろしいでしょうか?」
エルミールが俺にそう聞いてくる…。
エルミールって元々押しが強かったが、ここ最近は更に強くなった気がする。
俺はそう思いながら、
「いや、やっぱりメイド服はあのままで十分だよ。特に変える必要は無いね」
そう答える。
すると、少し顔を不満そうに歪めたエルミールが、
「決めて下さらないのですか?」
俺にそう聞いてくる…。
元々凛々しい雰囲気を纏っている人が不満そうな顔をすると、悪い事をしていないのに責められている様に感じる。
というか、そこまでメイド服を変えようとする理由は、もっと別の事なのかもしれない。
俺はそう思い、
「そこまで言うなら、エルミールだけこの格好が良いかな」
エルミールの渡してきた紙の1枚を彼女に見せながら、少し意地悪な事を言う。
「わ、私だけでしょうか?」
すると、エルミールが不満そうな顔から一転、恥ずかしそうに頬を赤く染めて狼狽える。
「そうそう。提案者のエルミールが1人でやってみせてくれて欲しいな。それで、本当に変更しないといけないか決めるよ」
俺がそう言うと、エルミールが視線を泳がせる。
予想以上に効いているな。
このまま、恥ずかしいので出来ませんと言ってくれれば、
「じゃあ、他のメイドさんも恥ずかしくてお仕事に問題が出るかもしれないから、変更は無しだよ」
と、自信を持って言えるのだが…。
もしも、エルミールが恥ずかしさに勝って露出が凄いメイド服を来て、
「私が着れるので、他の人でも大丈夫でしょう」
と言われたら、そこから更にエルミールとの交渉が始まってしまう。
俺がそう考えていると、
「分かりました。とりあえず今は手元に服が無いので、予備のメイド服を弄って簡易的な物を作ってみましょう」
エルミールがそう言ってきた。
…だ、大丈夫だ。
まだ前向きではあるが、服を着てみたら予想以上に恥ずかしいという事になる可能性がある。
俺がそう思っていると、
「少し改良してきますね」
エルミールがそう言って俺の部屋から出て行ってしまった…。
エルミールが肌を出す服を着てくれる様になったのは素直に嬉しいが、その結果仕事着も露出が高いメイド服を着ようとするのはあまり良いとは思えない。
正直に言ってもエルミールだから大丈夫だとは思うが、エルミールにとって肌の事に関する事は繊細な事だ。
下手に言ってしまって、誤解を生みたくない。
あと、あのメイド服で人前に出て欲しくないという、俺の嫉妬心的なモノもある。
エルミールは自身の事を気にしていないが、俺や周りから見たら美人なのだ。
そんな人が露出の多いメイド服なんか着て歩いていたら、周りの人達の目を引くだろう。
…やっぱり駄目だ、エルミールのそういう姿を他の人に見せたくない。
最悪、ティアとコレットさんに協力してもらうしかないかな?
俺は自室でそう考えて数分後、扉が再びノックされた。
「どうぞぉ」
俺がそう言うと、扉が開いてエルミールが中に入ってくる。
「早かったね」
俺がそう言うと、
「はい、基本的に簡単に切ったりしただけですので、それほど時間は必要ではありませんでしたから」
エルミールがそう答えてくれる。
そしてエルミールを見た瞬間、俺は固まってしまう。
エルミールは、俺に見せてきた書類の中から自分が着に言っているモノを簡易的に作って着て来るのかと思ったのだが、それが間違っていた様だ。
エルミールの姿を見て、俺はそんな事を考える。
今俺の目の前にいるエルミールの姿は、袖が二の腕までしか無く腕はしっかりと露出されており、スカート部分は膝の上くらいまでしか無く、脚すら露出している始末、そして最後は、胸元に開いているハート形の穴!
…それどういう意味があんねん…。
そんな言葉遣いになってしまう程、今のエルミールの姿は俺の予想を遥かに超えていた。
「ど、どうでしょうか?」
流石にエルミールも作って気が付いたのか、今自分がどれだけ恥ずかしい格好をしているか理解しているのか、少しスカート部分を気にしている。
だが、今俺が言うべき事は、
「いけませんッ!」
彼女の提案を却下する言葉だ。
普段なら、なるべく皆の意見とか良いよと言いたいのだが、流石に今回のエルミールの提案は却下する。
これは…、気軽に良いよと言う事は出来ない。
俺がそう思っていると、
「む………。…まぁ、少し弄り過ぎてしまいましたね」
俺の言葉を聞いたエルミールが不満そうな顔をしたが、それも自分の格好を少し見た後に自分がやり過ぎてしまったと認める。
よし、この流れで攻めよう!
俺はそう心に決めると、
「そうだよエルミール。いくら何でもそれはやり過ぎだよ。エルミールがそのくらい肌を見られても良いという決心は伝わったけど、正直城がその露出し過ぎていると言っても過言ではない服を着たメイドさん達が仕事をしていたら、なんか色々と心配になるよ」
エルミールにそう言う。
エルミールが肌を皆に見られても良いという考えは喜ばしい事だが、それとこれは話が違う。
何より、城で働いているメイドさん達も可哀相だ。
俺がそう思っていると、
「…そうでしたね。では、もう少し布はそのまま残しておきましょうか」
エルミールがそう言う…。
これは、俺から少し意見を言った方がよさそうだな。
俺はそう思い、
「寒い時期は、今の格好かそれより重ね着をしても良いと思うよ。反対に暑い日に、エルミールが提案してきた半袖くらいのメイド服とか、スカートの丈が少し短いメイド服が良いと思うな。その方がメイドさん達も少しは過ごしやすくなると思うし」
俺が何かを考えているエルミールにそう提案すると、
「…そうですね。ではこのメイド服は、この屋敷限定にしましょう」
そう言ってきた…。
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