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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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番外編 コレット編 唯一

敬語とさん付けナシの提案があってから、俺は意識をしながらコレットに敬語じゃなく話している。

すると、コレットがすれ違う男性を避ける時に大きく移動している事に気がつく。

そういえば、コレットは男性が苦手だったな。

俺はそう思い、


「ごめんコレット、少し人がいない広い空間に行こうか?」


コレットにそう問う。

すると、コレットは安心した様子で、


「頼むわシュウ。ちょっと緊張しすぎちゃって…」


そう言ってきた。

その後、俺とコレットはショッピングモールの広場の様な空間の隅にある椅子に座る。

その隣にピッタリとくっ付いてくるコレット。

顔を見ると、少し顔色が悪い。


「大丈夫?飲み物買ってこようか?」


俺がそう聞くと、コレットは何も言わずに首を振る。

どうやら、離れない方が良い様だ。

俺はそう思い、コレットが落ち着けるように背中を撫でる。

それから少しの間、俺達は何も話さないで前を通り過ぎる人達を見つめる。

すると、


「シュウは、私がどうして男嫌いになったか聞かないわね。…私の過去に興味無い?」


コレットがそう言って自嘲的に笑う。

俺はコレットの背中を撫でていた手を止めて、


「そんな事ないよ。ただコレットの男の人が苦手って、結構根深い気がしてね。下手に聞いていいか分からなかったんだ。俺が質問する事でコレットが嫌な思いをすると考えたら、勇気が出なかった。…ごめん」


そう言う。

俺の言葉を聞いたコレットは少し苦笑をして、


「…良いのよ。シュウがそこまで考えてくれているなんて、私は分からなかったもの。私の方こそ、シュウに嫌な言い方をしたわ。ごめんなさい」


俺に謝罪をしてくる。

俺口を開こうとすると、


「だから、シュウには知ってもらいたいの。私が男嫌いになった理由を」


続けてコレットが真剣な眼差しを俺に向けながらそう言った。

俺はコレットの言葉に、


「うん。俺もコレットの事、色々と知りたい。…でもここじゃ人が多いから、移動しよう」


そう言い、先に立ち上がってコレットに左手を伸ばす。

すると、


「そうね。ありがとう」


コレットは俺にお礼を言って、俺が伸ばした左手を掴んで立ち上がる。

それから俺とコレットは、ショッピングモールを後にした。

道中静かな場所に行こうとしたのだが、今日は休日の事もあって人が賑わっていた。

結局コレットの提案で、最近コレットが楽しんでいるコンビニのデザートを買って家に帰ってきた。

俺の部屋に入ると、コレットが改めて、


「…シュウの部屋、ほぼ真ん中に扉があって邪魔じゃないの?」


そんな事を言ってくる…。

最初は慣れないで寝起きとかぶつかったりしていたけど、今はもう慣れてしまった様だ。

特に邪魔だとは感じない。


「今は慣れちゃって邪魔じゃないかな」


俺がコレットの質問に答えると、コレットは少し不満そうに俺の部屋の隅に置かれているテーブルにコンビニで買ったデザートを置いて、静かに座る。

…コンビニのデザートって以外に高いのもあるんだな。

俺はコレットが食べたい物を買った時の事を思い出して、寂しくなった財布を机の上に置く。

自分の持っていた持ち物を机の上や脇に置いてコレットの元に行くと、コレットがどれから食べようか迷っていた。

…今から真面目な話をするんだよな?

俺がそう思っている内にコレットは最初に食べるデザートを手に取って、


「シュウ、いただきます、ありがとうね」


俺にそう言ってから開封する。

俺がそれを見ながら、コレットってどれだけ食べられるんだろうと考えていると、


「それで話の続き。私が男嫌いになった原因だけど、3つあるの」


コレットが俺にそう言ってきた。

俺はコレットのお腹の限界の事を頭から消して、


「3つ?」


そう聞く。


「そう、1つは、母様と一緒に王国の見回りをしていた時に母様は冒険者とよく交流していたの。それで、汗臭いし声は荒げるしなんか腕は太過ぎるし、別の生き物だと思ったわ。小さな頃の私は、それが恐怖だったのよ。喧嘩っ早いのも、結構怖かったわ」


コレットのその言葉を聞いて、確かに小さい女の子が冒険者を見たら第一印象は怖いだろう。

しかも少し偏見だけど、ティシール様の交流がある冒険者って聞くと、腕は良いけど荒くれ者のイメージが…。

俺がそんな失礼な事を考えていると、


「2つ目は、母様と国民が町の整備が甘くて困っている所が無いか探してる時に、誘拐されたの。その時も男だったから、それも恐怖心を煽っていたのね。その結果、男は怖い者って思ったわ」


コレットが衝撃的な言葉を口にする。


「そ、それで大丈夫だったの?」


俺がそう聞くと、コレットは苦笑して、


「一緒にいたのが母様よ。すぐに見つけてくれて母様の手で死刑。嘘偽りなく本当にグチャグチャになったわ。助けてくれたのが母様じゃなかったら、その人の方が恐怖の対象になっていたと思うけどね」


そう言った。

確かにコレットの言う通り、幼い頃にそんな体験をした後にグチャグチャの死体を見たら、トラウマものだ…。

俺がそう思っていると、


「母様もその事があって、見回りの時に私を連れ出さない様にしていたのだけれど…。それが無かったらエルミールとも出会えなかったし、母様との時間が無くなったのも少し寂しかったわ」


コレットがそう呟く。

一概に駄目な事では無かったんだな。

俺がコレットの話を聞いてそう思っていると、


「それで、3つ目が他国の貴族や王族との会合での視線。あれが一番嫌だったわ。皆私の事をコレット・サンレアンとしてじゃなく、サンレアン王国第二王女としか見てくるの。欲望が渦巻いているその目に見られるのが、私は嫌いだった。多分。これが1番男を毛嫌いしている原因だと思ってるわ」


コレットがそう言って顔をしかめる。

当時の事を思い出しているのだろう。

俺がコレットの顔を見てそう考えていると、コレットの表情が笑顔になり、


「でも、シュウは私の事を唯一コレット・サンレアンとして見てくれているわ。それが、私にとって不思議で嬉しかったわ。まぁ、最初会った時は不躾だと少し思ったけどね」


そう言ってきた。

その言葉を聞いて、俺は少し苦笑した。


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