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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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番外編 コレット編 敬語

俺は今、コレットさんと一緒にある場所に来ていた、


「シュウ!これ美味しいわよ!」


それはたまに出掛けるショッピングモールの中で経営しているお菓子店のケーキの食べ放題である。

今日の朝、コレットさんが好きそうだったからこんな事をやっているんだよと教えに行ったら、


「すぐ行くわよシュウ!」


コレットさんは俺の手を引いて走り出したのだ。

そして途中でどこでやっているのか分からない事に気が付いたコレットさんが脚を止め、


「…どこでやっているの?」


涙目で俺にそう聞いてきたのだった。

そんな事がありつつも、俺とコレットさんはお菓子店に辿り着く事が出来た。

目の前で丁寧に食べつつ、ほぼ一瞬でケーキを平らげるコレットさんを見て、俺は少し前にダイエット的な事をすると言っていたコレットさんを思い出していた。

向こうの世界では貴重な砂糖も、こちらの世界では手に入る。

最近はルリィが作るお菓子にも砂糖がよく使用されていたな。

ただ、ルリィは素材の甘さを活かすお菓子を作り慣れているみたいで、砂糖はなるべく使わないと言っていたな。

俺がそう思っていると、


「ほらシュウ!これも凄く美味しいわよ!」


コレットさんが、一口サイズに切ったケーキをフォークで刺して俺に差し出してくる。

所謂、あーん、というやつだ。

ただ、コレットさんは単純に美味しいケーキを俺に食べさせようとしているだけなので、あまり深い意味はない。

それにしても、コレットさんは結構な数食べたのに食欲が落ちる事が無い。

俺なんて5個食べた時には、少しキツイと思ったのに…。

甘い物を食べる時、コレットさんは無敵だ。

おそらく我が家で一番を名乗れるくらいだ。

俺はそう思いながら、コレットさんが差し出してきたケーキを食べる。

…口に広がる甘みと果実の酸味。


「お、美味しいけどコレットさん?俺はもう限界が近いです…」


俺がそう言うとコレットさんは呆けた表情をした後、少し不機嫌そうな顔になって、


「まだ10個も食べてないのよシュウ!まったく、情けないわよ」


そう言う…。

俺が情けないと言うより、コレットさんが逞し過ぎるのではないだろうか?

だがそんな事を言ったら、フォークが額に突き刺さるのは目に見えている…。


「それより、コレットさんはどうですかケーキ?」


俺がコレットさんにそう聞くと、コレットさんは凄く良い笑顔で、


「とっても良いわ!味も美味しいし種類も豊富!時間制限は仕方がないと思うから何も言わないわ。確かに時間に制限が無かったらずっと食べてられるものね」


そう言い切った…。

コレットさんのお腹は一体どんな異世界に繋がっているのだろうか?

俺がそんな馬鹿らしい事を考えながらコレットさんを見ていると、


「んぐんぐ…そう言えばシュウ、この前姉様と将来について話し合ったそうね」


コレットさんは思い出した様にそう俺に聞いてくる。


「あ、あぁ~、確かにしましたよ。まさかサンレアン王国では長期間の寝食を共にしたら、婚姻関係になるなんて知らなかったですよ。こちらの世界とは違うんですね」


俺がそう言うと、今まで嬉しそうにケーキを食べていたコレットさんの顔が不満そうになる。

な、何か変な事を言ってしまったかな?

俺が自分の言った事を思い出しながらそう考えていると、


「じゃあいい加減、私の事をコレットさんなんて他人行儀みたいな呼び方をしないで欲しいわ。なんて言うか、変な感じなのよ。何でさん付けをしているの?後敬語も」


コレットさんが俺にそう聞いてくる。

俺はコレットさんにそう言われて、


「初めてコレットさんに会った時に、何て言うか尊敬の気持ちが強くて敬語を使ってる感じなんですよ。国の為に自分の幸せを犠牲にしてでもサンレアン王国を護るって言うコレットさんが、今現在でも心の強さで敵わないと思っていて…。上手くは説明できないんですけどね」


正直な気持ちをコレットさんに話す。

彼女と初めて会った時、彼女はサンレアン王国の為に自分を売る様な事をしてまでサンレアン王国を護ろうとした。

その心の強さに、俺は敵わないと今でも思っている。

俺がそう思っていると、


「そ、そう。その言葉は嬉しいけど、それでも姉様みたいにさん付けしないで名前を呼んで欲しいわ」


コレットさんが、俺から顔を背けてそう言う。

見ると、頬が赤く染まっているのが分かる。

どうやら照れている様だ。

俺はそう思いつつ、


「コレット」


コレットさんの言う通りに名前をさん付けしないで呼んでみる。

何だろう、今まで散々さんを付けて呼んでいた所為か、違和感がある。

俺がそう思っていると、


「う…嬉しいけど、違和感があるわね」


コレットさんが何とも言えない表情でそう言ってくる。

コレットさんも俺と同じように違和感を感じているのだ。


「無理に変えなくても良いんじゃないですか?」


俺がそう聞くと、


「で、でもそれじゃあ他人行儀みたいに感じる…。う~む…」


コレットさんは諦めきれないのか、更に考え込んでしまう。


「コ、コレットさん!考えるのも良いけど、ケーキ食べないと!」


俺はコレットさんの手が止まっている事に気づいて、コレットさんにそう声を掛ける。

俺の言葉を聞いたコレットさんは、慌ててケーキを口に運んでいく。

その後、制限時間ギリギリまで食べたコレットさんとお店を出て、少しショッピングモールの中をブラブラする。

すると、


「ねえシュウ?さっきは違和感があったけど、今日1日は敬語ナシで名前もさんを付けないで話しましょ?それでこれからどうすれば良いか考えても遅くは無いわ」


コレットさんが俺にそう提案してくる。

なるほど、今日1日お試しで話し方を変えて様子を見ると言う事だろう。

俺はコレットさんの考えている事を察して、


「分かったよ。じゃあ今日はよろしくね、コレット」


俺はコレットにそう言う。

やはり違和感があるが、今日の終わりの方には違和感はあってもこれからは敬語はナシになるかもしれないと思う。

何故なら、


「えぇ、今日はよろしくねシュウ」


俺の言葉に笑ってそう答えてくれるコレットの姿を見たからだ。


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