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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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情報

なかなか話が進まなくてすみません。

俺はサンレアン王国の城下町とヴェルーズ、メイユ村の雰囲気しか知らなかったが、ヴァランス帝国は最悪だと感じてしまう。

どこを見ても鎖に繋がれた人がいる。

男性だろうが女性だろうが関係ないようだ。

着ている服なんて布きれのようにボロボロだ。


『嫌な光景だ…』

『そうね』


俺は男達を探そうと周りを見渡すがどこにもいない。

門番に捉まっている間にどこかへ行ってしまったようだ。


『今日は仕方ないから宿に泊まりましょ』

『うん』


ヴァランス帝国の町並みは建物はサンレアン王国と変わりないが、町の雰囲気は全く別だ。

酒らしき物を飲んで路上で寝ている者。

喧嘩をし怒鳴り合っている者達。

鎖で引っ張られてる人。

どれもサンレアン王国では見なかった光景だ。


「おい!兄ちゃん」


宿を探して見ながら歩いていたらおっさんに絡まれた。


「何ですか?」

「見ねぇ顔だな~!どこから来た~?」


酒臭いなこのおっさん…。

おっさんがそう聞いてくるが素直に言ってはいけない。


「この国から遠くの村から来ました」

「あんだ兄ちゃん!兄ちゃんもエルフで荒稼ぎしてぇのか!俺は情報通だ!何なら教えてやっても良いぜ!」

「そうですね。なら、教えてもらえませんか?」

「なら、あそこに入るぞ!」


そう言っておっさんが指差したのは飲み屋だった。


「良いですよ」

「うし!あそこは高いからな!」


情報を教える代わりに奢れって事か。

金を請求するのかと思っていたんだがな…。

おっさんが入っていき俺も後に続く。

中に入ると、飲み屋にしては異様だった。

静かに飲んでいる者。

大声を叫んでいる者。

この光景は異常だ。

大声を叫んでいる者を誰も止める者がいない。

ただ皆、目を見開いて飲み物を口に運んでいる。


「おい!こっちだ!」


おっさんが端の席に座って俺を呼ぶ。

俺は呼ばれた席に行き座る。


「マスター、高いの一杯くれ!」


おっさんが立っているダンディーな男性に注文をする。


「それで、何が知りたい?」

「エルフの稼ぎ方全てに奴隷が買える場所を」

「エルフの稼ぎ方なんて簡単だ。エルフを捕まえて奴隷商人に買い取ってもらう、それだけだ」

「門番に今はエルフが狙い時って言われたんですが…」

「あぁ、エルフの長が殺されたらしくてな。エルフは今、まとまっていないんだ。そこを国の奴らで襲い、エルフ全員を奴隷にしちまう計画らしい。今、その計画に参加する奴らを募集してる」


やはり、エルフの村を襲うつもりだったのか。

そう思っていると、マスターがおっさんに酒を持ってくる。


「んぐんぐ…ぷはぁ~~!ここの酒は最高だ!」


良い飲みっぷりだ、豪快に飲んでいる。


『このお酒、凄いわね』


リーシャが呟く。


『何が?』

『このお酒、違法な薬物が入ってるし魔法も使われているわ』

『何でそんな事…』

『たぶん、薬物は依存させるためにね。魔法は呪いだわ。このお酒を飲まないと、どんどん息苦しくなっていくようになってるわ』


あのマスター、しれっとしているがとんでもない物客に出してるな。

そして、それを知らないでがぶ飲みする目の前のおっさん…。


「ゲフ…。あと奴隷が買える場所か。奴隷館って看板が出ているから大体わかるぞ。ここだけの話だが」


おっさんが声を小さくして話す。


「さっき話した殺されたエルフの長の娘が裏の奴隷館で買い取られたって話だ」

「裏とは?」

「普通の奴隷館より高く、珍しい種族の奴隷を扱っているんだ」

「だから裏か…」

「それともう1つ、どうやらエルフの長を殺したのは魔王の1人だと聞いたぜ。しかもここ、ヴァランス帝国国王と繋がっているらしい」


つまり、エルフ狩りは完全に仕組まれているって事か。

俺は席を立つ。


「ありがとう。勉強になった」

「おう、なら10万ラティー置いて行きな」


酔っ払いの割にしっかりとしている。

俺はお金をテーブルに置いて店を出る。

どうやらこの国は犯罪だろうがなんだろうが、どうでもいいって事か。

それから、城下町を歩いて宿を見つけて部屋を取る。

ぼろい割に高い部屋だな。

そう思いながら、ベッドに座る。

右腕が光りリーシャが人の姿になり、俺の隣に座る。


「ここまで酷いとは思わなかったよ」

「そうね。でもやることは決まったわね」

「うん。エルフの長の娘が奴隷になっているか確認して本当ならその人に協力してもらった方が良いね」

「明日から忙しくなりそうね」

「そうだね。今日早く寝よう」


そう言って俺は横になる。

リーシャも横になり、俺に寄り添ってくる、


「おやすみリーシャ…」

「おやすみなさいシュウ…」


そうして俺とリーシャは眠りについた。

そして、翌日。

俺が起きるとリーシャはもう起きていた。


「おはようリーシャ。早いね」

「おはようシュウ。えぇ、少しやる事があって」


リーシャの手には黒い紐が握られていた。


「その紐は?」

「この国では奴隷が普通って事だから。シュウが奴隷を買ったらこの紐を鎖の代わりにしようと思って。呪い系統の魔法を防ぐ為に作ったの」

「何で呪い系?」

「エルフって呪い系以外の魔法は防げるらしいのよ。だから、唯一防げない呪い系に対策をしないと。シュウが奴隷を買ったらすぐに解放するつもりなんでしょ?でも、一緒に歩くためには抑止力のためにもね」

「なるほど」

「何があっても良いように対策しとかないと」

「ありがとうリーシャ」

「良いのよ。さっ!行きましょう!」


リーシャが俺に触れて右腕になる。


「ここでは腕にならなくても良いんじゃない?」

「念のためによ」


まだまだ、リーシャには心配をかけてしまっているな。


「ありがとう」


俺はそう言って宿の部屋を出る。



読んでくださってありがとうございます!

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