入国
あれから宿を見つけて泊まることにして、ゆっくりとした。
リーシャがピッタリとくっ付いてきて動きにくかったが、可愛かったし幸せだった。
そして次の日、宿を出てリーシャと一緒に歩いている。
「そういえば、昨日のリーシャの走る速度凄かったけど、どうやってやったの?」
「ちょっと頑張って走っただけよ」
え?あれ脚力だったの?
魔法で速く走っているのだと思っていたよ…。
「そうだ、少し思ったんだけどリーシャが加速魔法を使ったら俺にも効果があるのかな?」
「できるわよ。前に使った幻惑も元々は自分に使用する魔法だもの。同じ効果がある加速魔法でもできるわ。ただし加速魔法はずっと触れていないといけないと思うわ」
「なるほど。じゃあ、、2人で手をつないでリーシャが加速魔法をリーシャと俺に使って走るのはどうかな?」
「やってみましょうか」
そう言ってリーシャと俺は手を握る。
「加速」
リーシャが魔法を使うと俺は自分の体が軽くなるのを感じた。
「加速魔法を使うとこんな感じなんだね」
「えぇ、じゃあ行くわよ、せーの!」
リーシャの合図で俺とリーシャは走る!
が、昨日と同じで引きずられた…痛い。
「私とシュウじゃ走る速度が違うから魔法を使っても同じ速度にはならないのね」
リーシャが俺の惨状をみて冷静に分析している。
ちょっと酷いよリーシャ…。
「そうだ!」
リーシャはそう声を出すと、俺に触れる。
リーシャは俺の右腕になった。
「誰もいないのに何で腕になったの?」
リーシャにそう聞くと、
「実験よ!加速」
また、リーシャが加速魔法を使い体が軽くなるのを感じる。
「それで、走れば大丈夫よ」
「そうか。リーシャに合わせるんじゃなくて俺に合わせてくれたんだ!」
「そういう事!」
リーシャの優しさに感謝して駆けた瞬間、体に衝撃が!
「イテテ…。なにこれ?」
目の前にあったのは木だ。
「ここに木なんてあったかな?もう少し先に数本見えてたけど…」
「何言ってるのシュウ?その木に当たったんじゃない」
「え?」
そう言われて改めて確認すると、目の前にある木がさっきまで少し先に見えていた木だという事に気がつく。
つまり、一瞬で50メートル弱の距離を走ったことになる。
「このまま走っていい?速く走れて依頼の場所に行けるし練習したい」
「良いわよ、行きましょう!」
リーシャの許可をもらい更に走る!
何もない所だと楽に走れるが、木や岩があると気をつけないと激突する。
それから、しばらく加速魔法で加速した状態でエルフの森を目指して走り抜けた。
そして遂に、エルフの森に着いた。
木が大きい、高く太いのだ。
そんな木が何本も生えている。
「やっと着いた」
俺はそう言って森に入ろうとした時、
「シュウ待って!誰か来るから隠れて!」
とリーシャが言ってくる。
俺は木の影に身を隠す。
すると森から7人、人が出てくる。
だが、5人は鎧を着こんだ男だが、2人は金髪の綺麗な女の子だ。
そして、鎖に繋がれている。
つまりあの女の子達は、奴隷。
だから、顔が暗いんだ。
その光景を見ていると、男達の会話が聞こえてきた。
「今日は1人かよ」
「最近はエルフも村から出なくなってきたな」
「仕方ないさ。捕まれば即奴隷になっちまうんだ。だから、森に結界を張ってるんだ」
「確か、エルフじゃないとこの森の結界に阻まれるんだよな」
「あぁ、だがあいつらも飯を食うために狩りに出る。その時に捕まえるしかないんだ」
話を聞いていると、どうやらエルフがいないとこの森に入れないって事だろう。
フェリアンさんはそんな事言ってなかったんだが…。
『フェリアンがこの森を出たのは昔よ。フェリアンが出てから結界を張ったんじゃないかしら?』
『そういう事か。なら、フェリアンさんも知らないわけだ』
俺がそう思っているうちに、5人の男達は鎖を引っ張り女の子達を連れて行ってしまった。
『シュウ、後を追いかけましょう。エルフの子達を助けるの!』
『うん』
リーシャに言われ、俺は男達の後を気づかれないように付いていった。
それから、長いこと歩き夜になった。
そして、男達はサンレアン王国より大きな国の門で止まった。。
『ここはもしかして、ヴァランス帝国?』
『そうね』
まさかのヴァランス帝国に来てしまったようだ。
だが、結局はエルフの人の協力が必要だ。
ここは奴隷が合法なら俺がお金を出して助け出す事も出来る。
男達が門をくぐり抜けていくのを確認して、俺も門に近付く。
門番は俺に気付き近寄って来る。
「初めて見る顔だな」
「はい、初めて来たんです」
「お前も奴隷を買いに来たのか?」
どうする、ここで違うというのは怪しまれるか?
「いや、言わなくていい。ヴァランスに来るって事はそういう事だろう」
門番はそう言う。
良かった、勝手に誤解してくれて。
「どんなのが良いんだ?」
門番は下卑た笑みをしながら俺に聞いてくる。
殴りたいこの顔。
「俺は…エルフが…」
「何だ?お前もエルフ狙いなのか?」
「お前も?」
イライラしているのか心掛けている敬語も忘れてしまう。
「今はエルフが狙い時らしいからな。俺も詳しくは知らないがな」
つまり、誰かが今ならエルフが捕まえやすいって事を言っているのか。
「まぁ、良い。ほら入った入った!」
門番はそう言って俺の背中を叩く。
「良いのか?身分証明とかは?」
「ここじゃそんなことしても意味ねぇよ」
どんだけだよ、このヴァランス帝国ってのは…。
そうして簡単に俺はサンレアン王国の敵国、ヴァランス帝国に入国した。
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