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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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秘密

あの後、俺はルネリアの事を村近くまで送る事になり手を繋ごうかと聞いたら、魔法を使いずぎてしまったから疲れたと言って、おんぶを要求されてしまった…。

何とか断ろうとするも、


「…嫌なんですか?」


不安そうな表情をされてそう言われてしまったら、断る事も出来なくなってしまった。

ルネリアの事を背負って森を抜けると、静まり返っている村が見えそこでルネリアは降りた。

聞くと、


「森の魔獣を狩りに来たのに、森の外まで送って貰う訳にはいきません」


そう言われたのだ。

俺は彼女の言葉を受け取って、魔獣を探しに行こうとすると、


「森の魔獣はある程度大きな音が聞こえるとそちらに行くと言われています。お気をつけて。それと、ヨハナさん達には会った事内緒にしておきますから」


ルネリアがそう言ってくる。

だが、


「別にヨハナさん達に黙って無くても大丈夫だよ」


俺がそう言うと、ルネリアは首を振って、


「ヨハナさん達に居場所を知られたら、山狩りを行って捕まりますよ」


そう教えられた。

流石に大事な時なので、捕まりたくはない…。


「…お願いします」


俺がそう言うと、


「任せて下さい」


ルネリアの少し笑っている声で、そう言われた。


「じゃあ、またね」

「はい。お気をつけて」


俺がそう言うと、ルネリアが言い返してくれる。

俺は森に入って行こうとすると、


「……まだ……していた……から」


何やらルネリアの声が聞こえた。

振り返ると、彼女はすでに村の方に歩いて行ってしまっていた。

また今度、会えた時に何て言ったか聞いてみよう。

俺はそう思いながら、森の奥へ駆けていく。

ルネリアと分かれてから走り続けて、森の奥まで着いた所で一度止まる。


「確か、大きい音を出すと良いってルネリアが言っていたな」


俺はそう呟きながら、近くに生えている木の1本を魔翔剣を使って切り倒す。

激しく葉が擦れる音がして、木が倒れると地面が衝撃で振動する。


「これくらいかな?」


俺はそう呟いて、いつ襲われても良いように周囲を警戒する。

だが、一向に魔獣の気配は無い。

もっと大きくしないといけないのかな?

俺はそう考えて、先程切り倒した木を持ち上げると、地面に勢いよく叩き付ける!

木が倒れた時よりも大きな音と衝撃が、周囲に伝わる。

すると、俺が発生させた音ではない鈍い音が、結構な速さで俺に近づいてくるのが聞こえる。

俺は木を放り投げて、魔拳を作り出す。

そうしていると、馬の様な魔獣が姿を現す!

俺は突進してくる魔獣を魔拳で受け止めて、魔翔剣を作り出して首を刎ねる。

血が出る前に魔獣は塵になり、死石だけが地面に落ちる。

だが、今日昼間にカーヤさんと狩りに出た時に狩った鳥型の魔獣の死石の方が大きい。

今持っているのは、鳥型魔獣の死石の半分くらいだ。

これでは、昼間に狩った魔獣の死石を集めていた方が良いのだが…。


「贅沢は言ってられないな…。何としてでも100万ルーン集めないとな」


俺は静かに呟いて、夜の森を駆け巡る!




柊が夜の森で魔獣を狩り尽くしている頃、ルネリアは夜中の静かなフィノイ村を歩いていた。

歩いているルネリアの表情は、頬をやや赤く染めて口角が少し上がっている。

その表情の原因は、先程再会した柊だ。

ルネリアは、今までに出会った事が無い雰囲気を纏っている柊が気になっている。

自分の事を包み込んでくれるように感じる話し方と、敵を全て蹴散らす力が、ルネリアにとっては気になって仕方がない。


「…どうしたんでしょう…。シュウさんと会うといつも急いでいる様に感じます。もう少しゆっくりしていても良いのに…」


ルネリアがそう呟いても、周りに人はいなく静寂な村にルネリアの声が小さく伝わるだけ…。

ルネリアは自分の声を聞いて、更に頬を赤く染める。

今の言葉では、まるで最近聞いた物語の王子様に恋する女の子の様‥。

ルネリアはそう思い、自分の気持ちを落ち着かせるために魔法を使って水を生成し、それを一口飲む。

コクリと喉から音が鳴り、自分の魔力で作った水を飲むと、少しだが気持ちが落ち着く。


「…目が見えないのを悔やんだ事が無かったんですが、今はヨハナさん達が羨ましい…」


ルネリアの目では見えないシュウの顔が、ヨハナさん達は見る事が出来る。

それがこれほど羨ましいと思うとは思わなかった。

そう思うと、ルネリアは今日シュウに会った事を当分の間内緒にする事を心に誓う。

私にも、独占したくなる事があったんですね。

ルネリアがそう思っている内に、家に着いた。

今は村の中で3番目くらいに大きい家に、ヨハナとアウレーテと3人で暮らしている。

女の3人暮らしで、ルネリアはどんどん一般の人々の生活と女のたしなみを覚えている。

ルネリアは音を立てない様に扉を開けて家の中に入ると、開けた時と同様に静かに扉を閉める。

そうして自身の部屋に帰ろうとすると、


「どこに行ってたのルネリア?」


彼女の部屋の扉に寄りかかったヨハナが、ルネリアに質問をする。

ルネリアはその声に、


「森で魔法の練習をしていました」


素直に答える。

すると、ルネリアの言葉を聞いたヨハナが顔をしかめる。


「ルネリア?夜の森は危険だから1人で行っちゃ駄目と言ったでしょ?」


その言葉を聞いて、ルネリアは頭を下げて、


「ごめんなさい。これからは1人では行きません」


そう反省の言葉を口にする。

その言葉を聞いたヨハナは、ルネリアの言葉に違和感を覚える。

実は、夜の森に1人で魔法の練習をしに行ったのは今回だけではないのだ。

その度にヨハナとアウレーテが、ルネリアに夜の森が危険であり、ルネリア自身の大切さを徹夜でお説教をしたのだが、どんなに長く説教をしても返ってくる言葉は、


「ごめんなさい。気を付けます」


それだけであった。

だが、今日はこれからは1人で行かないとルネリアが言った。

その言葉にヨハナは、


「ルネリア?何か森であったの?」


そう質問する。

そのヨハナの察しの良い質問にルネリアは、


「とても…良い事があって、これからは1人で頑張るんでは無く、ヨハナさんとアウレーテさんにも頼ろうと思いました」


シュウに会った事は隠して、だがシュウに言われた事で決めた気持ちをヨハナに伝える。

その言葉にヨハナは、笑顔で答える。


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