危険な石の雨
カーヤさんに補佐をお願いした後、俺とカーヤさんは帝都の外に出ていた。
勿論俺は先に検問所の遥か上空から外に出て、換金所で着替えなどをしてからちゃんと手続きをしてから出てきたカーヤさんと合流した感じなのだが。
今は2人で帝都から少し離れた平原に来ている。
平原には魔獣の姿は見えないが、上を見ると飛んでいる魔獣が見える。
空を飛んで倒していくしかないな。
俺が空の見ながらそう思っていると、
「どうしたんですか?」
カーヤさんが俺の様子を気にして声をかけてくれる。
「空にいる魔獣を狩り尽くしたら、いくらぐらいになりますか?」
俺がそう言うと、カーヤさんも俺と同じように空を見上げる。
太陽の光で眩しいから、顔をしかめているカーヤさん。
「死石の大きさにもよりますが、今見えている魔獣全てを狩ったら…1万ルーン位にはなると思います」
カーヤさんがそう言うと、俺の事を見てくる…。
怪しんでいるようなジトーッとした目をしているが、俺はまだ何もしていない…。
「何ですか?」
俺がそう聞くと、彼女は空を指さして、
「飛んでいる魔獣を倒すのなんて、風の魔石を使うか私たちのどちらかが囮になるしかありませんよ」
俺にそう言ってくる。
その言葉を聞いて、俺は風の魔法使いもいるのか…と少しズレた考えをする。
「とりあえず、ちょっと行ってきます」
俺はそう言って魔素を纏うと、脚に力を込める。
「行ってくるって…どこにですか?」
俺の様子を見て、カーヤさんが俺にそう聞いてくる。
その言葉に俺は、
「上に!」
そう答えた瞬間、地面を蹴って空に跳ぶ!
力の制御をしっかりしたから、地面を砕く事もしなかった。
一気に加速して地上から見上げていた魔獣と同じ高度に到着すると、魔獣達が自分達の領域に侵入した俺に威嚇をしながら飛びかかってくる!
俺はそれを躱して俺の横の通り過ぎる前に魔翔剣で魔獣の体を斬り裂く!
一瞬で塵になって死石だけが下に落ちて行くのを見ていると、仲間が殺された事に怒り、俺に突撃してくる魔獣達!
俺はその魔獣達を次々に斬り殺していき、魔獣はどんどん塵になって死石が落ちていく。
その後、俺は自分に向かってくる魔獣達がいなくなるまで、魔翔剣を振り続けた。
俺に飛び込んでくる魔獣がいなくなるのを確認して、戦いで昂った心を深呼吸をして落ち着かせる。
改めて周りを見ると、今この付近の空にいるのは俺1人だけだ。
「やり過ぎちゃったかもしれないな。カーヤさんにどうか聞いてみよう」
俺は独り言を呟いて、一度地上に戻る。
地上が見えてくると、地面に座り込んでいるカーヤさんを見つけて、俺は慌てて彼女の元に下り立つ!
「大丈夫ですかカーヤさん!」
俺がそう声を掛けると、彼女は荒い息をしながら俺の事を見て、
「…話し合いを…しましょう」
そう言ってきた。
それからカーヤさんが落ち着くのを待ってから、俺は彼女に怒られている…。
その理由は、
「良いですか?貴方が凄い事は分かりましたが、それでもこれからは何をするのか言ってからして下さい」
俺が特に説明をする事も無く空に跳びたってしまった所為で、カーヤさんは平原に取り残される事になった上に、俺が倒した魔獣の死石が落ちてくるのを避けていたようだ。
「…すみません」
俺が謝ると、カーヤさんはため息をついて、
「もういいです。頭を上げて下さい」
俺にそう言ってくれた。
俺が頭を上げると、カーヤさんが俺の前に座って、魔導袋をひっくり返す。
中から出てきたのは、俺が狩った魔獣の死石がゴロゴロ出てくる。
中には大きな物もある…。
こんな物が上から落ちてきたら危ないよな…。
俺が反省していると、
「これだけあれば、5万ルーン位になるかもしれません。正確に測ってみないと断言できませんが…」
カーヤさんが、死石の1つの手に取って俺にそう言ってくる。
「5万ですか」
俺がカーヤさんの言葉にそう返すと、
「不満そうですね。もっと稼ぎたいのですか?」
カーヤさんが俺に聞いてくる。
「そうですね。お金はいくらあっても困る物ではないと思います」
「…まぁそうですね」
俺の言葉を聞いたカーヤさんが、俺の言葉を肯定してくれる。
その後、魔獣が現れるまで俺とカーヤさんは世間話をして、魔獣が現れたら狩りに行くという事を繰り返した。
そうしていくうちに日が暮れて、外が薄暗くなっている。
俺はカーヤさんに長時間拘束してしまった事を謝って、帝都に戻る事になった。
帝都に戻ると、カーヤさんと一緒に換金所に訪れて死石を査定してもらう。
そして、今日1日中狩りをした結果、
「20万ルーンです」
カーヤさんに渡されて、俺はそれを受け取る。
その瞬間、少しの人数ではあるが換金所にいた人達が驚いているのが伝わった。
どうしたんだろう?
そう思いながら、俺は渡された20万ルーンの半分、10万ルーンをカーヤさんに差し出す。
だが、差し出した金貨を見てカーヤさんがキョトンとした表情になる。
「今日の狩りを手伝ってくれたお礼です。受け取って下さい」
俺がカーヤさんにそう言うと、
「わ、私はほとんど何もしていません。報酬を山分けするのは平等ではないです!」
珍しくカーヤさんが、慌てた様子で俺にそう言ってくる。
だが、俺だってそう簡単に引き下がりたくは無い。
「カーヤさんがいてくれたので、俺は狩りに集中する事が出来たんです。受け取って下さい」
俺がそう言うと、彼女は俺が差し出している金貨と俺の顔を交互に見て、ゆっくりと金貨を受け取ってくれた。
「出来ればまた明日、一緒に行きたいんですけど…。どうですか?」
俺が誘うと、カーヤさんは棚から紙を取り出して目を通している。
少しすると、
「明日は昼からなら大丈夫です」
カーヤさんが紙から目を離して俺に答えてくれる。
昼からか…。
「わかりました。では昼頃に今日と同じ場所に来て欲しいんですけど、大丈夫ですか?」
俺がカーヤさんにそう聞くと、
「大丈夫です。帝都の周りは兵士が見張っているので、危ない時は少しの間でしたら兵の方が警護して下さいますので」
カーヤさんがそう答える。
その言葉を聞いて、俺は安心して彼女に明日もお願いしますと頼み、換金所を後にした。
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