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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
294/430

衝突

ヴェロニアさんはいきなりの事で驚いているヘルム君の口を手で塞ぐと、俺達がいた部屋に走って行ってしまう!

ヘルム君は叫び声を上げたいのか声を出そうとしているが、


「んぐぐ~~ッんんぅ~~ッ!?」


ヴェロニアさんの手によって声は、言葉になっていない。

そのまま俺達は先程までいた部屋に戻った。

ヴェロニアさんがヘルム君を解放すると、


「だ、誰なん‥んむむ~!」


大きな声を出してしまった瞬間、またヴェロニアさんに口を塞がれてしまう…。


「大きい声を出すな。出したら息が出来ないようにしてやるぞ200万君」


ヘルム君の口を塞いだまま、ヴェロニアさんがそう言う…。

完全に誘拐犯のセリフだし、ヘルム君の事をお金で呼ぶのも止めて下さい…。

俺はそう思いながら、捕まっているヘルム君の前に行き、


「君のお姉さんからの依頼で来ました。怪しい者ではないので、話を聞いて下さい」


俺がそう言うと、小さくではあるが首を縦に振った。


「ヴェロニアさん、手を離してあげて下さい」

「分かった。…騒ぐなよ?」


俺の言葉を聞いたヴェロニアさんが、ヘルム君に脅しの言葉を言ってからヘルム君の口から手を離す。

ヴェロニアさんから解放されたヘルム君は、ゆっくりと深呼吸をし始める。


「ごめんね。少し粗い方法だったね」


俺がそう言うと、


「別に良いです。それよりも、お姉ちゃんの依頼で来たってどういう事ですか?」


ヘルム君は俺にそう聞いてくる。

その表情は真剣で、だが少し不安そうな表情をしている。


「お姉さんが、君の事をここから助けて欲しいってお願いされたんだ」


俺がそう言うと、ヘルム君の表情はさらに暗くなる。

おそらく、あの時話していた女の人が気になるのだろう。


「あの女の人が気になるの?」


俺がそう聞くと、ヘルム君は何も言わずに頷いた。

あの女の人も一緒に逃がすか?

俺が一瞬そう考えると、


「何があったか知らないけど、娼婦に深入りするものではないよ200万君」


ヴェロニアさんがヘルム君にそう言う。

いや、だからその呼び方は駄目ですって…。


「そんなのわかってます。婦館で働いている女性の事を好きになったら苦しいのは…」


ヘルム君はそう言って俯く。


「でも、イーナさんを置いて逃げる訳にはいかないんです…」


ヘルム君が言葉を発していると、部屋の床に水が落ちているのが分かった…。

ここで彼を連れていくのは簡単だ、でもそれではカーヤさんとヘルム君の間に溝ができてしまう可能性がある。


「…わかった。今日は引き上げるよ」

「ちょっと待て!!」


俺がヘルム君にそう言うと、ヴェロニアさんが俺の頭を叩いてくる。


「ここまで来てそれは無いだろう!早くお金を手に入れないといけないんだろう!」

「ちょ!声が大きいです!」


俺に怒ってくるヴェロニアさんを落ち着かせようとするが、俺の言葉を聞いて怒っているから落ち着いてくれない…。

確かに、俺の我儘でヴェロニアさんを巻き込んでいるし、今のヘルム君の事も俺の独断で決めてしまった…。


「すみません。でも、ヘルム君をこのまま連れて行っても、お互いに納得できないまま離れ離れになってしまいそうで…」


俺がそう言うと、ヴェロニアさんが俯いているヘルム君を見る。


「…はぁ~~。わかった。今日の所は一回引き下がろう」


すると、諦めた様にヴェロニアさんがそう言って頭を掻く。

その言葉を聞いて、ヘルム君が顔を上げる。

後でお詫びしないとな…。

俺がそう思っていると、


「でも、次来る時もこんなに面倒なのは勘弁してよ?何かいい方法ないの?」


ヴェロニアさんがそう言って、ヘルム君の事を見る。

ヴェロニアさんに見られているヘルム君は少し考えた後、


「じゃあ、イーナさんを御指名して下さい。僕は常にイーナさんのお傍に居るので、都合がいいです。イーナさんにも話を通しておきます」


俺とヴェロニアさんにそう言ってくる。

そうすれば、カーヤさんがわざわざここに来なくて済むな。


「そろそろお仕事に戻らないと…」


ヘルム君はそう言って立ち上がる。


「…またすぐに来るから」


俺がそう言うと、ヘルム君は俺とヴェロニアさんに一礼をして、部屋から出て行った。

部屋に残された俺とヴェロニアさんはその後、普通の客と同じように部屋から出て婦館を後にした。

婦館を出る際に、これからもご利用して欲しいという事で、半額で済んだのは良かったと思っている。

ただでさえお金が無い今では、中々買い物も出来ない。

俺とヴェロニアさんは婦館を出た後、カーヤさんが待っている検問所まで行くと、


「いた」


ヴェロニアさんがカーヤさんを見つけた。

2人でカーヤさんの近くに行くと、カーヤさんも俺達に気づいた。

だが、ヘルム君がいない事に気づいて表情を暗くする。

俺はとりあえずここでは話しにくいという事で、宿屋の部屋を借りに行くが、


「満室だよ」


店主の言葉を聞いて、回れ右をしたのだった。


「どうしよう…」


そうして悩んでいると、


「では、仕方がないのでとりあえず私の寝場所に来ますか?」


カーヤさんが提案してくれて、俺とヴェロニアさんはその提案に飛びついた。

それから、俺とヴェロニアさんはカーヤさんの後ろを付いて行き、昨日カーヤさんを送った所に着く。


「どうぞ、汚い所ですが」


カーヤさんの言葉を聞いて、俺とヴェロニアさんが小屋の中に入る。

見ると、外から見た時はボロボロの小屋であったが、中に入るとそこまで汚いとは思わない。

だが、寝る所と言う割にはベッドが無い。

あるのは床に直接寝ないために、木の板が数枚積み重なっているのと、その上に布が置かれている物だけだ。

まぁ、必要な物はカーヤさんが荷物として持っているのだろう。

でも、カーヤさんは魔導袋を持っているから、どれだけの量の荷物があったのかは分からない。


「少し待っていて下さい」


カーヤさんはそう言って積み重なっている木の板を移動させて、床に敷いていく。


「どうぞ…」


カーヤさんの言葉を聞いて俺とヴェロニアさんが座り、俺達が座るのを確認してから彼女も座る。

その後、俺はカーヤさんに婦館であった事を説明した。


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