首輪
カーヤさんの言葉にヴェロニアさんがそう聞いて、俺は固まってしまう。
すると、
「…今すぐであれば200万ルーン。少し待って下さるのであれば、250万ルーンではどうでしょうか?」
カーヤさんも特に動じないでヴェロニアさんの質問に答える。
「…200万で助けてあげる。どう?」
すると、ヴェロニアさんがカーヤさんにそう言った!?
だが、カーヤさんは特に動じる事も無く、俺達に頭を下げてきて、
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
お礼を言葉を言ってきた。
俺はその様子を見て、2人がいつの間にか話し合いが終わった事に驚く。
最初は100万ルーンの契約だったはずなのに、いつの間にか200万に変わっていてしかも、それで良いと言うカーヤさんに驚く。
「ち、ちょっと待って下さい!ヴェロニアさん、俺達は100万ルーンあれば良いという事でしたよね?」
俺が慌ててヴェロニアさんにそう質問すると、
「そう。だけど、お金を持っているなら根こそぎ取らないといけないじゃん?」
まるで当たり前の様にそう言ってくるヴェロニアさんだが、俺には理解できない。
すると、
「落ち着いて下さい。彼女の言う通りです。お金はある所から取っていくのが賢明です。ただでさえ貴方達はお金が必要なのでしょう?そして、私はどれだけ払っても良いので、弟を助けて欲しいのです。利害は一致しています。気にする必要すらありません」
カーヤさんまでそんな事を言ってくる…。
だが、2人にそう言われても納得する事は出来ない。
ただ人を助けるために、100万も200万も貰いたくはない…。
俺がそう思っていると、
「…貴方がどのような所で生きてきたかは知りませんが、ここではこういうやりとりが当たり前です」
カーヤさんが俺にそう言って、その言葉にヴェロニアさんが頷いている。
その後、カーヤさんの弟の助ける話し合いは明日にする事になり、解散する事になった。
俺は宿屋を出ていくカーヤさんを送っていこうとすると、
「淫魔の家を知って、どうするつもりですか?」
少し俺の事を睨みながら、カーヤさんが聞いてくる。
だが、俺も一応男である。
夕方ではあるが、女性を1人で家に帰らせる訳にはいかない。
「どうもしませんよ。ただ送っていくだけですから」
俺がそう言うと彼女は黙って俺の事を見つめ、少しして諦めた様にため息をついた。
そして、
「わかりました。ではしっかりと護って下さいね」
俺にそう言って歩き出すカーヤさん。
俺はカーヤさんの言葉に短く返事をして、彼女の1歩後ろを歩く。
そうしている内に、大通りから少し逸れた裏道に入っていく。
裏道を歩いていると、大通りに並ぶ建物とは違って、ボロボロの建物が多い。
見ると、すでに崩れている家も少なくない。
そうして周りを見ながら歩いていると、
「ここが私の寝ている場所です」
カーヤさんが立ち止まってそう言う。
カーヤさんが立ち止まった目の前に立っている建物は、崩れている訳では無いがボロボロの状態であり、雨は防げても風は防げなそうな状態だった。
それはカーヤさんが1番知っているから、家とは言わずに寝ている場所と言ったのだろう。
その後、カーヤさんは建物に入って行き、俺はその場を後にして山小屋に帰るために空を走っていた。
走りながらではあるが、俺は1つ考え事をしている。
それは、やはりまだ納得できていないお金のことに関してだ。
俺が悩んでいると、俺に向かって飛んでくる大きな鳥が口を開けている。
俺は魔翔剣で鳥の首を落とすと、塵になって死石だけが落ちようとしている。
それを空中で拾うと、自分の魔導袋に入れる。
「…これだけ取っても、あまりお金にならないんだもんな…」
俺はそう呟いて、山小屋へ走り出す。
その後、何頭か魔獣を殺して死石を手に入れて山小屋に帰り、グリニオン帝国に帰るための扉を通った。
扉を通っても流石に誰もいない。
俺は秋沙を探すために一階に下りていくと…。
「……」
「…これもあり。でも、もう少し冷たい感じが…」
鏡を見ながら、何やら評価している秋沙がいた。
俺には気づいて無い様で、またゴソゴソし始めると鏡を確認している。
何をしているんだろう?
俺はそう思って身を隠して、秋沙が見えるように顔だけ出す。
すると、
「…これは、ジャラジャラ付け過ぎ。これは…棘があって痛そう」
秋沙は独り言を呟きながら、首に何かを着けている様だ。
だが、俺の位置からでは秋沙が何を着けているかは見えない。
すると、秋沙が外した物を床に置くのが見える。
それは、何やら黒色の物である。
じっくりそれを見て分かった、それは首輪だ。
つまり秋沙は、自分の首に首輪を着けて選んでいるのだろう…。
何のためにかは分からないが…。
そして遂に、
「…これに決めた」
秋沙がそう呟いて首輪を着けると、今まで床に置いていた物を片付けて移動しようとする。
そうなると当然、
「……」
「…あっ…」
顔を出していた俺と、移動しようと振り返った秋沙と目が合ってしまう。
すると、秋沙の顔がどんどん赤くなっていく。
たまに思うのだが、秋沙の恥ずかしがる時がおかしい。
例えば、裸を見ても表情を変えずにむしろ見せつけてくる。
だが、服装を褒めたりすると、顔を真っ赤に染めて恥ずかしがったりするのだ。
秋沙の羞恥心はどうなっているのだろう?
俺がそう思っていると、
「…おかえり柊」
秋沙が羞恥に震える声で、俺に挨拶をしてくる。
俺はその言葉に、
「…ただいま」
素直にそう返すしかない。
基本的に秋沙は恥ずかしがって殴ってきたりはしない。
どちらかと言うと、変な方向に暴走してしまうのだ…。
俺が秋沙を見ながらそう思っていると、いきなり服を脱ごうとしてくる!?
「な、何してるの秋沙!」
俺がそう声を掛けながら、止めようとすると、
「…ど、どこから、どこまで見たの!?」
秋沙が俺に押さえられながらそう聞いてくる。
俺がそれを素直に答えると、
「…それを見られるくらいなら、全裸を見せた方が恥ずかしくない!」
秋沙が半狂乱になってそう言ってくる。
その言葉を聞いて、こうなるんだったら殴られた方が良いのではないか?
そう思ってしまう俺だった…。
読んで下さってありがとうございます!
ブックマークして下さった方、ありがとうございます!
評価や感想、ブックマークをして下さると嬉しいです。
誤字脱字がありましたら、感想などで教えて下さい。
よろしくお願いします。




