王族たる使命
読みにくいかもです。
あれから、しばらくして森の中で野宿が決定して木が無い場所に馬車を止め焚き火をしている。
「コレット様、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない…。はぁ」
俺は2人から離れたところで座っている。
理由は簡単、2人の近くに行ったら、
「近寄らないで!」
と言われてしまったからだ。
ティアとは全然性格が違うなぁ。
『ねぇ、シュウ。そのティアって誰なの…』
『あぁ、サンレアン王国の第一王女だよ』
『随分と親しそうね…』
『うん。ティアが俺に初代勇者、リーシャの事を教えてくれたんだ』
『私の?』
『そう、本でリーシャの事が書いてあるのがあったんだ』
『そんなのがあるのね。少し恥ずかしいわ、でも何でそれでその子と親しくなるの?』
『お互いにリーシャの良い所を語り合った感じだよ』
『ふ~ん…』
なんだろう、リーシャが少し怒ってる…。
そんな事を思っていると、
「お父様と姉様は私が外交で城を留守にしている間に勝手な事をして!」
コレットさんの怒っている声が聞こえた。
気になって聞き耳を立てる。
「何故勇者召喚をしたの!私が折角ヴァランス帝国に話をつけに行ったっていうのに!」
「ですがコレット様、国王様とティアリス様はコレット様の事を想って…」
「エルミールの言いたい事もわかるし、お父様と姉様の気持ちもわかってる。でも、勇者が魔神を倒せてもその後はどうするの?もしかしたら勇者はいなくなるかもしれないの!だから、一番戦力があり権力もあるヴァランス帝国に繋がりを持つために私が行ったっていうのに!そうすれば他国から侵攻されることもなくなるのに!」
どうやらコレットさんは勇者召喚には反対だったようだ。
なんかこの子も苦労しているんだろうな。
少し聞き出してみるか。
「あの…」
「何?」
王女なのに不愛想だな。
エルミールさんも俺の事を見てくる。
無表情だから睨まれていると感じてしまうんだが…。
「コレット様は、どうして急いでサンレアン王国に帰らないといけないんですか?」
「貴方達冒険者も知っているはず、サンレアン王国が勇者召喚をしたのを」
「はい、知ってます」
俺も召喚された側だし…。
「もともと、勇者召喚をされると困るの、どの国も。理由は、勇者が1つの国に味方してしまったらどうなると思う?」
「それは…、その国は安全になる?」
「間違ってはいないけど当たってもいない。その国の力が大きくなるの。魔神を倒せると言われる程の力を1つの国が持ってしまったら他国は、媚びを売って国を守るしかない。そうしていくと、勇者がいない国同士の戦争が起きてしまう」
「何で国同士で?」
「推測だけど、勇者のいる国に媚びを売るにも限界があるはず、献上品とか納めるのも。国の中で回らなくなったら他国を攻めるしかないんだと思う」
俺には国の事なんか考えたことも無かったが、自分の国を守るためには他国を攻めるしか方法が無かったのかな…。
「勇者を召喚することの今後の危機はわかったよ、だからコレット様が急いで帰るのもわかる。もう1つ聞きたい事があって。さっき話をしているのを聞いちゃったんだけど…、コレット様は何でヴァランス帝国に行ってたの?」
「貴方に話すことじゃない」
「…そうか」
そう言われたらもう、何も言えない。
それから、コレットさんは夕食を食べてから、
「もう寝る、おやすみなさい」
と言って、馬車に入ってしまった。
俺はコレットさんと話した事を考えていた。
勇者は魔神を倒す人類の希望の存在。
だが、それと同時に人類を苦しめる存在にもなるのか…。
「面白い顔してますね」
「真剣な顔をしていたと思うんですけど…」
エルミールさんが声をかけてきた。
「コレット様はサンレアン王国の事を愛しています」
「そうなんですか?」
「はい。コレット様がヴァランス帝国に行った理由もサンレアン王国の事を想っての事なんです」
「そうだったんですか」
どうやらコレットさんは男の人に厳しいが良い人ではあるようだ。
「勇者召喚をしないで魔神を殺すことは可能と言われているんです」
「え?」
「ヴァランス帝国、グリニオン帝国、サンレアン王国、ムラン王国、シュルドー王国の5ヶ国の全軍を魔神軍と戦争をすればですけどね。ですが、人類は大損害になります。そして、すぐに復興ができるのは確実にヴァランス帝国です」
「ヴァランス帝国はそんなに凄いのか?」
「はい」
「それでその事で何でコレット様が?」
「ヴァランス帝国は他の4ヶ国にこう言ったんです。復興を支援する代わりにそれぞれの国の姫を1人ずつ娶らせろ!と」
「なるほど。人質みたいだな」
「そうですね」
つまりコレットさんは政略結婚させられるってことだろう。
「その事で反対したのがサンレアン王国の国王様と、コレット様のお姉様のティアリス様です。ですが、コレット様は反対している2人を無視しヴァランス帝国の王に話をするために出発しました。ヴァランス帝国に着き、王と会談している最中にサンレアン王国が勇者召喚をしたと話が入ったんです。それでコレット様は急いで戻ろうとしているのです」
「つまりコレット様は…」
「はい。コレット様はサンレアン王国を守るためにヴァランス帝国の変態国王に嫁ごうとしていたんです。ですが、王国の勇者召喚の事でこの話は無かったことになりました。寧ろ悪い方向になりました。勇者が魔神を殺した後、勇者がいなくなったらサンレアン王国を除く4ヶ国でサンレアン王国に攻め入ると脅されました。あの変態糞ジジイ…」
エルミールさんも怒っているのか言葉が悪い。
元々か?
「コレット様は今困惑しているんです」
「でもあの歳でそこまでできるなんて凄いですね。俺はそんなことできないですよ」
「当たり前です。我らがコレット様ですから」
エルミールさんはそう言って焚き火の傍で横になった。
あれ?見張り役は俺だけなの?
コレットさんは自分の国を守るために犠牲になろうとしていたんだ。
それは…簡単にできることではない。
「強いな…」
俺の呟きは夜の風にかき消された。
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