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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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俺はヴェロニアさんの目標金額を聞いて、動きを止める。

この世界の金銭価値は詳しくはないが、結構な額ではある。

1日や2日で稼げる額ではない…。


「結構な額ですね…。ちなみにどうしてそんなに必要なのか聞いても良いですか?」


俺がそう聞くと、ヴェロニアさんが少し考えた後、


「まず、魔石の購入が必要だね。それに、少年の言っていた扉の部品を買うのに必要なんだ。あの程度の魔導具なら代用も可能なんだけど、そこまでの高度な技術を有している魔導具を改造するには、最高級の部品が必要になるだろうね」


俺にそう説明してくれる。

なるほど、だからそれだけの金額になるのか…。


「よし!俺頑張ってお金稼いで来ます!ヴェロニアさんはゆっくりしていて下さい!」


俺がそう言って立ち上がると、


「ちょ、ちょっと待って!少年1人ですぐに稼げる金額ではないよ!?」


ヴェロニアさんが俺にそう言ってくる。


「わかってます。でも、俺の我儘でヴェロニアさんに大切に作った魔導具を売ってくれとは頼めませんよ。これは、俺が頑張って稼がないといけないお金なんですから!」


俺がそう言うと、ヴェロニアさんが少し顔をしかめる。

どうやら、納得していないようだ。

すると、


「お金が必要なんですか?」


カーヤさんが俺にそう聞いてくる。


「はい。どうしてもやりたい事があって、そのためにお金が必要なんです」


俺がそう説明すると、


「ならば、1つ良い方法がありますよ」


カーヤさんが俺にそう言ってくる。


「良い方法ですか?」

「はい。死石の換金だけではその金額を集めるのに、貴方でもそうすぐには出来ないでしょう」


俺の質問に、カーヤさんが答える。

すると、


「そんなに良い方法がある?」


ヴェロニアさんがカーヤさんに質問する。

するとカーヤさんは、俺とヴェロニアさんの顔を見て、


「私に雇われてくれませんか?」


そう言った。

だが、その言葉を聞いても俺とヴェロニアさんは首を傾げるだけだ。


「雇われるって、何をすればいいんですか?」


俺が思っている事を聞くと、


「簡単です。私は換金所の受付以外にも、もう1つ働いている所があります」


俺に含みのある笑いを向けてくる。

その言葉を聞いて、俺はカーヤさんが夜中に男性と話している時の事を思い出す。


「それって、婦館の事ですか?」

「はい。私が淫魔だという事がバレてしまい、彼らに無理矢理働かされているんです。と言っても私は男を魅了する力はあっても、男を悦ばせる仕草や行動が出来ないので体を売る事はありませんでしたけど…」


俺の質問にそう答えたカーヤさんの表情は、少し儚い感じがした。

婦館で働きたいという訳では無いと思うが…。

俺がそう思っていると、


「それで?もしかして、私達に婦館で働けって事?」


ヴェロニアさんが自分の体を抱きしめながらカーヤさんにそう質問する。

すると、ヴェロニアさんの言葉を聞いたカーヤさんは首を振って、


「いえ、実はそこで働いている男の子を救出して欲しいのです」


俺とヴェロニアさんにそう言ってきた。

その言葉を聞いて、


「男の子って事は、まだ成人していない子供ですか?」


俺がカーヤさんに質問する。

するとカーヤさんは、俺の言葉に頷いて、


「婦館で働いているのは何も女性だけではございません。娼婦として働いている女性達の心身の安定を保つために、働いている男性が婦館にはいます」


そう説明してくれた。

なるほど、婦館で働いている男性の事情と言うか、状況は分かった。

だが、カーヤさんがその男の子を助けたいと思っているのは何でなんだろう?

俺がそう思っていると、


「その表情は、何故私がその男の子を助けて欲しいのか…と思っていますね?」


カーヤさんが俺の事を見てそう言ってくる。


「はい。カーヤさんは何でその子を助けたいと思ったんですか?」


俺がそう聞くと、カーヤさんは少し表情を曇らせて、


「その子は、私の弟なのです」


そう呟いた。

その言葉はどこか悲しげで、罪悪感を感じさせる声をしている。

そんな声のまま、カーヤさんは更に続けて、


「弟は人質なんです。婦館を経営している男が、私に客を斡旋をするのを拒否したら、弟を奴隷として売り飛ばすと言ってきて…。淫魔の奴隷…しかも男となると、買い手はいくらでもいます」


俺にそう言ってきた。

すると、


「うちは奴隷関係の事はよく分からないけど、男の奴隷ってそこまで需要があるの?女の方が良いんじゃない?」


ヴェロニアさんが手を上げて、カーヤさんに質問をする。

すると、ヴェロニアさんの質問を聞いたカーヤさんは、


「…わかりました。お2人には特別に授業を行いましょう」


そう言ってどこからか取り出した眼鏡を着けると、


「まず、奴隷の需要をお話しましょう。まず男性の奴隷からですが、男性は基本的には力仕事や主を護る兵士として買われる事があります。しかし、時にはそれ以外の理由で買われる事もあります。簡単に説明してしまえば、奴隷の男が元料理人であれば、料理をさせる目的で買う事もあります。勿論、性奴隷になる事も十分にあり得ます。次に女性の奴隷ですが、これは様々な理由で買う人が多いと思います。料理をさせる事から始まり、掃除などの生活奴隷。夜のお世話をさせる性奴隷。お金稼ぎにするための戦闘奴隷。男女共に様々な面で奴隷と言うのは便利なんです。そして、高額に売られるのが、亜人種の奴隷です。獣人やエルフなど、ただの人ではない者達は、より高い金額で売られていきます。そしてそれは私、淫魔も同じです。淫魔の催淫は人の心を惑わし、冷静な判断が出来なくなります。それ故に淫魔の催淫を使って、商談相手を惑わして自分の都合のいい条件に契約させたり、人攫いなども簡単に出来ます。淫魔の催淫に関しては、男女共に異性同性関係無く催淫する事が可能です。ここまで言えば、もうわかりますよね?」


長い説明を俺とヴェロニアさんにしてくれた。

つまり、淫魔の奴隷は男女関係なく催淫する事が可能であり、それを使って悪い事を考えている人がいるって事だ。

そして、その話を聞いて奴隷としての強制力は無いが、弟の安全という強制力でカーヤさんが縛られている事も分かった。

なら、微力ではあるが力を貸したいと思う。

俺はそう思って口を開こうとして、


「その弟を助けてあげたら、最大でいくら払えるの?」


ヴェロニアさんの言葉を聞いて、口を開けたまま固まってしまった…。


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