護衛
え?
今、サンレアン王国って言ったこの子?
「あの…」
「何よ?」
「今、サンレアン王国って言いました?」
「言ったわよ!それが何!?」
「い、いえ…。何でもないです」
つまりこの子はティアの妹って事か?
だから見た事あるって思ったのか。
「それで私、コレット・サンレアンの事を知らないって言ったわね!」
「は、はい」
コレットさんは俺の事を睨みつけている。
俺何かしたか?
「私は!私はね!男が嫌いなのよ!」
えぇ~…。
そんなこと知らないよ。
「それなのに!男と一緒に!国に帰らないといけないなんて!あ~!もう最悪!」
「じゃあ、人を変えましょうか?」
出来ればそうして欲しい。
今サンレアン王国に行くわけにはいかない。
「そうした…」
「そんな事している暇はありませんよコレット様」
「………」
メイドさんが言うとコレットさんは凄い険しい顔をして黙ってしまった。
何かを我慢しているのか唸っているかと思うと、大声で、
「んぬ~~!!仕方ないから貴方で我慢するわ!」
言い切った。
「それが賢明かと」
この依頼受けたの間違いだったな~。
『ごめんなさいシュウ』
『大丈夫だよ。リーシャのせいじゃないさ』
リーシャが申し訳なさそうに言うがーリーシャのせいでは無い。
ここまで言われるとわかっていたらリーシャだって依頼を受けなかっただろう。
コレットさんが馬車に乗り込んで、メイドさんが扉を閉める。
「貴方は、私の隣に座って周囲の警戒を」
「わかりました」
メイドさんが俺にそう言ってきて馬を操るために手綱を握る。
俺はメイドさんの右隣に座る。
それから俺達は、ヴェルーズを出発した。
『シュウ、私が気配察知で周囲の警戒しておくから安心して』
『いや、俺も出来る限り警戒するよ』
リーシャに甘えるだけじゃいけないと思い俺も周囲を警戒する。
だが、見た感じでは魔物の姿は見えない。
「そんなに怖い顔をして警戒しなくても良いですよ」
「え?そんな顔してましたか?」
「はい」
俺が思っていた以上に顔が険しくなってしまったようだ。
「でも、こう思うと護衛の騎士とかいませんね」
「はい。私がメイド兼護衛をしていたんですが、この先に私が対応できない魔物が潜んでいる可能性があるので仕方なく、本当に仕方なく貴方達冒険者ギルドに依頼をしたわけです」
「メイドさんが護衛を?」
「メイドでも戦闘ができなければ主を護り抜く事ができませんよ。一対一なら身代わりなど対応も簡単ですが刺客や魔物が複数いた場合はメイドでも戦わなければいけません」
なるほど、そういう事か。
そうするとメイドも大変なんだな。
主人の身の回りの事に戦闘もできなければいけないとか。
「メイドさんも大変なんですね」
「仕事なので当たり前です。それより気になっていたんですが、メイドさんとは私の事ですか?」
「はい」
「私は貴方のメイドではないですよ。私はエルミーユと言います。これからは女神様と呼んでください」
この人はボケているのか表情だけじゃわからないな…。
「は、はあ…」
「何ですかその反応は」
エルミールさんが目つきを鋭くして俺を見る。
怖いって…。
『女神はどちらかと言うとアホよ』
『え?会ったことあるの?』
『えぇ』
『どんな人なの?』
『簡単に言うと幼女ね』
神様を幼女と言い切るリーシャも凄いな。
そんな事を思っていると、一昨日の森の所に来ていたようだ。
「ここから気を付けてください。森は隠れる場所も多いので、どこからでも仕掛けられます」
「わかりました」
馬車は森に入っていく。
「それと、この森が私が先程話した私でも対処できない魔物が出る場所ですので、より一層警戒してください」
この森で対処できないってもしかして…。
「それって森を氷漬けにしたっていう魔物ですか?」
「そうです。やはり冒険者ギルドでも有名になっているんですか?」
「だってそれ…」
俺が真実を言おうとした時、
『シュウ!左から何かくるわ!』
とリーシャが俺に教えてくれた。
「エルミールさん、左から何か来ます!」
「何を言ってるんですか?私には何も…」
エルミールさんが左を見る。
『シュウ、魔法で対処するわ。私を前に出して』
リーシャに言われた通りに義手を前に出す。
その瞬間、木の葉の中から大きい蜂が出てきた!
『なによ、鬼蜂じゃない』
子供ぐらいの大きさの蜂は気持ち悪いな…。
「鬼蜂!?何でこんな静かに飛んでるんですか!?」
エルミールさんが驚いている。
確かに蜂のくせに静かに飛ぶな。
『火弾』
リーシャが魔法を使うと、義手からバランスボールぐらいの火の玉が出て、蜂に飛んでいく。
シャァァァ!!
蜂に命中し蜂が燃え上がる。
あっという間に蜂は黒焦げになり死体は地に落ちた。
『これでよし!大丈夫よ』
『ありがとうリーシャ』
リーシャにお礼を言い座りなおす。
と、隣に座っているエルミールさんが俺を驚いた表情で見ている。
「貴方、今の魔法…。無詠唱でしたね?」
「え、はい」
実際はリーシャが使ったとは言えないしどうしよう…。
「しかもあの魔法は高位魔法の炎珠という魔法ですよね?何故貴方の様な冒険者が使えるのですか!」
「そ、それは…」
「まさか貴方…。冒険者になりすましたどこかの国の刺客ですか!?」
何か誤解されているようだ。
「お、俺は火魔法しか使えないんですよ!だから腕が上達したんです!」
嘘は言ってないぞ、実際火魔法しか使えないし。
『何言ってるのかしら?あれは火魔法の初級魔法よ』
リーシャが使うと初級魔法でも高位魔法になるんだね…。
エルミールさんがジトーとした目で見てくる。
う、疑われている。
「まぁ、いいでしょう。あの魔法を使えるなら奇襲でも私やコレット様を殺すことはできたはずですし…。今は貴方の事はどうでもいいのです」
そう言ってエルミールさんは馬車の操縦に集中する。
それからは何もなかったが、森は俺が思っているよりも深いようで暗くなる前に野宿となった。
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