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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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姉弟

あれから秋沙姉がしっかりと服を着るのを待ち、秋沙姉に扉の向こうでの状況を説明して帰ってきた事を教える。

すると、


「風邪になったら、今度は私が看病してあげる」


秋沙姉が俺にそう言ってくる。

その言葉に俺は、秋沙姉が風邪を引いた時の事を思い出す。

あの時は、風邪で苦しんでいる秋沙姉が心配でたまらなかった。

その結果俺は、学校を早退して秋沙姉の元に行ったんだったな…。

昔の事を思い出して、少し笑ってしまう。

すると、


「…何で笑っているの?」


秋沙姉が俺が笑っている事に気が付いて、そう聞いてくる。


「昔の事…、秋沙姉が風邪をひいた時に、俺が学園を早退して秋沙姉の看病した時の事を思い出して」


俺が秋沙姉の質問にそう答えると、


「…覚えていたの?」


秋沙姉が目を見開いて驚いた表情をする。


「当たり前だよ。秋沙姉が心配で授業だってまともに受けれなかったんだから」


俺がそう言うと、秋沙姉が俺に抱き付いてくる。

そして、


「…柊、今日は扉の向こうには行かないんでしょ?」


俺にそう聞いてくる。


「うん。今日はここで向こうの天気が回復するのを待とうと思って」

「…じゃあ、お姉ちゃんと昔の話をしよ?」


俺が秋沙姉の質問に答えると、秋沙姉が俺から離れてそう言いながら引っ張ってくる。


「そうだね。たまには姉弟で昔話でもしようか」


俺はそう言うと、秋沙姉に引っ張られて例の扉の部屋から出て移動する。

そして秋沙姉が選んだのは、


「…やっぱりここ」


ベッドでした。

確かに机に座って向き合ったり、隣同士で話す話題ではない。

どちらかというと、もっと近くにいられる話題だと思う。

俺もそう思い、秋沙姉の選択に文句は無かった。

俺と秋沙姉は少し狭いベッドに横になって、昔話を始める。

初めて会った時の事や、それからの事。

家での事や、学園での事。

そうして過ごしている内に、いつの間にか夜になっていた。

俺と秋沙姉は2人で簡易的な食事をして、再びベッドに入る。


「今日は横になってばっかりだったね」

「…うん。でも、たまにはこういう過ごし方も悪くない」


俺の言葉を聞いて、秋沙姉がそう返してくる。

その後、俺は明日も早いという事で特に何かをする訳でも無く眠りに着いた。

そして翌日、俺は目を覚まして隣に寝ているであろう秋沙姉の事を見ようとすると、


「………おはよ」


秋沙姉が先に俺の事をジッと見ていた…。


「お、おはよう秋沙姉…」


俺が挨拶を返そうとすると、秋沙姉が俺の唇に手を伸ばして指を当ててくる。

そして、


「…姉と呼んでくれるのは嬉しい…けど、名前で呼んで欲しい」


俺にそう言ってくる。

その言葉を聞いて俺は改めて、


「おはよう秋沙」


秋沙姉にそう言う。

すると、秋沙姉は頬を赤くして自身の顔を隠す様に掛け布団を被ってしまう。

姉の事を呼び捨てするのは、変な感じだ。

その様子を見て俺は微笑み、ベッドから起きて支度を始める。

それから少しして秋沙姉もベッドから起きて、服を着始める!?


「秋沙姉!寝てるとき服着て無かったの!」


俺がそう言うと、


「…名前」


秋沙姉が短くそう言う。


「…秋沙、どうして服着て無かったの?」


俺がそう聞くと、


「…柊が朝から元気になっていたから?」


その言葉を聞いて、俺は恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。

その後、秋沙ね…秋沙に行ってくると挨拶をして、例の扉の部屋に向かう。

ちなみに秋沙にはこれからここに残ってもらっている間、しっかりと服を着て待っていてもらえるように頼んだ。


「よし、今日の天気は大丈夫かな?」


俺は独り言を呟いて扉を開けて山小屋に行く。

すると、朝の陽射しが窓から入ってきて山小屋の中が明るい。

どうやら今日の天気は良い様だ。

そう思いながら、俺は山小屋から外に出る。


「雨の所為で地面がぬかるんでいるな…」


俺は足元に注意しながら歩き、崖の所に行き魔導袋からヴァレオさんから頂いた地図を取り出す。


「ここがフィノイ村で、この山がここだから…」


俺は地図の場所を指さしながら、独り言を呟いて確認する。

そして導き出された答えは、


「フィノイ村から北西の方向に真っ直ぐ行けば、着くだろうな」


俺はそう言って、魔素を操りながら地図を畳んで一度魔導袋に入れて、魔導剣に魔石が入っているか確認する。

すると、魔石が4つ入っている。

その中には赤い魔石と青い魔石が2つずつ入っている。

ルネリアが作ったのか…。

俺はそう思いながら、剣を腰に下げて魔素を纏った脚で地面を蹴る!

だが、


「うおぉ‥危ない…」


地面を蹴った瞬間に足元が滑って崖から転落した。

しかし流石に地面に激突する前に、空中で体勢を整えて空中に立つと、改めて空に向かって跳ぶ。

ある程度の高さまで駆け上がり、それからはただひたすらに目的地である帝都に向かって走り続ける。

だが、地図で見た時よりも距離がある…。

結構な距離を走ったが、まだ帝都の建物すら見えて来ない…。


「これは、もっと速度を上げないといけないかな?」


俺がそう呟いて魔素を操ろうとした瞬間、


「グワァ!」


俺に向かって飛んでくる魔獣が現れる!

俺はその魔獣の突進を躱すと、魔獣はもう一度俺の方に向かってくる。


「仕方がない…」


俺はそう呟いて、向かってくる魔獣の体を魔翔剣を即座に作って両断する!

すると、命を刈り取られた魔獣は塵になり、死石だけが下に落ちて行く。

俺はどうしようかと考えた末、今自分が金銭を持っていない事に気づき、お金に換える事ができるかもしれないと思って拾いに行く。

地面に下り立つと、俺が倒した魔獣の死石が落ちて砕けてしまっている…。

仕方なく俺は、ある程度の大きさがある死石だけを手に取り、細かく砕けてしまっている死石は放っておく事にし、北西に向かって走り出した。

そしてそれから走り出しておよそ1時間程して、大きな建物が見えてくる。

やがて建物に向かって走って行くと、どうやら検問している様だ。

ふむ…、俺大丈夫かな?

俺は不安になりながらも、検問所に並んでいる人の後ろに並び、自分の番が来るのを待つ。

そして遂に、俺の番になった。


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