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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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罵る

ランシールさんと自己紹介をした後は速かった。

薬草はすぐに見つかったし、それをもらう事が出来た。

今は、エルフの…いや、ここはダークエルフの森だ。

ここにいる皆さんは、ナーテさんの為に森の禁忌を犯した勇気ある人たちなのだ。

普通のエルフという扱いは失礼だ。

だから、敬意を持って接しなければ。


「ありがとうございます。突然来てこんな事を頼んだのは不躾でした。許して下さい」


俺がそう言うと、


「気にしてはいない。君たちが来てくれたおかげで、ようやく心の整理が出来た。これから頑張らないといけない。エルネット、また来てくれ。いや、堕ちてしまった私達の森には来れないか…」


ランシールさんがそう言ってくれる。

そして、エルネットさんの事を見て苦笑しながらそう言うと、


「そんな事ない。絶対に、森の皆と来る。姿形が変わっても、同じエルフ。今後は交流をしたい」


エルネットさんがランシールさんの言葉を否定して、微笑みながらそう言う。

その言葉を聞いたランシールさんの表情は、晴れやかな笑顔だ。


「それと…言い忘れていましたけど、シュウは私達のエルフの森の代表です」


突然のエルネットさんの発言に、俺とランシールさんがポカンとする。

え、俺ってそうだったの?


「この人は人間…だが?」


ランシールさんもそう言う。

すると、ランシールさんの言葉を聞いたエルネットさんが、


「旦那様は私の母とも婚姻関係ですので、村の長である母と結婚したという事は、旦那様が長の代理だという事でもあるのです」


笑顔でそう言った。

だが、エルネットさんの言葉を聞いた俺は初めて聞いた事に驚いて、口を開けたまま固まってしまう。

そして、ランシールさんは俺から少し離れると、


「ケダモノォォッ!!」


そう叫んで森に走って行ってしまった…。

これは…、大丈夫なのだろうか?

今後のエルフとダークエルフの交流を心配していると、


「これで、旦那様に近づく女はいなくなった」


エルネットさんはそう言って俺に微笑んでくる。

すると、


「良い事よ。これ以上シュウを独占する時間が減るのは嫌だもの…。よくやったわねエルネットさん」


俺の右腕になっているリーシャがエルネットさんにそう言う。


「旦那様の妻として、しっかりしないと…」


その言葉を聞いて、俺は女性関係に関してはリーシャにもエルネットさんにも信用されていない事に傷心する…。

その後、俺達はリーシャの転移魔法でヴェルーズ冒険者ギルドに行き、薬草を届ける事が出来た。

フェリアンさんから依頼完了のお金を受け取り、その日は家に帰って皆と過ごした。

そして翌日、俺はまたグリニオン帝国の家に行き扉の向こうの世界に行く事にしたのだ。

皆からは少しは休んだらどうだと言われたのだが、俺は向こうの世界に行きたいと言って許可を貰った。

そして今回一緒に来てくれるのは、


「…私」


秋沙姉だった…。

正直なところ、秋沙姉と2人っきりの時間を過ごしたら、色々と大変なんではないのかと身構えてしまう…。

そう思いつつ、俺と秋沙姉はリーシャの転移魔法によってグリニオン帝国の家に移動した。


「…ここが?」


秋沙姉が部屋の中を見てそう聞いてくる。


「うん。2階に例の扉があるんだよ」


俺は秋沙姉にそう言って、秋沙姉の手を握って部屋を移動する。

小さい頃、秋沙姉に手を引っ張ってもらった事があったな…。

昔の事を思い出しながら、階段を上がっていると、


「…柊が大きく見える」


秋沙姉が後ろからそう言ってくる。


「大きいって…体の事?」


俺が秋沙姉に聞き返すと、


「…それもだけど、纏っている雰囲気」


秋沙姉が俺の質問にそう返してくる。

俺の雰囲気か、自分ではわからないモノだが…。

そう思いながら、俺と秋沙姉は例の扉の部屋に入る。

すると、秋沙姉が例の扉を見ている。

ここに来る人はやはりあの扉が気になるようだ。


「…この先に、こことはまた違った世界が広がっているの?」


秋沙姉が扉を見てそう聞いてくる。


「そうだよ。じゃあ行ってくるね、おそらく3日くらい向こうに行ってると思う」


俺はそう言いながら、秋沙姉を抱きしめる。


「…いってらっしゃい。おすわりして待ってる」

「普通に待ってて欲しいな…」


俺と秋沙姉はそう言って笑い合い離れる。

俺は秋沙姉に背を向けて歩き出して、扉を通る。

そして、山小屋に入ると中が暗い…。

こんなに暗いなんておかしい。

何か起きたのかな?

俺はそう考えて外に出ようとすると、山小屋が暗い理由が分かった。

雨が降っているのだ。

その所為で明かりが無いこの山小屋の中が暗いのだろう。


「どうしようか…。外に出て濡れるのは良いが、風邪になったらマズいな」


独り言を呟いて、今日は一度秋沙姉の所に戻ろうと振り返る。

そして扉を通った瞬間、


「………」

「…はっはっはっは」


まさかの全裸で犬の様におすわりしている、秋沙姉が目に入ってしまった…。

本気でおすわりしているとは思えなかった…。


「色々とツッコミたいと思ったけど、服を着て秋沙姉」

「…突っ込むのなら、獣の様にお願い」


秋沙姉はそう言って俺の方にお尻を向けようとしてくる!?


「ちょちょちょちょっと待って秋沙姉!そういう意味ではないから!お願いします服を着て下さい!」


俺が目を瞑ってそう叫ぶと、


「…命令してくれないと服を着ない」


秋沙姉は少し不満そうな声を出して俺に言ってくる。

命令って…。


「ふ、服を着ろ秋沙姉」


俺は出来る限り命令口調で秋沙姉に指示を出す。

だが、


「…もっと罵る様に」


秋沙姉は更に追加注文してくる!?

罵る様にって、俺はそう言うのは基本的に得意ではない…。


「…さぁ柊、罵って」


秋沙姉が俺に言ってくる…。


「…こ、このメス犬!早く服を着ろ!」

「…わぉ~ん!」


俺は激しい後悔の気持ちを心に宿してそう言うと、秋沙姉は嬉しそうな声を出して犬の鳴き声の真似をして返事をする。

それから秋沙姉が服をちゃんと着るまで待つ。

下手にもう着れたかと聞くと、秋沙姉は着れたと言って安心させるような事を言ってくる。

だが、目を開くとそこには半裸の秋沙姉…。

秋沙姉の対応は、物凄く疲れる…。


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