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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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後悔

結局寝不足のままヨハナとアウレーテは屋敷に向かって馬車に乗って向かっていた。

ルネリアも一緒に同行している。

馬車に揺られ、寝不足も相まって吐き気と戦いながら1時間。

そして辿り着いた3人の目の前に広がっているのは、森に出来た広い道。

その先に会ったはずのルネリアの住んでいた場所、屋敷が跡形も無くなっていた。

その光景を見たヨハナとアウレーテは、ただ口を開けて呆然としている。

そして、彼女達の一歩後ろにいたルネリアは、ただ自分が閉じ込められていた家が無くなった事に喜びを感じていた。

これでもう自分は、部屋に閉じ込められず、外に行く事が出来る。

自分の知らない世界を感じる事が出来ると内心喜んでいる。

3人はそれぞれの気持ちの中、しばらく屋敷跡地に佇んでいた。

少しして、3人は馬車に乗ってフィノイ村に帰る。

その帰り道、


「アウレーテさん…」


静かだった馬車でヨハナが声を出す。


「…どうしたの?」


ヨハナに声を掛けられたアウレーテが返事をする。

すると、


「あの人…シュウはどこ行ったと思いますか?」


ヨハナがそう呟く。

その言葉を聞いたアウレーテは、


「あの人は旅人だと言ってたわよね…。もう他の村や国に向かってしまったかもしれないわ」


そう言って、ルネリアの手を握る。

手を握られたルネリアは、アウレーテの手を握り返す。

今2人の心の中は、シュウに会って信じる事が出来なかった事を謝罪したいと思っている。

だが、そのためにはシュウを追いかけなくてはいけないと思っている。

しかしそれは出来ない。

ルネリアの助けになると約束したのだ、彼女を置いて行くなんて出来ない。


「つまり、あの人がもう一度フィノイ村に来ないと謝罪する事も出来ないって…事ですよね」


ヨハナの言葉に、アウレーテは顔を暗くする。

そして、


「来ると…思う?」


2人が一番恐れている言葉をアウレーテは放つ。

ヨハナもアウレーテも、自分があんな態度を取られたら二度と会いたくないと思ってしまう。

それ故に、彼が自分達に会いに来ることは二度と無いのではないか…。

アウレーテの言葉を最後に、馬車の中は静寂に支配されていた。




3人が馬車でフィノイ村に帰って来る頃、シュウは朝の陽射しに目を覚ましていた。


「…くしゅッ…」


俺は肌寒さを感じてくしゃみをする。

そして、自分の体を見て驚く…。

いわゆるキスマークが体中に付けられているのだ…。

そういえばエルミールは?

俺はそう思いながら部屋の中を見ても、彼女の姿は見えない。

どうやら、ここにはいないようだ。

と言うか、俺も何で気づかないんだ?

自分自身に疑問を感じながら、服を着て寝室を出る。

そうして1階に下りると、エルミールが帰りの支度をしていた。

今回はリーシャがいないから、俺がエルミールを連れてサンレアン王国に帰り、次の誰かをリーシャの転移魔法で送って貰わないといけない。

その後、エルミールが支度が終わるのを確認してから、グリニオン帝国を出発した。

道中、エルミールを抱えて走っていたのだが、彼女が悪戯をしてきて危ない事が少しあったが、無事にサンレアンに到着した。


「ただいまぁ」

「ただいま帰りました」


俺とエルミールが家に入ると、ドタドタ足音が聞こえてくる。

そして、


「「「おかえりなさい!!」」」


春乃、真海ちゃん、ルリィが出迎えてくれる。


「ただいま、他の皆はどうしたの?」


俺が3人に聞くと、


「他の皆様は用事で出掛けてしまいました…」


ルリィが俺の質問に答えてくれる。

そうなのか、俺がそう思っていると、


「ご主人様、ご主人様にお手紙が届いているんです」


ルリィがそう言って手紙を俺に渡してくる。

俺はそれを受け取り開いて中に目を通す。

そこに書かれていた文字は、


「手伝って欲しい依頼がある。出来れば来て欲しい。ザール」


仕事の話だった。

ザールさんが手伝って欲しい依頼って何だろう?

俺がそんな事を考えていると、


「お兄ちゃん、なんて書いてあるの?」


春乃が俺に訪ねてくる。


「仕事を手伝って欲しいって書いてあるね」


俺がそう言うと、


「そうでした!ご主人様に渡したい物があったんです!」


ルリィはそう言って廊下を走って行ってしまった。


「先輩?どうするんですかその手紙?」


真海ちゃんが俺にそう言ってくる。

俺は手紙を畳んで元に戻して、


「話だけでも聞いてみるよ。俺に出来る事なら手伝いたいし」


俺がそう言うと、


「扉の向こうはどうでしたか?」


真海ちゃんが俺にそう聞いてくる。

真海ちゃんの言葉に返事をしようとすると、


「色々あったんですよね?先輩の顔を見ればわかりますよ」


俺が何かを言う前に、真海ちゃんが俺の顔を覗き込みながらそう言ってくる。


「俺ってそんなに顔に出やすい?」


俺が苦笑しながら真海ちゃんに聞くと、


「そんな事ないですよ。ただ、私が人の表情の変化に敏感なのと、‥好きな人の顔をずっと見てるからです」


真海ちゃんは最初の言葉は笑いながら言っていたが、最後の言葉は恥ずかしそうに顔を赤くしながら言う。

その言葉を聞いて、俺は真海ちゃんの言葉が嬉しく感じる。

すると、


「ちょっと真海!お兄ちゃん独占しないで!」


春乃が俺と真海ちゃんの間に入って来る。

すると、


「シュウさんの体を見て下さい」


俺の後ろにいたエルミールが俺の服を一瞬で脱がしてくる!?

何でそんな事できるんですか!?

何の抵抗も出来ずに上半身裸になった俺の体を見て、春乃と真海ちゃんは口を開けたまま驚いている。

そして固まっている2人に、


「シュウさんを独占してしまいました」


エルミールが俺に抱き付きながらそう言う。

すると、


「ご主人様!持ってきました…」


ルリィが、俺に渡したい物を持って来て固まる。

そして、俺は気づく。

俺の体には、昨夜の跡が残っているという事に…。

俺がそんな事を思った瞬間、


「ただいま」

「…帰ってきた」


後ろから声がした。

その声に怯えながらも、俺は振り返る。

そして見たのは、俺にくっ付いているエルミール、そして俺の体に刻まれているエルミールの付けた跡の順に見て、瞳の光が無くなった怜華さんと、俺の体を見て、


「…私も柊に付けて欲しい」


そう呟いている秋沙姉の姿だった。


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