信用
森の中を走り続けて結構な距離を駆け抜けると、森を抜ける事が出来た。
森を抜けると、遠くの方に建造物が見え、そこがフィノイ村だった。
フィノイ村に着いた頃にはすでに夜になっていたが、何とか辿り着く事が出来た。
そして俺達は、ヴァレオさんの魔導店に入る。
俺達がお店の扉を開けて駆け込んでくると、ヴァレオさんは凄い驚いていた。
だが、その表情はとても晴れやかで、ヨハナさんの事をとても心配していたようだ。
それから皆は荒れていた息を落ち着かせて、話し合いになった。
「これから…どうしましょうか?」
そう言うアウレーテさん、表情はあまり良くない。
「どうするも何も…ここから逃げるしかないですよ。せめて水の魔法使い様の手が伸びない所に」
アウレーテさんの言葉に、ヨハナさんが顔をしかめて言い難そうに言う。
おそらくヨハナさんは、ヴァレオさんの事を気にしているのだろう。
視線も、ヴァレオさんの事をチラチラと見ているし…。
そこで、俺は手を上げる。
「俺は、エグモントをどうにかしてルネリアを水の魔法使いにしたい」
俺がそう言うと、ヨハナさん、アウレーテさん、ルネリアが驚いた表情をする。
「ルネリアが水の魔法使いになったら、エグモントが支配していた村とかは平和になると…思うんだ」
俺の言葉を聞いて、ルネリアさんの事を見るヨハナさんとアウレーテさん。
そして、
「「確かに」」
同時にそう言う2人。
どうやら、俺の提案には賛成のようだ。
俺がそう思っていると、
「ま、待って…下さい。私は…目も見えないし、自分で走る事も出来ないですし…」
ルネリアが、そう言ってくる。
「それなら、ヨハナさんとアウレーテさんが手伝うって言うのはどうですか?」
俺がそう言うと、ヨハナさんとアウレーテさんは互いの顔を見つめる。
そして、
「良いかも」
「良いかもしれないです」
2人が同時に言葉を出すと、ルネリアの表情も少し嬉しそうに見える。
これなら、大丈夫だろう…。
俺は3人を見てそう思い、最後に残っている問題を言葉にする。
「ヨハナさんとアウレーテさん、2人に言う事があります」
俺が2人にそう言うと、嬉しそうに笑い合っていた2人が真剣な顔つきで俺の事を見てくる。
「勇騎士団団長のローラントさんが、水の魔法使いエグモントの配下だったんです」
俺がそう言うと、2人の真剣な顔が歪む。
その表情はまるで、俺に対して憎んでいる様な表情だ…。
「貴方、何言ってるの…」
ヨハナさんが低い声で俺にそう言ってくる…。
そうだ、ヨハナさんはローラントさんに特別な感情を抱いているんだ。
こんな事を言ったら、嫌な気持ちと言うか良い気持ちにはならない。
…でも、言わないといけない。
これは、とても大切な事だから…。
「ヨハナさんとアウレーテさんを助ける前に、魔法使いの屋敷でローラントさんがいるのを見ました。そこで聞いてしまったんです。その…ヨハナさんとアウレーテさんのことに関して色々と裏でしていたようなんです」
俺がそう言うと、ヨハナさんが俺の事を睨んでくる…。
「そんな事、信じられない」
ヨハナさんが微かに体を震わせながら、俺にそう言ってくる。
俺はヨハナさんは信じてくれないと思い、アウレーテさんの事を見る。
「ッ!?」
だが、アウレーテさんも俺の事を冷めた目で見てくる…。
…当たり前か…。
俺は数日過ごしただけの旅人で、ローラントさんはこの村で色々と活躍している人なんだ…。
俺よりローラントさんが信頼されているのは当たり前だ…。
「出て行って…」
ヨハナさんが小さい声で短く呟く。
小さい声だったが、その拒絶の言葉は俺に聞こえた。
このままここに居ても、意味は無い。
ただ、2人の逆鱗に触れてしまうだけだ…。
「…すみません」
俺はそう言って立ち上がり、ヴァレオさん店の扉を開ける。
すると、俺の服が引っ張られる…。
後ろを見ると、ルネリアが不安そうな表情で俺の事を見ている。
俺はルネリアの手を握って、耳が良い彼女にだけ聞こえる様に、
「大丈夫、2人は信頼できる人だから。ごめんね」
俺はそう言う。
言葉が終わると同時に、俺はルネリアから手を離して外に出る。
ルネリアが何かを言いたそうだったが、無視をしてしまった。
「…ごめんね」
俺はそう呟いて、山小屋にある森に1人入っていく。
森の中を歩きながら、俺は考える。
こうなったら、俺1人で乗り込むしかない。
本当なら証人として、1人付いて来てほしかったがそれはもう無理だ。
となると、俺はいつ頃乗り込めば良い?
夜に乗り込んでも、魔導剣の炎で闇討ちには適さないだろうし、今頃俺達が脱走しているのがバレて、フィノイ村に行く準備をしているだろう。
すると、
「イテ…」
何かにぶつかった…。
前を見ると、大きな蜂が羽休めでもしているのか、地面に下りている。
その体にぶつかってしまったようだ。
蜂は自身にぶつかってきた俺の事を認識すると、俺に襲いかかってくる。
「…魔翔剣」
俺はそう呟き、魔素を圧縮して剣の刃を作り、俺に襲いかかってきた蜂の頭を刎ねる。
すると、蜂の死体は一瞬で塵になり、死石が地面にゴトッと落ちる。
俺はそれを拾って持ちながら、山小屋に向かった。
それから少し登山をして、山小屋に辿り着いた。
扉を開いて、更に部屋の真ん中に佇んでいる扉を開けて中に入る。
そして、グリニオン帝国に帰って来ると、家の中が綺麗に掃除されている。
周りをキョロキョロ見渡すと、エルミールさんが椅子に座りながら寝ている。
掃除をしてくれて疲れてしまったのだろう。
俺は彼女を起こさない様に持ち上げて、寝室に連れて行く。
階段を下りていると、
「…ん…シュウ…さん?」
エルミールさんが起きてしまった。
「すみません。起こすつもりは無かったんですけど」
俺がそう言うと、エルミールさんはもう一度瞼を閉じる。
眠いんだな…。
俺はそう思いながら、寝室に行ってベッドにエルミールさんを乗せる。
そうして、布団をかけようとした瞬間、
「うお…」
いきなりエルミールさんに腕を掴まれて、エルミールさんに覆い被さる様に倒れ込む。
そして、
「シュウさん、どうしたんですか?表情が暗いです」
エルミールさんにそう言われてしまった。
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