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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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裏切り

俺は先程の話が信じられずに固まっている。

どういう事だ…、あの人は一体…。


「あの…」


俺がローラントさんの事を考えていると、背中にいるルネリアが声を掛けてくる。


「…どうしたの?」


俺は動揺しながらも、ルネリアの言葉に反応すると、


「あの人の…声を屋敷で何度も聞きました…」


ルネリアがそう言う。

俺が黙っていると、ルネリアは続けて、


「屋敷にいる女性に…団長‥と呼ばれていました。ですが、助けを求めている女性を…しつけと称して拷問していました。薬で…精神を壊して、音だけでしたが何度も…鞭か何かで女性を叩いていました」


俺にそう説明してくれる‥。

つまり、ローラントさんはエグモントの配下にいるという事か…。

裏切っていたのか…自分の信頼している勇騎士団の人達を…。

助けて欲しいと願う団員を…壊したというのか…。

俺は今すぐに飛び出してローラントさんと話したいと思う…。

だが、今はルネリアやヨハナさんとアウレーテさんを逃がす事が先決だ…。

俺は左手を強く握りしめて、人に見つからない様にヨハナさんとアウレーテさんが閉じ込められている牢屋を目指す。

そうして何とか誰にも見つからないで牢屋まで行くと、2人で身を寄せ合っているヨハナさんとアウレーテさんが見えた。


「すみません。遅れてしまいました」


俺がそう言うと、


「誰?その子?」


ヨハナさんがルネリアを見てそう聞いてくる。


「説明とかは後でします。今はここを脱出しましょう」


俺はヨハナさんにそう言いながら、魔素を圧縮して魔翔剣を作り出し牢屋に付いている南京錠を斬り裂く。

突然壊れた南京錠に驚きながらも、2人は急いで牢屋から出る。


「それで、どうやってここから出るの?」


ヨハナさんが周りをキョロキョロ警戒しながら質問してくる。


「ヨハナさん、ルネリアを背負う事は出来ますか?」

「…やってみる」


俺は背中からルネリアを背中から下ろして、俺の背中から下りたルネリアの前にヨハナさんが行くと、先程の俺と同じようにヨハナさんがルネリアを背負う。


「大丈夫ですか?」


俺はヨハナさんが普通そうにルネリアを背負う姿を見て、そう聞いてみる。

すると、


「………」


何故か睨まれてしまった…。

あ…そういう事か。

ヨハナさんは俺に言いたいのだろう。

変態野郎!…と。

だがこれで、追手が来ても俺が応戦する事が出来る…。

俺はヨハナさんの視線に気づかないフリをしつつ、そういえばここから出る方法を忘れていた…。

ローラントさんの事で考えがそっちに向かってしまったからだろう。

俺がそんな事を考えていると、


「あの…もう少ししたら…出入り口の周りにいた人達はいなくなります。その時に行きましょう」


ヨハナさんの背中にいるルネリアがそう言う。

それから少しの間、俺達は息を潜めながらいつでも飛び出せるように準備をしておく。

そして、


「音が…無くなりました。今のうちに」


ヨハナさんの背中にいるルネリアがそう言った瞬間、俺達は足音を出さない様にしつつ、急いで階段を上って人がいないのを確認し、扉を開いて魔法使いの家から脱出する事に成功した。

屋敷は森の中に建っていたらしく、屋敷から飛び出すと少しだけ整えられた道以外、屋敷の周りは森の木々に囲まれている。


「少し行った所で森に入って下さい!」


俺はヨハナさんとアウレーテさんの後ろを走りながらそう言う。

それから少し整えられた道を走って、森の中に入る。

森の中を入っても、少しの間走り続ける。

俺も走っている間、魔視で追手がいないか確認していたが、誰も追って来ていない事を確認して前を走っている2人を止める。

それから俺は、ルネリアを背負いつつ走って疲れているヨハナさんにルネリアを背負うのを代わると言うと、拒否されてしまった…。

それからも走り続けて、俺達は魔法使いの屋敷が完全に見えなくなる所まで行く事が出来た。

今は皆で少しだけではあるが休憩している。

と言っても、俺はそこまで疲れていないから周りの監視をしていて、ルネリアも地面にちょこんと座っている。

主に休憩しているのは、ヨハナさんとアウレーテさんだ。

俺が渡したルリィ特製回復薬を飲んで回復してはいるが、精神的に疲れているだろう。

とりあえず脱出した事で安心しているのは、表情を見ればわかる。

だが、俺も含めて脱出したのがバレてしまうのは時間の問題だ。

早急に事態を治めないと、大変な事になる。

俺がそう思っていると、


「これから…どうしましょう」


ルネリアが声を出す。

その声を聞いて、ヨハナさんが俺に、


「ところで、この子は誰なの?」


そう聞いてきた。

俺はルネリアの隣に行き、


「この子は水の魔法使い、エグモントの娘です」


そう言う。

その言葉を聞いたヨハナさんとアウレーテさんは驚いた表情をしている。


「ちょ、ちょっと待って!水の魔法使い様に子供がいるなんて聞いた事が無い!」


ヨハナさんが慌てて俺とルネリアを見ながらそう言う。

すると、


「世間には…公開されていないと…思います。私がいたら‥邪魔になると思うので…」


ルネリアがヨハナさんの方を向きながらそう言う。

その言葉を聞いたヨハナさんは、


「…どういう事?」


顔をしかめながら、ルネリアに質問する。

その後、ルネリアは俺と会った時と同じようにヨハナさんとアウレーテさんに自分がどういう状況だったのかを説明した。

その結果、


「大変だったのね…」

「酷すぎる…」


ヨハナさんとアウレーテさんはルネリアを抱きしめてルネリアの頭を撫でている。

それから少しの間、3人がくっ付いているのを待ってから、


「そろそろ行こう。急がないといけない事があるから」


俺が3人に言って、フィノイ村に向かう事になった。

俺がルネリアを背負う事になると、ヨハナさんが睨みつけてくるが気にしない。

今は緊急事態なのだから仕方ない…。

ルネリアの背中の感触を気にしないようにしながら、俺は腰のポーチから回復薬を取り出して2人に渡しておく。

疲れたら飲んでくれと頼み、俺達はフィノイ村に向かって走り出す。


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