おんぶ
俺はルネリアの言葉を聞いて、あの魔法使いの外道な行動に殺意が増幅する…。
自分勝手すぎる…。
俺がそう思っていると、
「あ、あの…何か怒らせる様な事、言いましたか?」
ルネリアが怯えた様子で俺にそう聞いてくる。
「ご、ごめんね。ルネリアの事を怒ってる訳じゃないんだよ」
俺がそう言うと、ルネリアは安心した様子になる。
そんなルネリアを見て、俺は彼女こそ水の魔法使いとして生きていくべきだと思ってしまう。
まだ少ししか話していないが、この子の父よりも良い魔法使いになれると思う。
「ルネリア…ルネリアはお父さんの事をどう思ってる?」
俺はルネリアに質問する。
ルネリアは良い子だ、そんな子だからこそあんな父でも必要ではないかと考えてしまう。
ルネリアが必要とするなら、俺は不本意だがあの男を半殺し程度で済ませるしかない…。
そう思っていると、
「何とも…思っていないです。あの人は…女の人に酷い事をして…私の事も閉じ込めている人ですから…」
ルネリアがそう言う。
「多分、俺は君のお父さんを殺してしまうと思う。恨まれても仕方ないと思う…」
「構いません。あの人は…力と知力、権力があるただの獣です」
俺がそう言うと、ルネリアがそう返してくれる。
「あの人が死んでも…悲しむ人なんて…いません」
ルネリアがそう言うと、体を動かして起き上がろうとする!
俺は慌てて彼女の体を支えようとすると、ルネリアの体に触れた瞬間に、彼女の体が俺の予想以上に酷い状態だという事に気づいた。
そして…話している時に薄々感じていたのだが、ルネリアは目が見えていない…。
ルネリアを見ながらそう思っていると、
「目の事ですか?生まれた時からそうなんです…」
ルネリアはそう言って、少しだけ微笑む。
「何で、俺がルネリアの目を気にしたって分かったの?」
俺がそう聞くと、彼女は細い腕を持ち上げて自分の鼻、耳、頭の順に指差す。
そして、
「匂いや聞こえる音、後は直感的なモノです」
そう言った。
視覚がない代わりに、様々な器官が視覚の無いのを補おうと鋭くなっているのだろう。
「それは凄いね。じゃあ今俺がどんな事しているのか分かる?」
俺はそう言って、腰から付けているポーチからルリィ特製回復薬を取り出す。
するとルネリアは、
「何かを取り出しました。おそらく腰辺りからです。モノは…液体ですね、爽やかな香りがします」
そう言い当てたのだ。
彼女は凄い…。
「正解。この液体、元気が出る薬なんだ。飲んでくれないかな?」
俺はそう言って回復薬の栓を開ける。
それを近づけると、彼女は申し訳なさそうに、
「すみません。飲ませて…くれませんか?手で物が持てなくて」
俺にそう言ってくる。
「そっか…。気が付かなくてごめんね」
俺はそう言って魔拳で回復薬を持って左腕で彼女の体をゆっくりと起こすと、ルネリアは口を開く。
俺はルネリアの口に回復薬の瓶を傾けて、ルネリアが無理なく飲めるように液体をゆっくりと入れていく。
そうしてルネリアが回復薬を飲み干すと彼女は、
「ごちそう…さまでした。スッキリした味で美味しかったです」
俺にそう言ってくる。
これで、少しでも回復できただろうか?
俺がそう思いながらルネリアを見てると、
「…あれ?」
ルネリアが突然声を出す。
すると、ルネリアの腕が上がり彼女は布団を自分で捲った。
見ると、ルネリアの腕はまだ細い方ではあるのだが、最初見た時よりも健康的な太さになってきている。
おそらく、ルリィの回復薬だろう…。
相変わらずルリィが作る回復薬は異常な程、回復効果があるな。
俺は心の中でルリィにお礼を言い、ルネリアに、
「立てるかな?」
そう聞いてみる。
するとルネリアは、おそるおそるベッドから動いて床に足を置くと、立ち上がろうとする。
だが、流石にそこまで回復し切れなかったのか、立ち上がる事は出来ない。
それでも頑張って立ち上がろうとするルネリア。
「大丈夫、無理はしないで。これから回復すれば、すぐに立てる様になるよ」
「本当…ですか?」
俺の言葉に、ルネリアの表情が嬉しそうになる。
「うん。だから今は無理しないで、俺の背中に乗って」
俺はそう言いながらルネリアの前にしゃがむ。
すると、彼女の手が俺の背中の位置を確認する様に撫でてから、ゆっくりと俺の背中に乗ってきたッ!?
「……」
「どう…しました?何か…間違っていますか?」
俺が黙っていると、ルネリアが心配そうな声で聴いてくる。
「い、いや‥。合ってるよ、そのままでいてね」
俺は平然とした態度を無理矢理して、背中に乗っているルネリアにそう言う。
だが、俺の心は冷静ではいられない。
何故なら、まだ春乃より年下だと思っていたルネリアに、凶器が備わっていたとは思わなかったのだ…。
その凶器とは…、俺の背中とルネリアの体に挟まっている胸…。
春乃が見たら大泣きするのは確実なほど、大きいのだ。
さっき見た時は特に気にならなかったのに…。
「あの…大丈夫ですか?」
「う、うん」
俺の動揺が心配になったのか、ルネリアが声を掛けてくる。
俺はルネリアの言葉に返事をしつつ、立ち上がって歩き出す。
これ…誘拐じゃないよね?保護だよね?
俺がそう思いながら、とりあえずルネリアと牢屋にいるヨハナさんとアウレーテさんを連れて逃げようと考える。
考えながらではあるが、警戒をしながら部屋からゆっくりと出ると、先程女性達が掃除をしていた方から話し声が聞こえてくる。
「ルネリア、静かにしててね」
「はい」
俺は小さな声でルネリアにそう言うと、彼女は小さい声で返事をしてくれる。
元々ルネリアの声は小さいが…。
そんな事を考えながら来た道を戻っていると、話し声の1つに聞き覚えのある声が聞こえてきた…。
俺は身を低くして話している人達を見ると、ローラントさんがいた。
ローラントさんとエグモントの護衛をしていた2人が話している。
魔石の話でもしているのだろうか?
俺がそう思った瞬間、
「あの赤い髪の女は俺の奴隷にするんだ。手を出さないで欲しいな」
ローラントさんの口から、信じられない言葉が聞こえた。
そして、
「もう1人の女は、エグモント様に献上したんだ。エグモント様の許可が下りたら好きなだけ薬漬けにして嬲れば良いじゃないか」
彼は気味悪い笑みを浮かべてそう言い、家の奥へ歩いて行った‥。
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