殺意
部屋の中に入ると、嫌な臭いに鼻を摘む。
刺激臭と生臭い部屋中を見ると、ルリィの部屋の様に様々な草や根などが置かれている。
人の姿が無いだけ良かった…。
俺はそう思いながら、魔素で魔拳を作っておく。
最悪、見つかった時は気絶させるしかない…。
俺はそう思いながら、嫌な匂いがする部屋から飛び出して、隣の部屋に移る。
静かに扉を閉めると、その部屋の中を見て俺は体の動きを止める…。
そこには、鎖で繋がれている女性が3人いた。
どう見ても魔法使いの仲間には見えず、俺は何とか足を動かしてゆっくりと1人の女性に近づく。
すると、俺が近づいた瞬間、鎖に繋がれた女性が俺の事を見て、
「いやぁ…いや…」
小さな声で俺にそう言ってくる。
「あ、安心して下さい。何もするつもりは無いです」
俺がそう言っても、女性は拒絶の言葉を呟き続ける。
そして、
「もう…薬は止めて…」
女性は拒絶の言葉の途中にそう言った。
薬…。
おそらく、隣の部屋にあった物だろう…。
あれを嫌がる彼女に無理矢理服用させたのだろう…。
「あぁ…これは少し…殺意が湧くな…」
俺は小さく、本当に小さい声でそう呟く。
俺は無意識に魔素を操るのを我慢して、他の女性の側に行く。
すると、
「薬…頂戴…薬…頂戴…」
こちらの人は、もう依存症になってしまっている…。
おそらく最初の方はさっき話しかけた女性の様な反応をしていたのだろう。
だが、度重なる依存度が高い薬を服用させられて精神が壊れてしまった様だ…。
薬の依存症をどうにか出来ないか、リーシャやアルに聞いておこう。
俺はそう思いながら、最後の女性の所に行く。
すると、彼女は顔を近づけないとわからない程小さな声で、何かを呟き続けている。
俺は一言女性に謝ってから顔を近づける。
そして、聞こえた。
「クスリをくださいどんな事でもしますから、クスリをくださいどんな事でもしますから、クスリをくださいどんな事でもしますから…」
同じ言葉を、永遠と言い続けている。
酷い…。
エグモントとか言ったなあの魔法使い…。
俺は女性の側から離れて歩き出す。
本当なら、鎖を斬ってあげたいのだが、変に状況を動かすのは危険だと判断して後にする。
ヨハナさんとアウレーテさんも、このままじゃあの人達と同じ事をされてしまう…。
俺はそう思い、早めの解決を目指して部屋を出る。
廊下の方は掃除をしている人はいないな…。
俺はそう思いながら、廊下を足音を立てないで歩いて行く。
リーシャだったら、魔法で姿とか消せるんだろうな。
俺はリーシャの万能さに嫉妬しながら歩いていると、他の部屋とは違う扉を見つけた。
扉自体は今まで見てきた扉と一緒なのだが、扉に何やら魔導具が付けられているのだ。
森で見た物と、形状が似ているな。
魔導具を見ながらそう思い魔視で確認すると、扉に付いている魔導具から青い魔素が出て扉を覆っている。
もしかしての話だが、この魔導具が森の木に付いていた魔導具と同じ効果があるのなら、この扉の奥のモノを護っている、もしくは閉じ込めている事になる。
扉の奥からは魔素の反応は無い…。
この扉を開ける事は造作もない事だ。
だが、開けた扉の先に何があるのか…。
いや、考えても仕方がない。
俺は扉を覆っている魔素を霧散させて、扉を開ける。
体を滑らせて中に入り、部屋の中を見る。
すると、そこにはベッドが置かれているだけ…。
音を立てない様に静かに移動して行き、ベッドを見る。
そこには、まだ幼い女の子が眠っている。
だが、その子は体は痩せており、健康体には全く見えない。
髪は白く、手入れをされていないのか荒れて見える。
顔は綺麗と言うよりも可愛い系だ。
痩せていなければ、もっと可愛いと思うのだが…。
だが、この子は誰なんだ…。
俺がそう思っていると、女の子がゆっくりと瞼を上げた。
その瞳は、アルの瞳の様に赤い。
「どなたですか…」
女の子がか細い声でそう聞いてくる。
どうやら、敵対的では無い様だ。
「ごめんね。起こしちゃったかな?怪しい者ではないよ」
俺がそう言っても、彼女は表情を変えない。
正直、今の俺は怪しいから警戒しているだろうから当然ではあるが…。
「初めて…聞いた声です。父の配下の方ですか?」
俺が女の子を見ながらそう考えていると、女の子が俺にそう聞いてくる。
父の配下って…、ここは魔法使いエグモントの家だ。
まさかこの子は…。
「君のお父さんは、水の魔法使いかな?」
俺が女の子にそう言うと、彼女は僅かにコクッと頷いた。
あんな男にも子供がいるのか…。
でも、何でこんな部屋に…。
俺が女の子から視線を逸らして部屋の中を見てみる。
特に何もない、ただの部屋だ。
俺が部屋の中を観察していると、
「ついに私は…、父に家の女性の人達と同じようにされてしまうのでしょうか…」
女の子がそう聞いてくる。
「それってまさか…」
俺がそう呟くと、女の子は話すために開いていた口をキュッと閉める。
あの男は…実の娘にもあんな事をするつもりなのか…。
俺は、薬の中毒症状に心身を犯されている女性達の姿を思い出しながらそう思う。
「…大丈夫だよ。俺がそんな事絶対にさせない」
俺がそう言うと、目を閉じてしまう女の子…。
そして、
「貴方は、どなた何ですか?」
女の子はそう聞いてくる。
その問いに俺は、
「旅人です」
簡潔にそう言う。
すると、閉じていた目を再び開いていて、口も開けている。
その表情は、驚いている様子だ。
「よろしくね。俺の名前はシュウって言うんだ。君の名前は何て言うの?」
俺、少し不審者っぽくないか?
女の子に質問した瞬間、自分の状況の再確認して顔が引き攣る…。
すると、
「…ルネリア」
女の子は短くそう言った。
どうやら、名前を教えてくれるくらいには信用してくれてるのかな…。
俺はそう思いながら、
「ルネリア?君は何でこの部屋に閉じ込められてるの?それとも、護られているの?」
ルネリアにそう質問する。
すると、俺の言葉を聞いたルネリアは少し間を置いてから、
「私が…父よりも優れている魔法を使えるから…父は自分の立場を護ろうとして、私をこの部屋に閉じ込めて、少しずつ弱らせてるの…」
そう言った…。
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