ピース
翌朝、陽の光で目を覚ます。
隣を見ると、陽の光でキラキラ光り輝く銀色の剣が見えた。
「戻ってる」
俺はそう呟いてクスクス笑い、柄の部分を撫でる。
「ん…」
リーシャが声を出して、寝返りをする。
と言っても、剣の姿なのでどちらが仰向けでうつ伏せかは分からないが…。
それから少しの間リーシャの寝姿を見て過ごした後、俺はリーシャを起こした。
少し眠そうにしていたリーシャだが、一度サンレアン王国の家に戻る事を伝えると、すぐに行動を開始した。
と言っても、荷物をまとめて帰るだけなのだが…。
それから俺とリーシャはサンレアン王国の家に帰った。
玄関の扉を開くと、すぐにルリィとエルミールさん、エルネットさんが出迎えてくれる。
その後、俺はアルの部屋に来ている。
アルの部屋の扉をノックしてそう言うと、
「アル、ただいま。お土産?持って来たよ」
勢いよく扉が開く!
「おかえりシュウ!さあ入れ!扉の向こう側の世界の事を教えてくれ!」
アルはそう言って俺の手を掴んでグイグイ引っ張ってくる。
俺はアルに引っ張られて部屋の中に入ると、すでに机が準備されている。
「座れシュウ!そして向こうの話をしてくれ!」
アルに促されて俺は机の側に置いてある椅子に座る。
俺が座ると、机を挟んで向かい側にアルが座る。
それから俺は、ヴァレオさんから借りてきた本をアルに見せたが、アルが読めないと言う事で俺が音読することになった。
それと持ってきた死石もアルに渡す。
その後、俺はひたすらアルに本の内容を読んだり、向こうで読んだ本の内容を教えたりした。
向こうの世界での話が終わると、
「つまり、この世界にいくつかある魔導具は、バルナルド・ヴィリヴァが向こうの世界から持って来たか、あるいはこちらの世界で作ったって事になるな」
アルは自分の部屋に置いてある魔導具の袋を見てそう言う。
「そうだろうね」
「だが、天然の魔石を掘り尽くしたって事は、向こうの世界は大変な世界かもしれないな」
アルが難しい顔をしてそう言う。
「どういう事?」
「ん?まぁ、これはオレの推測だが、天然の魔石が無くなったから世界に数人しかいない魔法を使える人に魔石を作ってもらってるんだろ?オレは行った事が無いから何とも言えないが、それって魔法使いの奴らは大変なんじゃないか?」
アルの言葉を聞いて、俺は確かにそうだな…、と思う。
「今度は向こう側の仕組みと言うか、それぞれどんな感じなのか調べてみるよ」
俺がそう言うと、
「頼んだぜシュウ。それともう一つ気になると言うか、調べて欲しい事があるんだがよ…」
アルがそう言ってくる。
「どうしたの?」
「あの扉を改造出来る人間を探してみるのはどうだ?もしかしたら魔法を使える奴でも通れるようになるかもしれないからな。バルナルド・ヴィリヴァが生きていた時から時は経ってるからな。技術が進化している可能性は充分あると思うぞ」
「確かに。それも調べてみるよ」
「ありがとうなシュウ」
その後、俺はまたすぐに向こうの世界に行くことにして、次は誰がグリニオン帝国で待ってくれるのか聞いたところ、手を上げたのはエルミールさんだった。
「よろしくエルミールさん」
「はい。お願いします」
俺とエルミールさんは一言挨拶すると、リーシャの魔法でグリニオン帝国に一瞬で移動する。
エルミールさんは周りをキョロキョロと見ている。
「そう言えばどうやって順番を決めたんですか?」
俺がそう言うと、エルミールさんは手でピースをする。
そして、
「マナミ様が教えて下さった、ジャンケンで戦いました。戦闘が苦手なコレット様にも有利な条件でとても良かったです」
そう言って微笑む。
まさかのジャンケン勝負だったのか…。
俺以外の皆が家の中でジャンケンをしている光景を想像して少し笑う。
「それより、ここで私は待っていればいいのでしょうか?」
「はい。早くて1日で帰って来ると思いますけど、遅くなってしまうと2日間位になるかもしれません」
俺がそう言って、エルミールさんの手を握って2階に上がる。
エルミールさんが恥ずかしそうにしているが、放すつもりは無い。
例の扉の部屋に行くと、
「確かに変わった部屋ですね。話に聞いていた通りです」
エルミールさんが扉の周りをグルグル周りながらそう言う。
俺はエルミールさんの止まるのを待って、エルミールさんが落ち着くと扉の前に立つ。
「それでは行ってきます」
「お気をつけて、シュウさんのお帰りをお待ちしています」
俺はエルミールさんにそう言うと、エルミールさんの見送りの言葉を聞いて扉を通る。
扉を抜けると、いつも通りの山小屋だ…。
俺はそのまま歩き出して山小屋から外に出る。
時間は昼過ぎくらいだ。
おそらくだが、こことエルミールさんが待っているあの世界は時間の経過が同じなのだろう。
そう考えながら俺は魔素を操って一気に跳び、空中を走りる。
だが、このままじゃフィノイ村の皆に姿を見られてしまうな…。
少し離れた所で下りないと…。
俺はそう思いながら走り、フィノイ村が見えた所で地面に下り立つ。
そこからは少しだけ走って、フィノイ村に着く。
村は昨日来た通り、活気が無く静かな方だ。
俺は村を見ながらそう思いつつ、アルに頼まれた事を思い出す。
今回必要な情報は、この世界の情勢を調べるのと、あの扉を改造できる技術者探しだな…。
バルナルド・ヴィリヴァは危険だと判断してあの扉を改造したが、アル達なら大丈夫だと思う。
それにあそこの扉がある家に行ける人がいなそうだ。
後、もしあの扉が改造出来るなら、アル達が満足したら元に戻してもらおうとも思う。
そう思いながら歩いていると、
「見つけた!」
後ろから知っている声が聞こえる。
後ろを見ると、ヨハナさんが息切れしながら俺の事を指差していた。
「…どうしたんですか?」
俺は突然の事に呆気に取られながらも、ヨハナさんにそう聞く。
「貴方を探してたの!少し手伝って!」
ヨハナさんはそう言いながら俺に近づいてきて、俺の手を掴むとそのまま俺の事を連行していく。
「ちょ、ちょっとヨハナさん!どこに行くんですか!」
俺がそう言っても、ヨハナさんは何も言わないで俺の事を引っ張っている。
それからは何を言ってもヨハナさんは答えてくれないで、俺もそうしている内に大人しく付いて行く事にした。
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