意地悪
あの後、ヨハナさんとローラントさんの話が終わるまで、俺はヴァレオさんの愚痴的な話を聞いていた。
そして、ヨハナさんが帰って来て俺は帰る事を2人に伝える。
と言っても、2人には宿屋に泊まると言ったのだが…。
「貴方、お金持ってるの?」
ヨハナさんの一言で冷や汗が出てくる。
向こうの世界のお金なんて使える訳もないし、どうしたらいいだろうか…。
俺が考えていると、
「ここに泊まっていいぞ」
ヴァレオさんがそう言ってくれる。
だが、ここに泊まるとなると簡単に抜け出す事が出来なくなる。
「爺、勘弁して」
すると、ヨハナさんがそう言う。
「そうですよ。俺なら大丈夫なんで気にしないで下さい」
俺はヨハナさんの言葉に便乗してヴァレオさんにそう言う。
その後、何とかヴァレオさんの説得に成功することが出来、俺の持っていた魔導剣をヴァレオさんに渡し、その代わりにヴァレオさんのお店で売っている魔導剣と積んであった本を3冊貸してもらった。
「また来ますね」
そして今は、ヴァレオ魔導店の扉を開けて中にいる2人にそう言って外に出る。
すでに夕方になっていて、一部のお店は閉まっている。
俺はあの山小屋に戻るために、フィノイ村から出ようと森の方を目指す。
そうして歩いていると、背後から視線を感じる。
誰かが後を付けてきている?
俺はそう思いながら背後を気にしつつ歩き進めて、曲がり角を曲がって魔素を纏って家の屋根に飛び乗る。
すると、俺の姿を追っていた人も曲がって来る。
姿が見えるとその人はヨハナさんだった。
ヨハナさんは辺りをキョロキョロして俺を探している。
ヨハナさんだったら大丈夫だろう。
俺はそう思って屋根から下りると、
「きゃッ!」
上から降ってきた俺に驚いて短い悲鳴を出す。
「どうしたんですか?俺の後、追ってきましたよね?」
俺がそう言うと、
「あ、貴方がどこに行くか気になっただけ。深い意味は無いの」
ヨハナさんはプイッと顔を逸らしてそう言ってくる。
「もしかして、心配してくれた?」
俺がそう言うと、ヨハナさんは俺の事を睨んで、
「何で私が貴方の心配なんかするの!」
大きな声でそう言うと、走って行ってしまった…。
あえて少し怒らせるような言い方をしたけど、少し傷ついたな…。
俺はそう思いながら、森へ向かって歩き出す。
少しして、俺は森の中に入る。
森の中を進んでいくと、魔獣に会う事もあったが、誰もいない場所なら怪しまれる事が無いので、魔素を使って一瞬で倒す。
すると魔獣の死体が塵になり、そこから石が出てくる。
俺はそれを手に取ってみる。
大きさは普通のそこら辺に落ちている石くらいの大きさだ。
「これが死石か…。これが人工的な魔石の元になる石なんだ…」
俺はそう呟き、アルの研究材料になれば良いかなと思い持ち帰る事にする。
俺はフィノイ村からある程度離れた事を確認すると、魔素を纏って一気に加速する!
森の中を駆けている時に気がつく。
あの山小屋の位置が分からないと…。
俺は地面を砕いて跳ねる!
「少し勢い良過ぎたな…」
俺はそう呟きながら辺りの見渡すと、左の方に山小屋が見えた。
そのすぐ近くには崖があるのも見える。
「あそこだな」
俺はその後、山小屋に向かって森を掛け抜け、夜になる頃には山小屋に到着した。
山小屋の扉を開けると、開きっぱなしの扉が見える。
俺はその扉を通ると、グリニオン帝国の家の方に戻って来た。
凄く安心する…、やはり何も知らない所に1人で行くのは緊張するし疲れる…。
俺はそう思いながらリーシャを探すが、この部屋にはいないようだ。
俺は持ってきている荷物を持って1階に下りる。
すると、リーシャが椅子に座って何やら本を読んでいる…。
あれ?どこかで見た事ある気がする…。
「リーシャ、ただいま」
俺がリーシャに声を掛けると、リーシャは俺に気づいて本を勢いよく閉じる…。
あ、怪しい…。
「お、おかえりなさいシュウ!遅かったわね」
リーシャは少しオドオドしながら俺にそう言ってくる。
「リーシャ、何読んでたの?」
俺はそう聞いてリーシャが読んでいた本を見ると、
「な、何でも無いのよ!気にしないで!」
リーシャには珍しく、凄く慌てている。
その様子を見て、少し意地悪したくなってしまう。
「そんなに俺に見せられない物なの?」
俺がそう言うと、
「そ、そうなの!私の物じゃないから、持ち主の人の許可が必要なのよ」
リーシャが本を背中に隠してしまう。
「そっか…。少し寂しいな…」
「ッ!?」
俺は悲しそうな声を出してそう言うと、リーシャがショックを受けた様な表情をする。
「あ…向こうの世界の情報になるかなと思って少しだけど持って来たんだ」
俺はそう言って、袋に入っている物を取り出そうとした瞬間、
「シ、シュウ!これ見て!」
リーシャが背中に隠していた本を俺に差し出してくる。
リーシャの顔を見ると、赤くなっている。
マズイ…、やり過ぎてしまった。
俺は慌てて、
「ごめんリーシャ!意地悪してごめん!」
そう言うと、顔を赤くしながらポカンとしているリーシャ。
「そ、そうなの?嫌いになった訳じゃないの?」
俺にそう聞いてくるリーシャ。
その言葉に俺は、
「俺がリーシャを嫌いになる訳無いよ」
即座に否定する。
「どんなに時間が経っても、何があってもリーシャの事を愛し続けるよ」
俺がそう言うと、リーシャが抱き付いてくる。
「シュウ…私も愛し続けるわ」
「うん…。ありがとう」
俺とリーシャはそう言ってキスをする。
すると、リーシャが持っていた本が床に落ちる。
それを見ると、本が落ちた拍子に開いてしまったようだ。
そしてそこには、小さい頃の俺の写真が綺麗に並べてあった。
「な、何でここにアルバムが…」
このアルバムは元の世界にあった物のはずだ。
すると、
「ハルノさんに貸してもらったの。小さいシュウは可愛いわね。食べちゃいたくなったわ」
リーシャがそう言って俺に深いキスをしてくる。
その瞬間、周りの景色が変わる。
どうやらリーシャが、転移魔法を使ったようだ。
すると、リーシャがキスをしながら押し倒してくる!
俺が背中から倒れると、ベッドに倒れている。
そして、
「今のシュウでも…食べちゃいたくなるわ。それとも‥私を食べる?」
顔を赤くし、官能的な視線で俺の事を見つめてくる。
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