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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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翌朝、俺は体を突かれる痛みで目を覚ました。

その痛みの正体は、ヨハナさんだった。

魔導剣の鞘で俺の事を突っついて起こしたのだ。

起こしてくれるのはありがたいけど、意外に痛かった…。

俺はそう思いながら、ヨハナさんの後を歩いている。

朝起こしてもらった時以外、彼女の声は聞いて無い。


「あ、あのヨハナさん!」


俺が何度も話しかけても返事をしてくれない。

そうして歩いているうちに、森を抜けた。

すると、すぐ目の前に町がある…。

魔獣がいる森のすぐ側に家があっても良いのかな?


「ここがフィノイ村?」


俺がそう聞くと、ヨハナさんは歩き出してしまう…。


「あ、あの!案内してくれてありがとうございました!」


俺はヨハナさんに聞こえる様にお礼を言うと、後ろを向いて森を見る。

森の木々に、何やら取り付けてあるのを俺は森を出る時に見つけてしまったからだ。

魔視を発動して魔素を見てみる。

色は青。

水魔法の色だ。

何だろうこれ?

魔導具的な物だとは思うけど、効果がイマイチ分からない。

俺は魔法陣とか魔導剣に書かれている魔術式とかは見ても分からない…。

とりあえず、町を見た後は向こうに戻ろう…。

色々と報告しておきたいと思うし。

俺はもっと情報が欲しいなと思って振り返ると、そこには先に行ったはずのヨハナさんが俺の事を横目に見ながら立っていた。

どうしたのだろうか?

俺はヨハナさんの様子に疑問を感じながら歩き出すと、


「ッ!?」


ヨハナさんがビックリした様子をした後歩き出す。

もしかして、気にしてくれてるのかな?

そう思いながら町を歩いていると、町の雰囲気が悪い。

皆活気は無いし、何かに怯えている様だ。

町の家とか店を見ても、建物は壊れていたりしていて危なそうだ。

サンレアン王国とは真逆だな。

俺は町の様子を見ながら歩いていると、俺から先に歩いていたヨハナさんが建物の中に入っていった。

看板があったので見ると、ヴァレオ魔導店と書いてある。

魔導店って何だろう?

そう思っていると、


「君、何をしてるんだい?」


突然声を掛けられる!

慌てて後ろに振り返ると、そこには金髪のイケメンが立っていた…。


「見た事ない顔だね」


イケメンの男性は俺の事を見てそう言ってくる。


「すみません。旅の途中でここに寄ったんです」


俺は怪しまれない様に落ち着いて嘘を言う。

すると、


「ローラント!彼が何か粗相をした?」


お店の中からヨハナさんが出てきてイケメンの男性にそう言う。


「ヨハナ、彼の事を知ってるのかい?」


イケメンの男性がヨハナさんにそう聞くと、


「う、うん!森でたまたま出会って、ここまで案内してきたの」


ヨハナさんは頬を赤らめながらそう言う。

ほほう~…。


「そうだったのか。すまないね、俺はローラント。この町を拠点にしているギルド、勇騎士団の団長をしているんだ」


俺がヨハナさんの反応にニヤニヤしていると、ローラントさんは俺に手を伸ばしてそう言ってくる。


「俺はシュウ。旅をしています」


俺はローラントさんの手を握ると、ローラントさんが握り返してくれる。


「よろしく。と言っても、旅をしているという事はすぐに出てしまうかもしれないけどね」


ローラントさんはそう言って笑い、俺の手から手を離す。


「そうだヨハナ。この後団員全員で集会がある」

「わかった!用事が終わったらすぐに行くね!」


ヨハナさんとローラントさんはそう言い合うと、ローラントさんは歩いて行ってしまった。

すると、


「…早く入って」


ローラントさんと話している時とは全く違う、低い声で俺にそう言ってくる。


「…はい」


ヨハナさんの指示に従ってお店の中に入ると、様々な物が売られている。

商品を見ると、魔導剣や鎧、他にも色々な物が置かれているが、どれもどのように使うか分からない物だらけだ。

すると、見た事があるものを見つけた。


「これって、アルが持っていた物に似てるな」


それは、アルが持っている袋だ。


「誰?アルって?」


いきなり後ろから声をかけられてビックリする。

慌てて後ろを向くと、冷めた目で俺の事を見ているヨハナさん。


「えっと、アルは…」

「ヨハナッ!!刃こぼれが酷いじゃないかッ!!」


俺はアルの事を説明しようとした瞬間、店の奥から怒号が轟く。


「爺!大きい声出さないで!」

「好きで出してない!この剣の悲しみを代弁してるんだ!」

「もう!」


ヨハナさんはそう言うと、お店の奥へ行ってしまう。

それから少しの間、お店の奥からはヨハナさんと男性の声が言い争いをしていた。

だがその声も聞こえなくなる。


「…終わったのかな?」


俺が独り言を呟いた瞬間、


「ぬわぁ~に~ッッ!?!?」


今までよりも遥かに大きい声が轟き、俺は思わず耳を塞ぎたくなるが、左耳しか塞ぐ事が出来なかった…。

すると、ドタドタとお店の奥からこちらに急いで近づいてくる音がする。

そして、


「バルナルド・ヴィリヴァの魔導剣を寄越せェぇ~~ッッ!!」


奥から出てきたお爺さんが俺に詰め寄ってきた!

その目は血走っており、息も荒い。

そして、俺の腰に付けている魔導剣に手を伸ばしてくる。


「あ、あの。落ち着いて下さい。見せるのならいくらでも見せますから」


俺がそう言うと、お爺さんは何とか落ち着いてきた。

すると、


「すまない。バルナルド・ヴィリヴァの魔導剣が目の前にあると思うと、居ても立っても居られなくてな」


お爺さんが俺に謝ってくる。


「い、いえ気にしないで下さい。それよりこれ」



俺はお爺さんにそう言って、腰から魔導剣を外してお爺さんに手渡す。


「おぉ!!これが…」


お爺さんは感動したような声を出すと、鞘から魔導剣を抜く。


「この無駄の無い魔術式、未だ見たこともない魔術式、簡略化されているが精度は抜群…まさしくバルナルド・ヴィリヴァの作品だ」


ヨハナさんに見せた時と一緒だ。

目をキラキラさせながら魔導剣を見つめているお爺さんを見てそう思う。

すると、


「爺、私団員の集会あるから行くね。その人の事よろしく」


ヨハナさんがそう言いながらお店の扉を開ける。

お爺さんを見ても、ヨハナさんの言葉は聞こえていないようだ。

それからお爺さんがヨハナさんがお店を出たのに気づいたのは、ヨハナさんがお店を出てから1時間程した頃だった。


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