熱弁
俺は考える。
ここで下手に目立つような事をするのはどうなんだろうと…。
すると、蜂と戦っている人が押し負けている様だ!
リーシャに言われていたけど、流石に危険になっている人を見捨てるなんて出来ない!
俺はそう思って崖から飛び降り、魔素を操って脚に纏い一気に加速する!
腰に下げている剣を握り、いつでも斬りかかれるようにしておく。
そうして崖から落ちて行き、少し落下して地面に下り立つとそのまま走り出す!
やがて崖の上から見えていた蜂を見つけると、その蜂の向こう側に必死に剣を振っている女の人が見えた!
とにかく蜂の意識を俺に向かせないと!
俺はそう思って剣を握ると、一気に抜き蜂に斬りかかる!
だが、蜂の体に当たった瞬間、ガキィンと金属同士のぶつかった様な音がして剣が弾かれてしまった!
「硬ッ…」
俺はそう呟いて、更に連撃を蜂に与えていく。
だが、その全てを弾かれてしまう!
成功したのは、蜂の意識が俺に向いており、女の人が一時的に安全になっただけだ。
すると、
「魔石は無いのッ!」
蜂の向こう側にいる女の人が俺にそう言ってくる!
魔石って何だ!?
だが、知らないと言うのはマズいのか?
魔石ってここの世界では皆が知っている物なのか?
俺は蜂が噴き出す液体を避けながらそう考えて、
「無いんだ!」
そう女の人の言うと、
「何で持ってないの!外に出るなら持って行くのが常識なのに!」
女の人がそう言って何やら腰に付けているポーチから四角い物を取り出すと、それを剣の柄の中に入れた!
そして、
「退いて!最大火力で吹き飛ばすからッ!」
女の人の声を聞いて一気に加速して蜂から距離を取った瞬間、蜂の体を覆う程の炎が蜂を焼き尽くす!
それから少しして、蜂が燃えているのを見ていると、蜂の体が一瞬で塵になった。
そこには、何やら石が落ちている…。
すると、
「大丈夫?」
その石を拾った女の人が俺にそう聞いてくる。
「あ、はい。すみません、助けに行ったつもりが逆に助けられてしまって…」
俺が女の人にそう言うと、
「そんな事ないわ。貴方が来なかったら再装填する事が出来なかったから」
女の人がそう言ってくれる。
女の人を見ると、目を引き付けるのは赤い髪だ。
顔も少し汚れてはいるが、可愛い顔をしている。
そう思っていると、
「…ねえ?何で魔石を持ってなかったの?」
そう聞かれてしまった…。
どうする。どう答えればいいんだ…。
「え、えーと‥」
俺がそう言うと、女の人が俺の事を怪しい人を見る目で見てくる…。
「た、旅をしていたのでなかなか魔石を持つ事が出来なくて!」
俺は苦し紛れにそう言うと、女の人がジーと俺の事を見てくる。
俺は背中に嫌な汗を流しながらその視線に耐えていると、
「そんなに長旅だったの?」
女の人が聞いてくる。
「そ、そうなんです」
俺は女の人に申し訳ない気持ちになりながらそう答えると、
「ふーん」
そう言いながら、俺の周りの歩いて俺の事を観察してくる…。
「旅人の装備にしては、やけに軽装備ね」
もうこの人俺の嘘ばれてるんじゃないか?
そう思ってしまう程、的確に俺に質問してくる。
すると、
「まぁ良いや。助けてくれてありがとう。私はヨハナ、ここから北にあるフィノイ村に住んでるの」
自己紹介をしてくれるヨハナさん。
「俺はシュウ、今は旅人をしています」
俺がそう言うと、ヨハナさんが俺の腰に下げている剣を見ている。
「あの、どうしたんですか?」
俺がそう言うと、ヨハナさんが慌てて、
「ご、ごめんなさい!失礼だとは思うんだけど、その魔導剣を…見せて欲しくて」
俺にそう言いながら、剣の事を指差す。
「あぁ、良いですよ」
俺は剣をヨハナさんにそう言いながら渡す。
「うわ、やっぱり見た時思ったけど古い装備ね」
俺から手渡された剣を見て、ヨハナさんが興奮した様にそう言っている。
「今時こういうの使うってどういう事よ。あれ?でもこの魔術式は見た事ないな~。ふむふむ…。なるほど。え?でもこれじゃ上手く発動しないんじゃ‥、あッ!そこでこの魔術式を使ってるのか~」
それから少しの間、ヨハナさんは剣の刀身に書かれている文字を見ながら興奮した様子で独り言を呟いていると、
「あぁ~ッ!!」
!?
突然叫び声を上げるヨハナさん。
「ど、どうしました?」
「これ!この名前!」
俺がヨハナさんに声を掛けると、ヨハナさんは落ち着かない様子で剣の刀身を指差していた。
俺はヨハナさんが指差している所を見ると、そこにはバルナルド・ヴィリヴァと書かれている。
「この名前がどうしたんですか?」
「貴方!何でバルナルド・ヴィリヴァの装備を持ってるんですか!」
俺に詰め寄ってくるヨハナさん…。
「そ、そんなに凄い事なの?」
俺がそう言うと、
「当たり前でしょ!バルナルド・ヴィリヴァは魔導の原点とも呼ばれた偉大な人よ!彼のおかげで、死んでいくはずだった世界の人々は救われたのよ!魔法を使う事が出来なくなっていった昔の人達は、魔獣と戦うために試行錯誤した。でも、普通の剣では傷を付ける事が出来ない魔獣を倒す事は出来なかった。でも、バルナルド・ヴィリヴァの開発した魔導剣やその他諸々があって、今私達は生きている事が出来るのよ!」
ヨハナさんは興奮しながらも、俺にそう説明してくれる。
どうやら、俺が思っていた以上にバルナルド・ヴィリヴァと言う人は凄い人なのだろう。
俺がそう思っていると、
「聞いてる!そして、開発された魔導剣参式は魔術を使うのに最適化された装備!だけどそれから数年の間にバルナルド・ヴィリヴァは完全な新しい型の魔導剣を開発したの!それは誰も開発する事が出来なかった3つの魔術を使う事が出来る新しい魔導剣を作る事が出来たの!」
ヨハナさんの講義はその後も続いた。
気が付けば昼前だった空も、陽が傾いて来て夕方になってきている。
すると、
「あれ?もうこんな時間?帰らないといけない。ねえシュウ、貴方はこれからどうするの?」
ヨハナさんが空の色に気づいてそう言うと、俺の事を気にしている。
だが、俺は一度元の世界に帰ろうと思っている…。
リーシャの所に戻りたいし。
「俺は…」
「でも、旅人って事は宿よね。じゃあフィノイ村に案内してあげるわ」
俺が言う前にヨハナさんがそう言って歩き出してしまう。
仕方なく、俺は心の中でリーシャに謝りながらヨハナさんの後に付いて歩き出す。
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