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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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扉の先は

俺達は突然起きた現象に驚き、呆然としていたが、


「おぉぉ!!何でかは知らねぇけど扉が開いたぞ!」

「元々開きはしたでしょ…」


アルが興奮して言う言葉に、リーシャがツッコミを入れる。

だが、ツッコまれた当の本人は全く気にしていない様子で扉を観察し始める。


「私達で開かなかったのに、シュウでは開くなんて…。この扉は女の子なのかしら?」


そして、扉を見ながらリーシャが頬を膨らませながらそう言う。


「リーシャ?扉に性別は無いと思うよ」


俺が苦笑いでそう言うと、


「…そうよね。何言ってるのかしら私」


俺の言葉を聞いたリーシャは、そう言って顔を赤くする。

どうやら、先程の言葉が恥ずかしかったのだろう。

だがリーシャの言う通り、どうしてリーシャやアルでは開く事が無かった扉が、俺に反応して開いたのだろうか…。

俺がそう思っていると、


「よし!ちょっくら行ってくる!」


アルがそう言って扉をくぐり抜けた!

だが、くぐり抜けたのだ。

つまり、扉の向こうには行けずに元の部屋にいるのだ…。


「「………」」


それを見ていた俺とリーシャは、何も言えないでアルの事を見ている。

俺達の視線に気づいているアルは、恥ずかしそうな表情で固まっている…。

その後、アルが回復するまで俺達は無言だった…。


「いや~…何で通れないんだ?」


あれから少ししてアルが何とか回復すると、笑いながら扉の周りをグルグル回りながらそう言う。


「簡単な話じゃない。私達にどうにも出来なかったモノなのよ。それをシュウが出来た。つまり、通れるのもシュウだけと言う事よ」


アルにそう言うリーシャ。

俺しかここを通れない?

俺がそう思うと、アルが絶望感たっぷりの表情になる。


「そんな!?今まで頑張ってきたのにオレは向こうに行けねえのかよ!」


アルはそう言って何度も扉を通るが、扉の向こうには行けてない…。

それから少しして、


「もういい…シュウだけ行って来いよ…」


どんなに頑張っても向こう側に行けないアルは完全に拗ねてしまった…。

部屋の隅に顔を向けて、俺とリーシャに背中を向けてきている。

その後ろ姿を見ると可愛いのだが、ここでじゃあ、ちょっと行ってくるね…何て言ったらアルを更に傷つけてしまいそうだ。


「アル、拗ねてたらシュウが行けなくなるでしょう?」


リーシャがアルにそう言うと、


「だってオレ行きたいのに…」


アルが少し涙声でそう言う。


「それにリーシャだって良いのかよ…。扉通った瞬間に閉じちまったら、シュウと離れ離れになっちまうんだぞ」


アルがそう言った瞬間、リーシャの体がビクッと動く。

そして、俺の方に勢いよく振り返ったリーシャが、


「シュウはこの扉を通っちゃ駄目よ!」


俺にそう言ってくる。

どうやら、アルの言葉で不安になってしまったようだ。

そこでふと思った。


「…リーシャが俺の腕になったらどうなのかな?」


俺がそう言うと、リーシャとアルが驚いた表情をしている。

そして、


「それよ!そうすればシュウから離れずに済むわ!」

「ずりぃ!オレも行きてぇ!」


リーシャとアルが俺にそう言ってくる。

すると、リーシャが俺に触れて一瞬で右腕になる。

その様子を見てアルが頬を膨らませるが、


「行って来いよ…。ちゃんと帰って来るんだぞ?」


俺達にそう言ってくれる。


「様子見だから問題が無かったらすぐに帰ってくるつもりよ」


アルの言葉にリーシャがそう言う。


「待っててねアル」


俺はそう言ってアルの金色の髪を撫でると、アルが嬉しそうな表情をする。


「…早く行きましょ」


リーシャが少し低い声を出して俺にそう言ってくる。

俺はリーシャの反応に苦笑しながら扉の前に立つ。

少し緊張する…。

この扉の先に何があるのか…。


「行くよリーシャ」

「いつでも大丈夫よシュウ」


俺がリーシャにそう言うと、リーシャがすぐに返してくれる。

俺は足を前に出して扉を通った瞬間!


「ぐッ…」

「キャァ!」


頭に鈍痛が走り、それと同時にリーシャの腕になっている状態が強制的に解除された!

慌てて後ろを向くと、目の前には扉…。

特に変化が無いと思ったが、部屋の中が色々と違う。

俺は周りを見て少しだけ調べてみようと思い、まず部屋の中を見る。

先程までいた部屋とは違い、少し広い部屋ではある。

だが、家具や様々な者が置かれていて動くのには面倒そうだ。

俺は扉から離れて、右側に設置されている机を見つけて近づく。

机の上には1冊の本と少し長い剣が置かれている。

俺はその本を手に取って開いてみる。


「読めないだろうけどね…」


俺は苦笑しながら独り言を呟く。

すると、本に書かれている内容が読めるのだ。


「何でいきなり読める様に…」


俺はそう呟いてある事を思い出す。

それは、扉を通った時に感じた痛み。

あれは元の世界からこちらに来た時と同じ感じだった。

つまり、あれでまた言葉を覚えたって事か?

俺はそう思うが、俺だけで考えても駄目だなと思い、手に持っている本に集中する。


「この本を読んでいる貴方は、私バルナルド・ヴィリヴァの最高傑作の目の前にいる。その扉の先は今いるこの世界とは全くの別の世界だ。私達とは違い、世界の全ての人間が魔法を使う事が出来る。そこで私は、向こうの世界の調査をしてきた。結果は、私達では向こうの世界の住民に勝てないと悟った。特別な人間しか使えない魔法を、彼らはいとも簡単に使っている。大人だけじゃなく子供もだ。危険に感じた私はこの最高傑作を壊す事も考えた。だが、私は自分の作品を壊す事が出来なかった…。故に私は、この扉を改造して魔法が使える者を通れない様にしたのである。これで、向こうの世界からこちらに来る事が出来る者はいないだろう。ほぼ一方的に行けるようにはなったが、向こうの世界に攻撃を仕掛けるのは止めて欲しい。そんな事をしたら、貴方達の未来は破滅しかない。私はそれを望まない。だからどうか私の願いを聞き入れて欲しい」


俺は本の内容の最初の部分を読んで息を吐く。

この本の内容が正しいなら、今俺がいるここはまた違う異世界という事だ。


「また、凄い事になって来たな」


俺はそう呟いて、埃が積もっている椅子の埃を手で払って綺麗して、そこに座る。


読んで下さってありがとうございます!

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