ただいま
俺の事をジーと見てくる黒い瞳…。
その瞳は、瞬きをする事無く開き続けている…。
「何を…しているのかしら?柊…ちゃん?」
とても低い声で、俺にそう問いかけてくる怜華さん。
俺はその様子を見て、どうしてここにいるのかを聞きたくても聞けない…。
下手な事を言ったら、斬られてしまうんじゃないかと思わせる程、怜華さんの瞳には狂気を孕んでいる。
俺にキスしていたティアも、怜華さんの姿を見た瞬間に俺から離れた。
「その…皆で寝ようかなと…」
俺がそう言うと、コツコツと音を立てながら怜華さんが俺の近くに歩いてくる。
近くに来ると、怜華さんはベッドの上にいる皆に目を向ける。
そして、
「寝るだけには…見えないんだけど?」
俺の事を見てそう言ってくる。
「え、えっと…」
俺が怜華さんの質問にどう答えようかと考えていると、
「これから皆、シュウと交わるのよ」
リーシャが怜華さんにそう言う。
それを聞いた怜華さんは、リーシャをジッと見つめる。
「うはっ!」
俺が怜華さんの行動を見ていると、耳の浅い溝をアルが舐める!
その突然の行動に声を出してしまうと、怜華さんが無言で剣を出現させる!
「オレがいるんだから、今は他の女の事を考えるなよぉ」
アルが甘えた声でそう言ってくる。
すると、
「…わんわん」
「ぎゃあぁ!!秋沙姉!服着て!服!」
突然俺の目の前に現れた秋沙姉は一糸纏わない姿で四つん這いで俺の元へやって来る!
というか、秋沙姉までこちらに来ている!
「お、お姉ちゃん!何してるの!服着て!」
そして、春乃の声もしながら俺に迫ってきていた秋沙姉が布に包まれる!
「あはは…これはまた…修羅場ですね」
真海ちゃんの声も!?
その後、皆で衣服を正して食堂に集まる事になった。
そうして集まった皆を見る。
俺を含めたほとんどの皆が寝る時の服装をしている中、元の世界の服を着ている4人。
怜華さんと秋沙姉、春乃に真海ちゃん。
「あの…怜華さん達は元の世界に…戻ったんですよね?」
俺がそう話をすると、
「いきなり戻ったのよ。驚いたわ」
怜華さんが俺の質問にそう返してくれる…。
ジッと俺の事を見ながら…。
「それで…その後とかは…」
俺がそう聞くと、
「学園に戻っていたわ。面倒くさい事に集団失踪事件になっていて、取材に来ていた人達がたくさんいて面倒だったわ」
怜華さんが説明をしてから当時の事を思い出したのか、ため息をついた。
「…魔法で黙らせたけど?」
秋沙姉がボソッと言った瞬間、怜華さんがプイッと顔を逸らす…。
「もしかして怜華さん、向こうで魔法を使ったんですか?」
「し、仕方ないじゃない。便利なんだもの」
「全世界、支配領域にしていたよ」
「取材とか一瞬でいなくなりましたからね~」
どうやら、怜華さん達は元の世界で大変だったようだ。
俺がそう思っていると、
「それより、柊ちゃんがいなかった事の方が問題だったわよ」
怜華さんがそう言う。
すると、
「怜華先輩は半狂乱になって、秋沙先輩は涙を流し続けて、春乃は柊先輩の服を抱きしめたり着たり、食べたりしてましたね」
真海ちゃんが俺に説明してくれる。
「そう言う真海だって、お兄ちゃんの下着に顔を付けて深呼吸してたくせに!」
「な、何で知ってるのぉ~!!」
春乃の言葉に真海ちゃんが顔を真っ赤にしながらそう叫ぶ‥。
してたんだ…。
「腕輪で柊ちゃんの居場所を探っても反応が無かったし、本当に辛かったのよ」
怜華さんが腕に着けている腕輪を撫でながらそう言う。
「本当です。私達も何度も行ったのですが、全く駄目でした」
エルミールさんもそう言う。
俺は自分の腕に付いている腕輪を見て、あぁそうか…と納得する。
「ごめんなさい。俺、死にかけていたらしくて変な所にいたんだ。だから腕輪とかが反応しなくて」
俺がそう言うと、事情を知っているリーシャとアル以外の皆の顔色が青くなる。
「だ、大丈夫だからね!もうそんな事起きないだろうし!」
俺が慌ててそう言って皆を落ち着かせる。
ここは少し話題を変えないと…。
俺はそう思って、
「怜華さん達はどうやってここに来れたんですか?」
怜華さんにそう聞く。
すると、
「簡単よ柊ちゃん。私の魔法で少しずつ支配領域を広げて進んで、限界になったら縮めてまた広げてを繰り返して、空間を捻じ曲げてここに戻って来たのよ。結構大変だったのよ」
怜華さんがそう答えてくれるが、どういう事かはさっぱりわからない。
「また戻ることって可能なんですか?」
「出来るとは思うわ。でも大変なのよね」
怜華さんは俺の質問にそう答えると、ため息をつく。
「それは…どうして?」
リーシャが怜華さんにそう聞くと、
「ルリィさんに貰った回復薬を4人分使って何とかここまで来れたんです」
怜華さんがそう答える。
ルリィが作った回復薬を4人分使ってやっとなのか…。
おそらく結構な量を使ったはずだ。
それにあれは素材を集めるのも大変だし、皆が作った物だ。
そう簡単にまた作ってとは言えない…。
俺がそんな事を考えていると、
「大丈夫よ柊ちゃん」
怜華さんがそう声を掛けてくる。
「え?」
「私達は帰るつもりなんて無いもの。家族との挨拶は済ませてきたし」
「…え?」
怜華さんの言葉に、俺は間抜けな声しか出ない…。
「そこで、私の両親から柊ちゃんに伝言よ」
「…それは家のお母さんとお父さんからもある」
「私の家もあります!」
すると怜華さん、秋沙姉、真海ちゃんが俺にそう言って立ち上がる。
俺も立ち上がると、
「では母からは、やっとね!早く孫を!と言っていたわ。次に父からは、……うむ。と言っていたわ」
怜華さんが美華さんと厳正さんの真似をしながらそう言う。
あの…、美華さんはまぁいつも通りで安心したけど、厳正さんは何も言っていないような…。
すると、
「…じゃあ次は家の母さんから、うちの娘を幸せにしないと殺す…と言ってた。で父さんは、幸せにな…うぅ…。と言っていた」
母さん…、あと父さんは泣いたんだよね?
秋沙姉の無表情に父さんの反応が分かりにくい…。
でも、皆が認めてくれたんだ。
頑張らないと!
俺がそう思っていると、
「じゃあ次に私が、これは両親の意見です。…顔を見せに来なさい。それまでは認めない、と言ってました」
真海ちゃんが俺にそう言ってくる。
真海ちゃんの家族の人には会った事が無い。
顔も見た事無い人に大切な娘との結婚を認めないのは当たり前だ。
「そうだね。今度行かないと」
俺がそう言うと、
「待ってください。今、言う事は別にあります」
ティアが手を挙げながらそう言う。
すると、エルミールさんが皆を立たせて移動させていく。
それは、食堂のテーブルを挟んで戦いに行く組と家で待っている組で分かれる。
そして、
「「「「「「おかえりなさいッ!」」」」」」
皆が俺達に笑いながらそう言ってくる。
それに対して俺達は、
「「「「「「「ただいま」」」」」」」
笑いながら、そう返した。
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