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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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ただいま…とは言えない

レクシシュ様のおかげで、元の居場所に戻ってきた俺は、辺りを見回す。

そして、ここがヴェルーズ近くの森だという事に気がつく。

何故なら、近くにエルフの森の木が生えているから。


「ここか…」


俺はそう呟いて、歩き出す。

そう言えば、もう魔素は使えるのかな。

俺は歩きながらそう思い、魔素を操ってみる。

すると、簡単に魔素を操る事が出来た。

良かった、これならすぐにでも家に帰れるな。

そういえばリーシャやアル、怜華さん達を置いてきてしまったな…。

皆大丈夫だろうか…。

俺はそう考えて、皆に限って大怪我とかしているとは思えない。

俺はそんな事を考えながら、1人苦笑をする。

そうしていると、森を抜け出す事が出来た。

ここからは一気に帰ろう。

俺は脚に魔素を纏って一気に駆け出す!

その後、俺はすぐにサンレアン王国に帰る事が出来た。

検問を通ると、何故だか騎士の人が驚いている様な表情をしている。

どうしたんだろう…。

俺はそう思いながらも、早く皆の待っている家に帰ろうと思い、地面を破壊しない程度に力を抑えながら走り出す!

そして遂に、皆が待っている家に辿り着いた。

すると、少し違和感を覚える。

庭園に生えている草木が伸び放題になっている。

ルリィが家事などで手を抜く訳がないのは知っている。

それに、もしルリィが手を抜いたとしてもこんなに伸びるものなのだろうか。

そう思った瞬間、俺はある事を思い出す。

生と死の狭間で出会ったナーテさんが言った言葉、今俺がいるここと生と死の狭間は時間の流れが違う的な事を言っていたな…。

俺は数日位かと勝手に思っていたが、まさかもっと長い可能性も…。

俺はそう思うと、玄関の扉を勢いよく開けて家の中に入る。

食堂に厨房、皆の自室や皆で寝ていた寝室を見るが、どこにも誰もいない。


「皆…どこに…」


俺はそれを考えて、ある所を思い付く。

そこは、サンレアン王国王城。

俺は思い付くのと同時に家から飛び出して、王城に急ぐ!

そうして一気に城下町を駆け抜け、サンレアン王国王城に着いた。

中に入ると、やはり騎士の人達が俺の事を見て驚いている。

そして、見つけた。

訓練場の端に座っているリーシャを。

俺は早歩きで訓練場に入り、リーシャに近づく。

すると、近くに来て気づいた。

リーシャがただ無表情に空を見ているのを…。


「…リーシャ」


俺が声を掛けると、リーシャがゆっくりと俺の方を向く。

その瞳は光が消えて、感情が死んでしまっているかと思わせる程だ。


「シ…ュウ」


リーシャが僅かに声を出す。

俺は座っているリーシャの傍に行き、彼女の目線に合う様に座る。


「リーシャ」


俺がもう一度リーシャの名前を言うと、リーシャの目に涙が溜まり始める。


「本当に…シュウ?私の…幻覚じゃ…ないのよ…ね?」


そう言いながら、リーシャは俺に手を伸ばしてくる。

そして、リーシャの手が俺の頬に触れる。

すべすべの肌が、ひんやりとしている。


「ごめん。心配させて」


俺がそう言った瞬間!


「シュウ!」


リーシャが俺の名前を呼びながら飛び込んできた!

俺はリーシャの突然の行動に支える事が出来ず、リーシャに押し倒されるような形で地面に倒れる。


「いなくならないでッ!置いて行かないでッ!行くのなら、私も一緒に連れて行ってッ!」


リーシャはそう言いながら涙を流し、リーシャの涙が俺の頬に落ちる。


「…ごめん」


俺がそう言うと、リーシャは俺に抱き付いてくる。

首の後ろに回された手が震えながらも、俺の事を放さないとばかりに力が入っている。

俺は左手をリーシャの背中に置き撫でる。


「ごめんリーシャ」


俺がそう言うと、リーシャは更に泣き始めてしまう。


「離れたくない…。傍にずっといて…。もう…いなくならないで」


涙声でそう言うリーシャ。


「うん」


俺がそう言うと、リーシャは更に俺に抱き付いてくる。

そうしていると、


「リーシャ!どうした…んだ」


訓練場に響く声。

声のした方向を見ると、そこには焦っている様なアルの姿が見えた。

だがそれも一瞬の事で、俺達の事を見ると呆然としている。

しかし呆然としながらも、アルはゆっくりと歩き出して、俺達の側まで来た。


「…心配したんだぞ」


アルが俺の事を見下ろしながらそう呟く。


「ごめん」


俺がそう言うと、アルは瞳に涙を溜めながら、


「シュウが剣を振った瞬間、耳が聞こえなくなるくらいの破壊音と、何も見えなくなるほどの光でどうなったのかもわかんなかったんだぞ。…気が付いた時には、シュウもあの男もいなくなって…。どれだけ心配したと思ってるんだ…」


俺にそう言ってくる。

アルの紅蓮の炎の様に赤い瞳が、溜まっている涙の所為で揺らいでいる。

俺はリーシャの背中に置いていた左手をリーシャから放して、アルの手を握る。

すると、アルの瞳から涙が零れる。

俺はそれを見て、アルの手を引っ張る。


「あ…」


アルはそう声を漏らすと、俺とリーシャに倒れ込んでくる。


「…~~ッ…」


アルは声は出さないが、俺の傍で涙を流していた。

それから少しして、リーシャとアルが俺から離れる。

2人の目元は赤くなっていて、その表情に申し訳なく感じる。


「シュウ、今までどこにいたの…」


リーシャがそう言いながら、俺に触れてくる。


「生と死の狭間って所に行ったんだけど…」


俺がそう言うと、リーシャが更に涙を瞳に溜め始める!


「リーシャ!俺、生きてるから!死んでないよ!」


俺が慌ててそう言うと、リーシャは頷く。


「生と死の狭間…。時間の流れが遅い場所」


アルがそう呟く。

だが、


「シュウ、あの戦いからどれくらい経っていると思う?」


アルは突然俺にそう言ってきた。


「…数日位だと思てるんだけど」


俺がそう言うと、アルはムッとした表情で、


「…1ヶ月」


そう呟いた。


「もしかして、俺がいなくなってから1ヶ月も経過してるって事?」


俺がそう言うと、リーシャとアルが同時に頷いた。

そして、


「レイカ達も、すぐにいなくなった」


アルが俺に衝撃的な事を言った。


「怜華さん達がいない…」


その言葉を理解するのに、少し時間がかかった…。

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