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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
232/430

転移魔法の戦い

明日から少しの間、16時更新になります。

よろしくお願いします。

イスティムは慌てて転移魔法を使って、春乃から距離を取る。


「グゥ…何故だ」


そう言いながらイスティムは、腹に刺さっている短剣を抜き取る。

どこからどう見ても普通の短剣であり、小細工などをしたようには見えない。

イスティムが短剣を見ていると、


「短剣には何もしていないですよ」


春乃がイスティムにそう言う。


「…どういうことだ?」


イスティムが春乃にそう聞くと、


「簡単な事ですよ。あなたが転移した場所に私の短剣を転移させました。実験をした時にわかった事で、短剣よりも柔らかいなら転移して刺さるようになるけど、硬いと短剣が折れちゃうんだよね」


春乃がそう説明する。

それを聞いたイスティムは、僅かにだが汗を流す。

この戦いは一瞬で全てが決まってしまう可能性がある。

イスティムはそう思いながら、春乃に攻撃を仕掛けようとして思い止まる。

下手に転移して攻撃しても反撃されてしまう…。

そう思っていると、春乃が微かに動く!

それを見たイスティムは、転移魔法で少し離れた場所に転移する。

そして見ると、先程まで自分が立っていた場所に短剣が転移してきて床に落ちる。

少しでも反応出来なくて転移するのが遅かったら…。

イスティムはそう思うと、自分の命が目の前に立っている春乃に握られている様な感覚に陥る。

イスティムは慌てて、考えるのを止める。


「どうですか?私弱くなってませんよ」


イスティムが色々と考えていると、春乃がイスティムにそう言う。


「…どうだかな…。私に少し攻撃できただけでそこまで言うのは早計ですね」


イスティムが強がってそう言った瞬間、イスティムの両足に短剣が転移される!


「ガァッ…」


イスティムは、痛みに短く悲鳴を出して座り込む。

座り込んだイスティムは、自身の足から短剣を引き抜き捨てる。


「ぐ…」


先程は少しだけ動きがわかった。

だが、今の攻撃は全く動いていなかった…。

イスティムがそう思っていると、春乃が歩き出す。


「どうですか?どう攻撃したら私が貴方より強い事になりますか?」


春乃はイスティムにそう言いながら、短剣をイスティムに良く見えるように動かす。


「たった数回程度で、調子に乗ってはいけませんよ」


イスティムは、心に這いずる恐怖を顔に出さないようにしながら、春乃にそう言う。

すると、イスティムも言葉を聞いた春乃はニコッと笑い、短剣を転移させる!

だが、流石のイスティムも何度も同じ手は食わないで、自身も転移魔法で短剣を避ける。


「そう何度も出来ると思わない事です」


イスティムがそう言った瞬間、春乃は更に何本もの短剣や城内に飾られていた剣を転移させてイスティムに攻撃を仕掛けていく。

だが、イスティムは春乃の攻撃を全て避けていく。

相手が感情的になる程動きが大きくなり、いつ剣が転移してくるかわかる。

イスティムはそう思いながら、春乃の動きを観察しながら転移し続ける。

それから少しの間、2人の転移魔法の攻防は続いた。

だが、突然イスティムの動きが鈍り出す。


「グガァ…」


体に3本の剣が突き刺さり、イスティムは転移魔法で逃げようとするが集中出来ずに転移が出来ない。


「ハァ…ハァ…どういう事だ…体が…動かない…」


イスティムはそう呟いて自身の手を見る。

すると、自身の手元が何重にも見えてくる。

自身の体のおかしい事に気づいたイスティムだが、春乃の攻撃は止まらない。

イスティムは何とか春乃の転移で突然現れる短剣や剣を避けていく。

そうしていると、今度は手足の痺れを感じて、その場から動けなくなっていく。

そこでイスティムは全てを理解した。

春乃に毒を盛られた事を…。

だが、理解したところで意味など無い。

イスティムには毒の知識はほとんど無く、動こうと思っても体がいう事を利かない。


「どうですか?降参しましたか?」


イスティムが考え事をしていると、いつの間にか目の前に立っている春乃。

その手には、瓶が握られている。


「それが…毒か…」


イスティムは何とかそう声を出す。

すでに口を動かすのもきつくなってきている。


「はい。短剣に塗っておきました。何も転移魔法で殺していく必要なんてないんですよ。常に相手を倒すのにいくつもの方法を準備してるんです」


春乃がそう言うと、イスティムは自分を恥じた。

自分は転移魔法での戦いにこだわり過ぎていた事に。

自分の情けなさに苦笑し、春乃の事を見る。


「では、…聞きましょうか…。あと…どれくらい…戦う方法があったんですか?」


イスティムが春乃にそう問うと、イスティムの周りに一瞬で何本もの短剣や剣が転移させられる。


「1つ、逃げ道が無い四方八方からの転移による突き刺す攻撃」


春乃がそう説明すると、地面に剣が激しい音を立てながら落下する。


「2つ、この城の大きい柱をあなたに転移させて圧死」


春乃が戦っていた場所の大きな柱を見ながらそう言う。

そこまで聞いて、イスティムは笑う。

どの攻撃も避けようと思えば出来たかもしれない。

だが、そうしたら更に様々な追撃があるのだろう…。

見ているモノが違う…。

イスティムはそう思い、深く息を吐く。


「私の…負けの様ですね…。すでに眼が見えなくなってきている。これでは転移なんて出来ない」


イスティムは体に激痛が走っているだけしか感じない。

目の前は永遠の闇が広がり、自分が座っているのか横になっているのかも分からない。

ただ感じるのは、自分の痛みによる荒い息遣いと、春乃の気配。

そして、自身の負けたという敗北感と命の灯火…。

もう…長くは無い。


「私…は負けました…。ですが…どう足掻こうと…ガレス様の勝利は確定‥している。あの御方は…死の魔法…そして、魔神…」


イスティムは最後まで言う事が出来ずに、静かに没した。

そのイスティムの亡骸の目の前に立つ春乃は、


「何言ってるの。私のお兄ちゃんは絶対なんだよ。勝つのはお兄ちゃんに決まってるじゃん」


既に何も答えないイスティムにそう言うと、歩き出す。

魔力を半分以上失っているが、回復薬を飲めば大丈夫と思いながら、先に進もうとする。

すると、


「春乃!!」


後ろから声が掛かる。

春乃が後ろを見ると、血で真っ赤になった真海が走ってきた。


「真海!大丈夫?凄い血が…」


春乃がそう言うと、


「あぁ…ほとんど返り血だから大丈夫だよ。それより春乃こそ、顔色悪いよ」


真海がそう返して、自身の袋から回復薬を春乃に渡す。

春乃は真海にお礼を言って回復薬を受け取り、それを飲み干す。


「行こう真海。皆が戦ってるかも」

「うん!でも…怜華先輩とかもう終わってそう…」


真海の言葉に、春乃も頷いて歩き出す。


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