表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初代勇者を腕に  作者: 雪羅
231/430

葉山春乃VS魔王イスティム

真海とレラジズの戦ってからすぐに、春乃と魔王イスティムの戦いが始まった。


「もぉ!何回も転移して当たらない!」

「もしかして弱くなりましたか?前回戦った貴女の方が強かった様な気がしますが?」


春乃はイスティムに遊ばれている。

春乃が様々な物を転移させて、イスティムに攻撃を仕掛けていくのだが、そのどれもがイスティムの転移によって全て躱されているのだ。


「喧嘩売ってるでしょ!」


イスティムの言葉に、春乃は怒り声を荒げる。

そうしている間も、手元にある短剣をイスティムに転移させるが、効果は無い。

春乃が手元の物を転移させるのと同時に、イスティムが転移してそれを避ける。

それの繰り返しなのだ。

このままじゃどんなに短剣を転移させても意味がない。

春乃はそう思いながら、床に落ちている自分が転移させた短剣を回収する。

回収と言っても、自身の足元に転移するだけなのだが…。

そうしていると、


「ぐ…」


一瞬で春乃の目の前に転移してくるイスティム。

そして、イスティムは春乃の首を手で絞め始める。


「本当に残念ですね。前回の戦いの時はとても強かったのに…。加速魔法はどうしたんですか?あの異常な速さだったら私にも十分追い付けるのに」


イスティムはそう言いながら、手に力を込める。

春乃は、何とかイスティムの手を退かそうとするが、元々の筋力が違う。

そう簡単に手が外れることは無い。

だがそこで春乃は、エルミールに教えてもらった暗器術で懐に隠してあったナイフをイスティムの腕に思いっきり突き出す!


「グッ…」


突然の痛みに、思わず春乃の首から手を放してしまうイスティム。

手を放させたことで自由になった春乃は、走ってイスティムから距離を取る。

だが、イスティムに距離など関係ない。

先程も春乃の目の前に一瞬で現れた通り、転移魔法を使ってしまえば距離など無いに等しいのだ。

春乃自身もそれは理解しており、この程度の距離離れても意味ないよね…、と思いながらイスティムから離れる。


「懐に仕込んでいましたか…」


イスティムはそう呟いて、腕に刺さっているナイフを抜く。

それを捨てると、


「貴女は何故加速魔法を使わないんですか?」


イスティムは春乃にそう聞く。


「加速魔法はもういらない。今持っているこの能力が一番良いもん」


春乃はイスティムの質問にそう答える。


「今持っている能力…。それは物を転移させる力ですか?だとしたら、それは私の力より弱いです」


イスティムが春乃にそう言うと、春乃は首を振るう。


「違います。お兄ちゃんを監視できる能力です」


そう言った春乃の言葉に、イスティムは固まる。

何を言ってるんだ…。

イスティムはそう思いながらも、


「それはどういうつもりですか?この戦いの意味を理解してるんですか?」


少し声を荒げながらそう問う。

その言葉を聞いた春乃は、キョトンとした表情をする。

それを見たイスティムは、


「この戦いの勝者が、この世界の支配者になるんですよ!そして私は、大魔王ガレス様こそ支配者に相応しいと思い、あの御方に従っているんです。この命を捧げても良いと思うくらいに…」


そう大きな声でそう言う。

すると、それを聞いていた春乃は、


「支配者なんてどうでも良いです。…あっ、でもお兄ちゃんに支配されるのもちょっと良いかも…」


イスティムにそう言い返した後に、独り言を呟き少しもじもじする。

それを見ていたイスティムは、


「ガレス様が負ける事前提で話していませんか?」


静かに怒りながら、春乃にそう聞く。

すると春乃は、当然のように、


「お兄ちゃんが勝つに決まってるじゃないですか。その大魔王何とか様に負けるなんてありえません」


そう言い切った。

その言葉を聞いたイスティムは、


「ガレス様です!大魔王ガレス様です!ふざけないで下さい。あの御方が負けるなんてありえない」


春乃に大声でそう言う。


「お兄ちゃんだって負ける事なんてあり得ません!」


春乃も大きな声を出して、イスティムの抗議する。

春乃は思った。

目の前にいる男は少しだけ自分に似ている…と。


「まぁ、良いです。それより戦いましょう。早くしないとお兄ちゃんの恰好良い場面が見れないし」


春乃がそう言うと、イスティムは一瞬で転移して春乃の後ろに回り、剣を出現させて斬りかかる!

だが、


「見えてますよ」


春乃はそう言ってイスティムの方を向かないまま、短剣でイスティムの攻撃を防いだ。


「なッ!?」


流石のイスティムもそれには驚き、転移魔法で春乃から離れる。

春乃はその場から動かないで、ただ目を見開いているだけ。

イスティムは、どうして自分が現れた所がわかったのだ…、そう思いながら春乃を観察する。

そして思い出す。

目の前の春乃が言った事を…。


「そうか…監視する力。それが貴女の見たい人以外にも使えるとなれば話が違いますね」


イスティムがそう言うと、春乃が笑ってパチパチと拍手をする。


「正解です。私は様々な角度から自分、他人を見ることができるんです」


そう言う春乃を見て、少し面倒な事になったと思うイスティム。

移動する速さで自分が勝っても、目の前の女にはそれが筒抜けだということが、どれだけ戦いにくいか…。

イスティムはそう思いながら、どこに移動するか考える。

こうなったら仕方ない。

一瞬で移動して、反応して防がれる前に斬り裂くしか無い。

イスティムはそう思いながら、すぐに転移魔法で移動できるようにする。

瞬間!

春乃が転移で短剣をイスティムの体に刺さるように転移させる!

それと同時にイスティムも動き出して一瞬で春乃の左後ろに転移する!

勝った!

イスティムはそう思う。

春乃はまだ反応出来ていないし、手には短剣などが無い。

つまり、自分の攻撃を防ぐ手段がない!

イスティムがそう思いながら剣を振るい、刃が春乃に当たろうとした瞬間、イスティムの動きが止まった。

イスティムは自身の腹を見る。

そこには、春乃が握ったり転移させて攻撃してきた短剣が深々と突き刺さっており、衣類にイスティムの血が滲んでいる。


読んで下さってありがとうございます!

ブックマークして下さった方、ありがとうございます!

評価や感想、ブックマークをして下さると嬉しいです。

誤字脱字がありましたら、感想などで教えて下さい。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ