絶望から希望へ
今回は柊目線ではありません。
柊とリーシャが契約している頃、サンレアン国王城の一室では重苦しい空気が漂っていた。
「………………………」
「…ュゥ…ュゥ…ュゥ…」
「グスッ………ヒック…」
室内にいるのは、東桜寺学園生徒会メンバーの3人。
生徒会長、東桜寺怜華。
生徒会会計、葉山秋沙。
生徒会書記、葉山春乃。
3人は自分たちを命がけで助けてくれた柊の事で、怜華の部屋に集まった。
3人とも洞窟ダンジョンの事件以降、柊がいなくなった事で生活に支障が出るほど精神状態が不安定だ。
怜華は、皆の前では普段通りにしてはいるが1人になったりすると、瞳から涙が止まらなくなり食事の量も減っていく一方で少し痩せてきている。
秋沙は、顔に影ができ瞳から光が無くなり、常に小声で弟の名前を呟き突然泣き声を出す事無く涙を流し不気味になっている。
春乃は、自分のせいで兄が死んでしまったと思っており、涙を流し続けていて目元は赤く声もガラガラになってしまっている。
コンコン
重苦しい部屋にノックの音がする。
「………はい」
怜華が返事をして扉に向かい、扉を開けると
「やっぱりここにいましたか」
そこには生徒会メンバーの1人の結城 真海だった。
「結城さん…悪いのだけれど…」
「葉山先輩の事で話にきたんです」
「「「!!」」」
怜華がやんわりと今日は帰ってほしいと伝えようとした時、真海が食い込ませて言うと部屋にいた3人の空気が変わる。
ちなみに葉山先輩とは柊の事である。
真海達がまだ学園にいた頃、真海は柊の事を柊先輩と呼んでいた。
だが、部屋にいる3人にその事が知られると、目隠しをされ両手両足を縛られて拘束され3時間の尋問をされて以降は、柊の事を葉山先輩と呼んでいる。
「…入って真海さん」
怜華がそう言うと真海が部屋に入る。
「先輩達と春乃はいつまでそんなに弱っているんですか?」
真海が3人に問う。
問われた3人は顔を下に向け何も言わない。
「葉山先輩は先輩達や春乃にそんな顔をして欲しくて自ら犠牲になったんですか?違いますよね。3人にこれまで通りにいて欲しいから私たちを助けてくれたんじゃないんですか?」
「でも、柊ちゃんがいなくなっちゃったら意味ないもの…」
「なら、先輩を探しに行きましょう」
真海が言うと口を開いたのは春乃だった。
「無理だよ真海…私とお姉ちゃんがお兄ちゃんが落ちていったのを見てたんだもん…」
春乃はそう言うと柊が落ちていった時の光景を思い出したのか涙ぐんでいく。
「でも春乃、落ちていったのを見ただけで死んだ所ではないよね」
「そうだけど…」
「1%でも先輩が生きている可能性があるかもしれないんですよ!なら、私達で先輩を探しましょう!」
「「「…………」」」
真海の発言に3人は良い反応をしない。
仕方ない!
真海は3人に1番言ってはいけない事を言う。
「先輩達も春乃も結局、葉山先輩の事そんなに大切じゃないんですね。それなら私が葉山先輩の事独占しちゃっても良いですよね」
真海がそう言うと3人の雰囲気が変わる。
「真海さん…それはどういうことかしら?」
怜華はとても冷たい眼で真海を見る。
真海は内心ガクブル状態だ。
「結城さん、貴女は柊の事を狙っていたの?」
秋沙はドロドロと濁った瞳で真海の事凝視する。
イヤ~!
真海の心は恐怖で支配される。
「ねぇ真海…お兄ちゃんが好きなの?ねぇ…ねぇ!」
春乃は真海の肩を掴んで揺さぶる。
どんどん揺さぶりが強くなっていき真海の視界はぐわんぐわんしていき真海は気持ち悪くなっていく。
「春ちゃん、真海ちゃんを離してあげなさい」
怜華が春乃を止め、真海は解放されるが
「我が鎖よ、我が敵を束縛せよ」
「へ?」
真海は怜華の拘束魔法の鎖でグルグルにされる。
グルグルにされて身動きが取れなくなった真海に3人が近づいてくる。
あっ、わたしここで死ぬかも。
結局拘束された真海は5時間に及ぶ尋問に耐える事しか出来なかった。
5時間後
「そうよね、柊ちゃんの事を簡単に諦める訳にはいかないわ」
「えぇ」
「頑張ってお兄ちゃん見つけて、お礼言うんだ」
3人は生きる希望を心に宿しこれからの事を話し合っている。
「あの…この鎖解いて下さい…」
真海は縛られたまま無視される。
だが、真海は安心したような顔をしている。
良かった。これで当分の間は3人とも大丈夫だろう。だが、もし柊先輩の遺体を見つけてしまったら…。
私にはどうしようもできない。
先輩、無事でいて下さいね。
真海は柊の無事を願いながら縛られたまま、ゴロゴロしていた。
読んでくださってありがとうございます!
ブックマークありがとうございます!




