流水刀
レシオンは殺気を放ちながらも動けずにいた。
答えは簡単だ、目の前の敵がどんな動きをするか分からないからである。
そしてレシオンの前に立っているのは、流れる水の刃の刀を構えているヤニック。
レシオンは初めて見る敵の姿に慎重になっている。
すると、ヤニックが駆け出す!
レシオンも己の力の全てを込めてヤニックを迎え撃とうとすると、
「水激閃!」
ヤニックが刀を振るう!
その瞬間、水の刃が形を変えてレシオンに襲いかかる!
レシオンは慌てて、ヤニックの水の刃の攻撃を躱す!
だが、
「まだだ!」
ヤニックがそう言うと、レシオンが躱した水が目の前で形を変えて迫ってくる!
レシオンは何とかその攻撃も躱すが、無理な体勢になってしまう!
その隙をヤニックは見逃さない!
回避が出来ないレシオンを更に攻撃するヤニック。
流石のレシオンもヤニックの攻撃を躱す事が出来なく、攻撃を食らってしまう。
だが、レシオンとて魔王。
これくらいの攻撃程度なら、今まで何度も食らってきているのだ。
レシオンは自身を攻撃して来る水の刃を冷静に見る。
そして、
「見切った」
そう呟いて、レシオンは体を捻る。
ヤニックはその光景を見て更に追撃しようとするが、どの攻撃もレシオンは躱してしまう。
「お前の攻撃は…いや、今使っている剣の弱点という事か」
どんなに攻撃しても当たらないヤニックに、ヤニックの攻撃を全て躱すレシオンがそう言うと、ヤニックが顔をしかめる。
「その剣は、鞭の様に多方向からの攻撃が出来るが、刀身である刃は1つしか使えない。故に迫ってくる刃を避けてしまえば特に問題は無い」
ヤニックの弱点をそう説明するレシオン。
その顔には、すでに余裕の笑みが表れている。
レシオンにそう言われたヤニックは、レシオンに伸ばしていた水の刃を元の長さに戻す。
それを見たレシオンは、
「今度はこちらから行くぞ」
そう言うと、脚に力を込める。
そして、地面を蹴り一瞬でヤニックの元まで距離を縮める!
すると、
「氷獄!」
ヤニックの握っている刀から、アルベールの声が魔法を放つ!
ヤニックとレシオンの間に氷の壁が出来る。
だが、レシオンはそんな事を気にせず、自身の握っている剣を振り下ろす!
レシオンの斬撃は、アルベールが作り出した氷の壁をいとも簡単に破壊する!
ヤニックは刀を構えて、レシオンの攻撃を防ごうとするが、
「ッッ!?!?」
片腕でも相当な腕力を持つレシオンの攻撃を、ヤニックは防ぎきれずに吹っ飛ばされてしまう!
吹っ飛ばされたヤニックは、激しい痛みに襲われながらも水の刃を上手く操作して、地面に落ちる瞬間に水を広げて衝撃を抑える。
「ヤニック!大丈夫ですか!」
「チクショウ…。大丈夫ですアルベールさん」
ヤニックは水から起き上がり、刀を構え直す。
そんなヤニックを見て、レシオンは再びヤニックに斬りかかる!
ヤニックはそれを加速魔法を使って避ける!
レシオンはヤニックの動きを見て、ある事が疑問に思った。
今戦っている男は、加速魔法と水魔法、それと氷魔法を使っている。
だが、加速魔法は上手く使えているが、水魔法とかは上手くはない様に思える。
「試してみるか」
レシオンはそう呟くと、ヤニックに斬りかかる!
ヤニックはレシオンの攻撃を加速魔法で避けようとすると、剣を離してヤニックが加速魔法を使う前に捕まえる!
「ぐぁ…」
ヤニックはレシオンに捕まって、息が出来なくなる!
「氷槍!」
ヤニックの危機に、アルベールが魔法を使ってレシオンに攻撃する!
だが、レシオンはヤニックをあっさりと放して、アルベールの攻撃を躱す。
それと同時にレシオンは、地面に落とした剣を拾ってヤニックから距離を取る。
「アルベールさん。こなままじゃ俺達が負けます。アレを使いましょう」
ヤニックはレシオンが離れている隙にアルベールにそう言う。
「ですがヤニック。アレを使うと後で動けなくなりますよ」
アルベールがヤニックにそう言うと、ヤニックは笑って、
「回復薬いっぱい飲みますから大丈夫っすよ」
そう言った。
「わかりましたよ。では、私達の猛攻にあの人は耐えられますかね」
ヤニックの言葉を聞いて、アルベールが苦笑しながらそう言う。
その瞬間、ヤニックの握っている刀の水の刃が凄い勢いで噴出する!
その水はヤニックとレシオンの周りをグルグルと流れていく。
それは地面でも空中でも関係なく、流れ続ける。
その光景を見たレシオンは、
「何だこれは…」
周りを流れるキョロキョロ見ながらそう呟く。
だが、何が起きているのかは気になるが、目の前の男に集中しなくては。
レシオンはそう思い、ヤニックに目を向けると…。
「ん?」
先程までヤニックがいた場所には誰もいない。
すると、
「ッ!!」
レシオンは背中に痛みを感じる!
見ると、ヤニックがやや笑いながら、レシオンの背中を斬ったのだ。
いつの間に!
レシオンはそう思いながら、ヤニックを攻撃する!
だが、レシオンの攻撃を受けたヤニックは水になってしまう。
更にレシオンの腹に、氷槍が貫く!
「がぁ…」
氷槍が飛んで来たであろう方向を見ると、そこには誰もいない。
「どうなっている…」
その後もレシオンは、何もわからないままヤニックの攻撃を受け続ける。
今までと違った多方向からの同時攻撃に、レシオンは苦戦する。
そして何より、攻撃してくるヤニックに攻撃をしても、水になってしまうからだ。
レシオンは思う。
自分だけが、攻撃されていると…。
やがて、レシオンは自らの血の海に立っているだけになってしまった…。
どんなに攻撃しても通用しない事に最初は苛立ち、今は既に諦めている。
触れることが出来ない…。
だがあの男の水や氷、斬撃の猛攻は受け続ける…。
一方的過ぎる…。
「どのような…魔法を使ったんだ…」
レシオンは目の前に立つヤニックにそう聞く。
レシオンに質問されたヤニックはユラユラと揺れている。
このヤニックもただの水なのだろう。
レシオンがそう思っていると、
「俺とアルベールさんが作り上げた技だ。技全体が魔法だった訳じゃないんだ」
ヤニックがそう言う。
それを聞いたレシオンは、笑いながら、
「なるほど…。2人だからこそ出来る事という訳か…」
そう呟く。
そしてヤニックに、
「止めを刺せ。最後に面白いモノが見れた。満足だ」
そう言う。
それを聞いたヤニックは、剣を構える。
そして、ヤニックは全力で刀を振り下ろした…。
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