突撃
リーシャの魔法により一瞬で移動した俺達が見たのは、不気味に佇む城だ。
「懐かしいな~」
皆が緊張する中、アルの声だけは完全に昔を懐かしんでいて穏やかな声だ。
俺は魔視を発動して魔素を見てみると、ここら辺一帯の魔素の濃度は更に濃い。
それにしても、禍々しい城だ。
大きくて立派ではあるのだが、かすかに見える大きな何かの死体がぶら下がっているのはヤバい。
俺がそう思っていると、
「行くぞシュウ」
アルがそう言って歩き出す。
俺もアルから離れすぎない様に歩き出す。
そうして歩いて魔王城に近づくと、流石に魔族達に気づかれた。
城の方から魔族や魔物達が出てくる。
それと同時に、魔法も飛んでくる。
だが、魔法は俺が魔素を操ってこちらに着弾する前に霧散させていく。
そうしていると、
「燃やし尽くせえェッ!」
ザールさんが大剣を引き抜いて思いっきり振るう!
その瞬間、ザールさんの黒い炎の斬撃が城から出てこちらに向かって来ていた敵を襲う!
叫び声や苦しそうな雄叫びが聞こえる。
やがて、ザールさんの黒い炎が消えると、城から出てきていた敵が全て消えていた。
どうやら、ザールさんの炎に燃やされて跡形も無くなったんだろう。
そう思っていると、俺の目にはある光景が見えた…。
ほんの少し前には立派だった城が、おそらくザールさんの攻撃により城壁が抉れている…。
すると、
「何だこれ!?城が壊れてる!」
どこかで聞いた声が崩れた城壁に驚いている。
そして現れたのは、
「来い我が子供達!!」
前にエルフの村で戦った事がある魔王の1人で、確か魔物を操る事が出来るんだよな。
俺がそう思っていると、城からどんどん魔物が出てくる。
その瞬間、
「水激滝!!」
アルベールさんが魔法を発動して城から出てきた魔物を激しい水の流れでなぎ倒していく。
「ここは私とヤニックが請け負います!皆さんは行って下さい!行きますよヤニック!」
「はいアルベールさん!加速!」
アルベールさんがそう言って、ヤニックに指示を出すと、ヤニックは加速魔法で次々と魔物を屠っていく。
「任せるぞ!アルベール、ヤニック!」
ザールさんは魔物の群れに向かっていく2人にそう言って走り出す!
それに続いて俺達も走り出す!
そのまま走り抜けようとするが、流石に魔王が許してくれない。
「ここは通さないぞ!この俺、魔王キュバシムの子供達がお前らを八つ裂きにしてやる!」
そう言いながら、俺達の前に出てくる魔王キュバシム!
すると、
「いいえ、ここは通してもらうわ」
怜華さんがそう言って魔法の詠唱を始める。
「無限に閉ざされた闇、中に立つのは賢者か愚者か」
怜華さんがそう言うと、魔王キュバシムの周りだけ怜華さんの支配領域になる。
「何だこれ!」
怜華さんの魔法に捕らわれた魔王キュバシムは抜け出そうと暴れるが、
「動かないで」
怜華さんの命令によって動かなくなる。
だが意識はある様で、横を通り過ぎる俺達も睨みつけている。
すると、
「貴方は愚者だった様ね。消滅しなさい」
怜華さんが立ち止まって、魔王キュバシムにそう言う。
その瞬間怜華さんの作った領域が無くなり、その中にいた魔王キュバシムもいなくなっていた。
怜華さん強すぎないかな?
俺はそう思いながら、走り続ける。
やがて城の中に侵入すると、魔族達が俺達を囲んでくる。
「魔翔大剣!」
俺は魔素を操り、魔族達を斬り裂く!
叫び声を上げながら倒れていく魔族達。
「柊ちゃん…」
怜華さんがウットリした目で見てくる。
き、緊張感が無い…。
そう思っていると、
「あんだってんだよ。せっかく人が寝てたっつうのに」
そう言いながら少しイライラしている様な男が出てきた。
すると、
「魔王レラジズです。あの男は私が戦うんで先に行ってください」
真海ちゃんがそう言ってくる。
すると魔王の方も真海ちゃんに気づいて大きな笑い声を上げる。
「今度こそ、倒してみせます」
「やれるもんならやってみろ!」
魔王レラジズはそう言うと、一気にこちらに向かってくる!
「筋力増強」
真海ちゃんは自身に魔法を発動すると、魔王の攻撃を真正面から受け止める!
「真海!早く追い付いてね!」
既に魔王と戦い始めた真海ちゃんに春乃がそう言う。
それから俺達は、魔王城内に入る事が出来た。
城内にも魔族達がいたが、ザールさんや俺、アルの攻撃でほとんどの魔族が足止めする事なく消滅していく。
城内に入ると、アルが先頭を走る。
流石はアル、ここに居た事もあって城内の事をわかっている様だ。
特に迷うことなく進んでいくと、少し広い空間に着いた。
すると、何の前触れも無く俺達の頭上に無数の剣が落ちてくる!
俺が魔素で防ごうとすると、
「空間転移!」
春乃が魔法を発動する!
一瞬で頭上に落ちてきた剣が部屋の端に落ちる。
「おやおや、防がれてしまいましたね」
そう声が聞こえると、少し離れた所に男が現れる。
魔王イスティムだ…。
「お兄ちゃん、この人は私が倒すから先に行って」
春乃がそう言ってイスティムと対峙する。
「貴女は、サンレアン王国の時の…。なるほど、良いでしょう」
イスティムも春乃を見て、少し笑う。
「気をつけろ、春乃」
俺がそう言うと春乃は笑って、
「お兄ちゃんの監視より気を付ける事なんてないよ」
そう言う。
「行くぞ!」
アルの言葉を聞いて、俺達は走り出す!
心配ではあるが…、信じて進む!
そうして俺達は、春乃を置いて更に城の中を進んでいく。
するとまた広い空間に出る。
そしてそこには、
「良い顔をしている」
「また、あの女と戦わないといけないの?変わってよハルファス」
2人の魔族が立って、俺達の事を待っていた。
その瞬間!
「…暴走!」
秋沙姉がハルファスと呼ばれた男の方に向かって駆ける!
そして、ハルファスも剣を出現させて秋沙姉の攻撃を防ぐ!
秋沙姉とハルファスの剣がぶつかった瞬間、風が巻き起こる!
「柊ちゃん、私達はここで戦うわ。気を付けて」
「怜華さんも」
怜華さんが俺にそう言い、俺も怜華さんに言い返す。
俺の言葉を聞いて、怜華さんは微笑んで歩き出す。
その瞬間、寒気がした…。
あの微笑んだ怜華さんから、一瞬で殺意しか感じない。
「そろそろ王座だ。気を引き締めろよ!」
アルがそう言って走り出す!
俺とザールさんもアルに付いて走り出す。
敵はもう目と鼻の先だ!
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