契約
遅くなって申し訳ありません
リーシャと部屋に入り、2人でベッドに腰掛ける。
「ごめんねシュウ」
「何が?」
「勝手に決めちゃって」
「い…いいよ。俺こそお金なくてごめん」
「良いのよ。お金は有り余ってるし」
「そうなの?」
「洞窟暮らしだったからほとんど使わなかったのよ」
「そういうことか」
「えぇ」
「「…………」」
気まずい。
何でこんなにも気まずいのだろう。
チラッと隣にいるリーシャを見ると顔が赤い。
「ねぇリーシャ、何でまだ昼間なのにギルドの依頼を受けないで宿に入ったの?」
「…シュウの腕の事で相談があるの」
「相談?」
「これからシュウはギルドの一員として依頼を受けると危険な戦闘になる時だってあるわ。それにシュウは片腕を失くしているの。人より戦闘での危険が高い。そして、私も目立つことはあまりできないの。初代勇者が生きていたなんて事になったらややこしい事になるから。だからシュウ、私と契約して欲しいの」
「契約?」
リーシャの方へ体を向ける。
俺が聞き返すとリーシャは決心したかのように顔を引き締める。
「そう。私と契約して私、リーシャという剣を使って欲しいの。…本当はギルドで用事を済ませたら私は、また洞窟に帰る予定だったわ。でも、シュウと別れるって考えたらすごく嫌なの。私を真っ直ぐ見てくるシュウの傍にいたい。あなたの傍に、隣にいたいの。…だから、私と契約して欲しいの」
リーシャの目には強い意志が見える。
不安なのか目は潤んでいる。
この目には真剣に自分の全てを見せなければいけない。
「俺もリーシャと離れたくない。リーシャの強さを手放したくないっていう気持ちもあるよ。でも、それ以上にリーシャの傍で俺の事を見ていて欲しいという気持ちとリーシャを隣で見ていたい気持ちがあるんだ」
俺がそう言うと、リーシャの瞳から涙が零れる。
「でも、俺はこれから色んな事でリーシャに迷惑を掛けると思うんだ。それでも良…」
「良いわ!私は伝説の初代勇者よ!何でも解決してあげるわ!それに…」
リーシャがもじもじしている。
「ん?」
「人生のパートナーって苦楽を共にするものなんでしょ」
「ま、まぁそうだね」
「でしょ?……ふふっ」
リーシャが俺の体に寄り添う。
「シュウ…」
「どうしンッ!」
目の前には目をつぶったリーシャの綺麗な顔がある。
俺の唇はリーシャの唇で塞がれてしまい声が出せない。
リーシャを受け入れ俺も目を閉じ、リーシャの体を左腕で抱きしめる。
目を閉じたからなのか、リーシャの唇の柔らかい感触や甘い匂いをより強く感じてしまう。
それからどれくらい経ったのかわからないが、お互いに唇を離す。
「凄く恥ずかしいけど…とても幸せよ」
目の前にあるリーシャの顔を見ると、真っ赤だがとても綺麗な笑顔をしていた。
「ありがとう。リーシャ」
「えぇ。シュウ…契約するわよ」
「よろしく」
俺がそう言うとリーシャが光り、剣になった。
「少し痛いかもしれないけど我慢してね」
そう言ってリーシャがフワッと浮く。
そして剣先が俺の方に向く。
え?
瞬間リーシャが俺の胸の中心に刺さる!
剣に刺されているがほぼ痛みは無い。
「シュウ、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、契約しちゃうわね」
リーシャが言うと、体が熱くなってくる。
リーシャが刺さっている胸の中心から体全体にと、熱が広がっていく。
「今、シュウの体の中に契約印を書いてるの。もう少しで終わるわ」
「うん」
それから10秒ほどでリーシャは抜けた。
「終わったわ。契約印が描けたわよ」
そう言ってリーシャは元の人の姿に戻る。
「特に変わったところは無いけど」
「だってまだだもの」
そう言ってリーシャは手を出す。
「握って」
出された手を握る。
「良い?私が魔法を使うと契約した力が発動するわ」
「う、うん」
緊張してきた。
「神手」
魔法を使った瞬間リーシャが光り輝く!
目を閉じ、光が弱まるのを待つ。
少しして光が弱くなってきたので、目を開けるとリーシャがいない。
剣になっているのかと下を見るがそこにもいない。
「シュウここ!」
「え?」
リーシャの声が聞こえ、そちらを向くがいない。
「そっちじゃないわ!右腕見て!」
「右腕?」
リーシャに言われ右腕を見ると、魔王との戦いで無くなった右腕があった。
普段見てきた腕とは違い、肘から先は銀色で指も剣のように薄いし刃がある。
「これって…」
「私がシュウの腕になって一緒に戦うのよ!シュウは強くなるし私もシュウと離れなくていいし、シュウの安全は保証できるわ!」
「でも目立たないかな?すっごい綺麗だけど…」
「魔法で周りには普通の腕にしか見えないようにしておいたわ」
「流石だね。リーシャは元に戻れるの?」
「当たり前よ!そうしないと夫婦として色んな事が出来なくなるじゃない」
リーシャはそう言うと右腕、つまりリーシャが一瞬光り人の姿に戻る。
「これでシュウと離れずにずっと傍にいられるわ」
「リーシャは体に異常はないの?」
「ないわよ。それよりシュウ、試し斬りに少し魔物を狩りに行きましょ!」
「そうだね。俺も早くリーシャと連携が上手くならないと」
そう言うと、リーシャが抱き着いてくる。
「この町から少し離れた所に転移するけど良い?」
「リーシャに任せるよ。まだ地理には詳しくないから」
「そうよね。準備は良い?」
「うん」
「転移!」
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