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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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ヤニックの姉

その後、王女様とヤニックはとりあえず落ち着いてもらい、俺達はすぐに出発しないという話をした。

すると、王女様は普通にヤニックを解放した。

だが、ヤニックはお姉さんの事を見たいと言うと、案内される。

俺とザールさんは待っていようと思って立っていたら、ヤニック自身に呼ばれて付いて来ている。

相変わらずチカチカしている廊下を歩いていると、扉の前で王女様とヤニックが止まる。

俺とザールさんも止まる。

王女様が扉を開けると、


「アンリーヌ…それにヤニックも」


豪華なベッドに横たわっている女性が、王女様とヤニックに気づいて声を出す。

女性の声は弱弱しくか細い。

相当、体に限界が近づいているのが分かる。

そう思っていると、


『珍しい病気ね。シュウ、魔素を見てみて』


リーシャがそう声を掛けてくる。

俺はリーシャに言われた通り魔素を見るために魔視を発動する。

すると、ヤニックのお姉さんの体が魔素を少しずつだが吸収している。

前にルリィが奴隷の時に見たような症状ではあるが、ヤニックのお姉さんの症状はゆっくりと進行していくモノの様だ。

だがこのままじゃ、魔素を吸収してしまい体が壊れてしまう。


「姉貴、体の具合はどうだ?」


俺がそう思っていると、ヤニックがお姉さんに優しく声を掛ける。


「大丈夫よ。ヤニックは最近…どうなの?」

「俺はどんどん強くなってるぜ。いつか絶対に姉貴の病気を直してやるからな」


ヤニックの言葉を聞いて、ふふ…とお姉さんが笑う。


「無理しちゃダメよ。あんたの事を必要としている人達がいるんだから」


お姉さんはそう言って、俺とザールさんの方を見てくる。


「姉貴の事を必要としている人だっているぜ。だから姉貴も無理すんなよ」


ヤニックがそう言うと、お姉さんが手を上げる。


「どうした姉貴?」


ヤニックがそう言って、腰を下ろすとお姉さんの手を握る。


「ヤニック、何するか…知らないけど、危ないと思ったら逃げなさい。逃げる事は、格好悪くないから」

「大丈夫だって。俺、強くなったからよ」


ヤニックがそう言うと、お姉さんが心配そうな顔をしている。

これまでのことで、こういう事があったのかもしれない。

俺がそう思っていると、


「それとヤニック、アンリーヌとの式はいつなの?」

「ふえ?」


お姉さんの言葉に、ヤニックが予想して無かった様な声を出す。

お姉さんまで結婚に賛成となると、もう逃げる事出来なさそう。


「お義姉様、着々と準備は出来ていますわ。後は、ヤニックの結婚しよう…の一言で大丈夫ですわ」

「はぁ!?」


もう何だか、ヤニックも色々と大変なんだな。

もしヤニックが王女様と結婚したら、この国大丈夫だろうか?

いや、王女様がしっかり?してるから大丈夫だろうな。

俺がそう思っていると、


「う…くぅ…」

「姉貴!?」


ヤニックのお姉さんが苦しみだした。

俺は魔視を発動してお姉さんを見てみると、魔素を吸収している。

マズいな。

俺はそう思いながら、ヤニックのお姉さんの脇に行く。


「シュウ?」


ヤニックが俺に声を掛けてくる。


「少し様子を見させて」


俺はヤニックにそう言うと、魔視を発動して魔素の流れを見る。

見ると、近くの魔素を少しずつ吸っている。

俺は魔素を操って吸収を止めようとするが、操作を止めるとお姉さんの苦しそうな感じが無くなる。

だが、魔素の操作を止めるとまたお姉さんの体に魔素がゆっくりと吸収されていく。

どうすれば良いんだ…。

俺がそう思っていると、


『シュウ、おそらくだけどこの症状は、体質的なモノもあるんだと思うわ』


リーシャが俺にそう言ってくる。


『つまり、元からヤニックのお姉さんは魔素を吸収する体って事?』

『そうだと思うわ。小さい頃はまだ体に溜まるだけで済んでいたと思うの。でも、成長すると共に蓄積された魔素が体を蝕み始めたと思うわ』


俺の質問に、リーシャがそう説明してくれる。

つまり、お姉さんの体に蓄積された魔素もどうにかしないと…。

俺がそう思い、どうすればいいのか考えていると、


『シュウ、私が回復魔法を使うのと同時に魔素の吸収を止めて』


リーシャが俺にそう指示を出してくれる。


『わかった』

『天聖回復』


リーシャの指示に返事をすると、リーシャが魔法を使う。

それと同時に、俺は魔素を操る。

俺が魔素の吸収を止めていると、リーシャの魔法がお姉さんの体を包み込む。

少しして、リーシャの魔法が消える。


『シュウ、もう大丈夫よ』


リーシャに言われて、俺は魔素の操作を止める。

魔視でお姉さんの体を見ると、どうやら魔素の吸収が止まっている。

成功のようだな。

その後、ヤニックのお姉さんが大丈夫な事をヤニックに説明すると、泣きながら俺にお礼を言ってきた。

王女様も安心したような表情をしていた。

ヤニックと王女様を残して、俺とザールさんは城を後にした。

今はザールさんと共に城門の前でヤニックとアルベールさんを待つ。


「相変わらず、凄い事が出来るな」

「そんな事ないですよ。でも、ヤニック遅いですね」


既に2時間近く城門の前で待っているんだが…。

俺がそう思った瞬間!


「嫌だ~!師匠!シュウ!走れ~ッ!!」


城からヤニックが全力で走ってくる!

そのまま俺とザールさんの脇を走り抜けると、城の中から騎士の人がぞろぞろと出てくる!


「何仕出かしたんだヤニックの奴!」


ザールさんもそう言って走り出す。

しかも本気で走っているのか物凄く速い!

俺も少し遅れながら走り出す。

それからは、そのままシュルドー王国を出ても走りまくった。

騎士の人達が馬に乗って追いかけて来たからだ。

結局、シュルドー王国の領地を抜けるまで追いかけっこは続いたが、俺達は何とか逃げ切ったのだ。

ヤニックを問いただすと、元気になったお姉さんが王女様と速く結婚しろとヤニックに言い、王女様もヤニックに対して早く言えと迫ったらしい。

だが結婚をしたくないヤニックは、


「俺は冒険者だ!自由に生きるんだ~!!」


と2人に言って逃げてきたらしい。

後は、俺とザールさんの知っている通り、騎士の人達に追いかけられたという事だ。

ザールさんがしっかりと話し合えとヤニックに言うと、


「無理ですよ師匠!あの2人、俺の意見なんて無視しかしないんですから!」


ヤニックはその時の事を思いだして暗い表情をしながら、そう言った。


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