ヤニックの過去
その後、ヤニックは城に連行されてしまった。
アルベールさんもヤニックから離れすぎる事は出来ないので付いて行ってしまった。
今は俺とリーシャ、ザールさんで買い物に来ている。
と言っても、俺はザールさんの買い物が終わるまでお店の中を見ているだけだけど…。
「それで、どの位用意できる?町の人の事を考えてだ。買い占めるつもりは無い」
「し、少々お待ち下さい」
ザールさんの言葉に、店員の男性がそう言って奥に行ってしまう。
それにしても、以外に町の雰囲気とか町の人、店の品ぞろえを見ると他の国と違うな。
なんていうか、サンレアン王国とここシュルドー王国は少し似ている。
余裕があると言うか、活気に溢れている。
他の国は限界を迎えている人がいたりと、余裕がなかった。
どうしてなんだろう。
俺がそう思っていると、
「お待たせしました。それぞれ30個ずつなら大丈夫です。あと回復薬は50個大丈夫ですが、どうしましょうか?」
「それで構わない」
ザールさんの買い物が済みそうだ。
「ザール様。ヤニックはどうでしょうか?」
店員さんはそう言いながら、回復薬などを袋の中に入れていく。
「いつも通りだ」
「そうですか。あいつには頑張ってもらわないといかないですからね」
店員さんの言葉に、
「ヤニックにですか?」
俺が質問してしまう。
「あぁ。あいつがアンリーヌ様とご結婚したら、城からの寄付金が入るんですよ」
店員さんの言葉に、ヤニックの皆に裏切者と言った意味が分かった。
「どうしてヤニックが王女様と結婚したら、寄付金が入るんですか?」
「あぁ。まぁ言うならヤニックを捕まえて欲しいって事ですよ。しかも毎年ですよ。ヤニックには結婚して頂かないと」
そう言う店員さんの言葉に、少し疑問を感じる。
確かにヤニックなんてアレだが、流石にそれはどうなんだろうか。
王女様にそういう気持ちがあっても、ヤニックに無いならそれは幸せになるのだろうか?
俺がそう思っていると、
「シュウ、この国の皆はヤニックの事が嫌いでこんな事をしている訳では無いんだ」
ザールさんが説明してくれる。
「そう思われても仕方ないですけどね」
ザールさんの言葉に、苦笑しながらそう言う店員さん。
何か訳があるのだろうか?
俺がそんな事を考えていると、
「ヤニックは普段アレだが、苦労人なんだ」
ザールさんがそう言う。
「そうなんですか」
「あぁ。だから、町の人達はそんなヤニックが楽な生活をできる様に王女様の話を飲んだのだろう」
ザールさんが店員さんを見ながらそう言うと、店員さんは頷く。
「あいつは小さい頃に親を失いましてね。姉のマドロラと2人で協力して生きてきてたんです」
ヤニックにはお姉さんがいたのか…。
そんな事、聞いた事も無かったしな。
「数年前にマドロラが病で倒れてから、ヤニックは大変でした。マドロラの薬代や自分が生きていく為の金銭を稼ぐのに必死になってしました」
「その時に俺とアルベールがヤニックに出会ったんだ。俺の事を見るなり弟子にしてくれと言われた時は固まったな。最初は断ったんだが、何でも頭を下げてくるあいつに俺が折れたんだ」
「そうだったんですか」
店員さんとザールさんの言葉に、俺はヤニックの事を思いだす。
そんなに真面目そうには見えないんだがな。
今までの行いとかを思い出すと、そんな事を思ってしまう。
「まぁそれから俺の弟子をしている時に、この国の王女様の護衛の依頼があってな。それを受けた時にヤニックが、王女様を見てこう言ったんだ。お前みたいな奴がいるから、町の皆は幸せにならないんだ!とな」
「そんなに王女様は、ヤニックがそう言う様な格好と言いますか態度だったんですか?」
俺がザールさんにそう聞くと、
「昔の王女様は、私達の事を何とも思っていないような感じでした」
店員さんが答えてくれる。
「俺達や他の護衛の騎士に対してもそんな感じだった」
店員さんの言葉にザールさんが頷きながらそう答える。
「だが、ヤニックに言われた王女様は何故かそんなヤニックの事を気にいってしまってな。護衛の間に何度も迫られていた」
ザールさんが昔の事を思いだすような仕草をしながらそう言う。
「その依頼の後は、たまにヤニックが帰って姉の様子を見に行っていたのだが、どうなんだ?」
ザールさんが店員さんにそう聞くと、
「恐らくそのお話の後に、アンリーヌ様がマドロラを城で治療をする事にしたんでしょう」
そう言った。
つまり、今ヤニックのお姉さんは城にいるって事か。
そうしたら、城にヤニックが来るという事だもんな…。
あの王女様、結構外から埋めに来てるな。
俺がそう思っていると、
「これで全部です」
店員さんがそう言って袋をザールさんに渡す。
「ありがとう。釣りは要らない」
ザールさんはそう言って、十分すぎるお金を店員さんに渡して外に出る。
「どうしますかザールさん、ヤニックとアルベールさん迎えに行きますか?」
「その方が良いだろうな。普段なら待っているのだが、今回は急がなくてはいけないからな」
俺とザールさんはそう話をして、シュルドー王国の城に向かう事にした。
門番の人にヤニックの事を話すと、苦笑いをしながら中に入れてくれた。
城の中に入ると、サンレアン王国の城よりキラキラしていて、目がチカチカする。
「んぐぐ~~!!」
そして、メイドさんの案内で城を歩いていると、ヤニックの声が聞こえる。
その声の方へ歩いて行き、少し大きな扉に辿り着いた。
メイドさんが扉を開けた瞬間、中の光景が見えた…。
両手足を縛られて椅子に座っているヤニック。
そんなヤニックに果物を食べさせようとしている王女様。
頑張って見れば微笑ましい光景なのかもしれないが、王女様の行動に流石に微笑ましく見えない。
それは、ヤニックに果物を食べさせようとしている王女様の手には、果物だけではないのだ。
果物をフォークで刺して食べさせるのならわかる。
だが、王女様が持っているのは、ナイフに貫通している果物なのだ…。
つまり、果物が口に入る前にナイフの刃が口に入る事になってしまう…。
「た、助けて下さい師匠~!…うが…」
あ、ヤニックが助けを求めて口の開いた隙に、果物が口に入った。
勿論、ナイフの刃も…。
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