逃亡
俺の拳が獅子原とルゼバラムの体に当たり、追加で紅蓮の炎で燃やし尽くそうとする!
だが、
「ぐは…かは…。ぜ、絶」
ルゼバラムは苦しみながらも俺から距離を取る。
もう一発!
俺がそう思って距離を縮めようとすると、ルゼバラムはそれを察したのか壁にしている地面を砕きそこから逃げる!
「待て!」
俺はそう言って、外に逃げ出したルゼバラムを追うと、ルゼバラムは俺の少し離れた所で俺の事を見ている。
苦しんでいる今がチャンスだ。
俺はそう思いながら、脚に力を込めて一気に加速する!
一気に加速してルゼバラムの目の前に移動する!
もう一発食らえ!
俺は思いながら、ルゼバラムの顔面を殴る!
「ッッ!!」
声にならない悲鳴が聞こえて、ルゼバラムは後ろに数歩下がる。
見ると、鼻が潰れている…。
すると、
「やはりだ」
ルゼバラムが何か納得したように言う。
「貴様には2つの魔力がある。1つは君自身のだ。だがもう1つは、私が手に入れたい者と同じ魔力…。どういう事なのだ?」
俺にそう聞いてくるルゼバラム…。
マズイ、リーシャの事に少しだけだが気づいてきている…。
「…知らないな。気のせいなんじゃないか?」
俺がそう言うと、ルゼバラムは目を細めて俺の事を見てくる。
「確かにあの女の魔力の気配はする。だが、姿は男…」
ルゼバラムが何やら呟いている。
『シュウ、大丈夫?』
俺がルゼバラムの様子を窺っていると、リーシャが声を掛けてくる。
流石リーシャだ、俺の状態をよく分かっている。
すでに俺は、魔力を半分以上使ってしまっている。
何度も魔素を扱うのは大丈夫なのだが、魔人化を使うと消費する魔力が多い。
早くしないと、俺が魔力切れになってしまう。
俺がもう一度脚に力を込めた瞬間、俺の後ろに轟音が轟く!
慌てて後ろを見ると、砂埃で何がどうなっているのかわからない状態だ。
「大丈夫かシュウ~?」
すると、砂埃の中から俺に手を振るアルが出てきた!
「アル!」
「まさか…アルネウスか!!」
俺とルゼバラムが同時に声を出す。
「大丈夫かシュウ?」
アルが俺の隣に来てそう聞いてくる。
「う、うん。それよりアルはどうしてここに?」
「いや、陰気臭い奴の気配がしたからスキルで見たら、シュウと対峙してるのがわかってな。急いで来たんだよ」
アルは俺の質問にそう返して、俺をかばう様に俺の前に立つ。
「久しぶりだな2代目」
アルがルゼバラムにそう聞くと、ルゼバラムは嬉しそうに笑う。
「会いたかったぞアルネウス!私は戻って来た!次こそは、貴様とあの白銀の勇者を捕まえてみせる!」
ルゼバラムはそう言って、手を大きく広げる。
「オレは会いたくなんかなかったよ。いい加減早く消滅してくれねぇと面倒なんだよ」
そんなルゼバラムに、バッサリと言うアル。
すると、
「待て。アルネウスはその男とどのような関係なのだ?」
ルゼバラムがそう聞いてくる。
何だろうこのちょっとした修羅場みたいな感じ…。
俺がそう思っていると、アルが俺の事を見て、
「旦那だ」
そう言った。
『まだ、そこまで進んでないのに…。まだ、私だけなのよ』
アルの言葉に、リーシャが拗ねた様にそう言う。
すると、アルの言葉を聞いたルゼバラムが取り乱す。
「ありえない!アルネウス!どういうつもりだ!」
「だから、オレはもうこのシュウに心奪われてるんだよ」
アルがそう言った瞬間、ルゼバラムがアルに斬りかかる!
だが、アルはルゼバラムの斬撃を余裕そうに躱して、逆にルゼバラムの体を殴りつける!
アルの腕力であっさり吹っ飛ばされるルゼバラム。
こう思うと、アルって魔法を使って無くてこの力なんだよね。
凄いな。
「ぐ…ではアルネウス、もう1つ問う」
地面に倒れながらそう聞いてくるルゼバラム。
「あんだよ?」
「その男から、あの女の魔力の気配がする。どういう事だ?」
「あ?そんなのリーシャがシュウの嫁に決まってるからだろ」
そして、ルゼバラムの質問に当たっている様で全然当たってない答えをするアル。
「は?」
そして、アルの言葉を聞いたルゼバラムが止まる。
すると、ルゼバラムが苦しみだす。
どうやら、今度は獅子原のようだ。
「葉山ァ~!絶対に…殺してヤル!」
俺に向かってそう叫ぶ獅子原だが、体が心に追いついていない。
獅子原は地面に倒れながら、俺にそう言ってるのだ。
「さてと、じゃあ動けないうちに殺すか」
アルがそう言って獅子原の元に歩き出す。
俺も付いて行くと、
「グゥ…ハァハァ…コロシて…ヤルからナ」
獅子原が俺を見てそう言ってくる。
ここまで恨まれるような事してない気がするんだが…。
俺がそう思っていると、
『男の嫉妬ね』
リーシャがそう言う。
「あばよ2代目」
そんな事をしているうちに、アルが獅子原に止めを刺そうとした瞬間!
一瞬で獅子原の体が消える!
見ると、ぐったりしている獅子原を担いでいる男がいる。
魔王イスティムだ!
「すみませんね。この方を殺される訳にはいかないんですよ」
魔王イスティムがそう言って獅子原の体を担ぎ直す。
「おや?貴方は確かガレス様と戦った…」
魔王イスティムが、俺に気づいてそう声を掛けてくる。
すると、空中にいるイスティムにアルが殴りかかる!
だが、イスティムは一瞬で消えてアルの拳は空ぶってしまう。
俺は慌てて魔視を発動して、イスティムが次に現れる位置を探る。
だが、どんなに辺りを見ても魔素の反応が無い…。
おそらく既に逃げてしまったのだろう…。
「大丈夫かシュウ?」
アルが、俺の近くに下りてきてそう聞いてくる。
「ごめんアル。もっと俺が強かったら」
俺がそう言うと、アルは頭を掻きながら、
「いや、オレも止めを刺せなかった。お互い様だ」
そう言ってくれる。
「それよりリーシャ。何でお前出てこないんだよ」
アルが俺の右腕なっているリーシャにそう言うと、リーシャが人の姿に戻る。
「シュウの援護の為よ」
リーシャがアルにそう言うと、アルがニヤッと笑って、
「半分はそれが理由だな。もう半分は?」
リーシャにそう聞く。
「…あの男に会いたくないだけよ」
リーシャがそう言うと、アルが笑って、
「そうだよな。なんか異常にオレ達に執着しているんだよな」
そう言った。
…ある意味凄い執着だな。
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