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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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ザールさんの大剣の一振りにから出る膨大な力を宿した黒い炎が、俺に迫ってくる!

俺は迫ってくる黒い炎に右腕を突き出す。


『猛極爆炎!』


その瞬間、リーシャが魔法を使い、ザールさんの黒い炎に負けないほどの紅蓮の炎が右腕から溢れ出す!


『ありがとうリーシャ!』


俺はリーシャにお礼を言って、右手から溢れる炎を操る。


「双魔法剣・緋焔拳」


今までの魔法剣ではいけなかった。

魔法を形作って、魔法の有利性である遠距離攻撃が失われてしまうのだ。

そして考えたのが新しい魔法剣の作り方だ。

それが、俺の両腕に巻き付いているリーシャの魔法だ。

剣と呼んでいながら、刃は無く硬い訳でも無い。

ただ、俺が腕を振るえば斬撃は発生し、この力を解放すればある程度の遠距離にも対応する。

俺は両手を前に出す。

そして、迫ってきていた黒い炎に飲み込まれる!


「ぐっ…、凄い力だ…」


リーシャの魔法で、黒い炎を防ぐ。

前の竜焔剣よりも純粋な炎の力だけではなく、どこか憎悪の様な感じがする。


『当り前よシュウ。黒竜は何かに対して怒りや憎しみを募らせてようやく、この黒い炎を出せるようになるの』


だから、こんなにも炎の中だというのに寒気がするのか。


「だが、そんな感情に負けない…」


俺はそう呟いて、魔法を一気に解放する!

その瞬間、黒い炎を食い尽くす紅蓮の炎。

解放と同時に魔素を操って魔素の濃度を上げていたのが良かったのだろう。

やがて、紅蓮の炎が視界全てを覆い尽くし、俺は魔素を一回霧散させる。

すると、ザールさんが地面に倒れている!


「ザールさん!」


やり過ぎてしまったか?

俺はそう思いながら、ザールさんの側に駆け寄ると、


「すまない。MP切れだ」


彼はそう言って目を閉じる。

俺は慌てて、ルリィ特製MP回復薬をザールさんに飲ませる。

飲ませると言っても、半開きの口に流し込んだだけだが…。

少しして、ザールさんが目を覚ました。


「すみません。大丈夫ですか?」


俺がそう聞くと、ザールさんは起き上がる。


「あぁ、大丈夫だ。すまない。後で返す」


ザールさんがそう言う。

返すとは、回復薬の事だろうか?


「それにしてもいつもの物より元気になっている気がするが…」

「それ、俺の家族が作ってくれた物なんです。凄いですよね?」


俺が少し自慢をしてしまうと、ザールさんは、


「そうだったのか。では返す事も出来ないな」


そう言って申し訳なさそうにする。


「気にしないで下さい。まだありますから」


俺がそう言うと、


「すまないな」


ザールさんがそう言う。

見ると、ザールさんの隣に大剣が置いてあるのだが、その刃からは今だに黒い炎が出ている。


「ん?これか?」


すると俺の視線にザールさんが気づき、大剣を持って俺に見せてくる。


「これはいつでも燃えているんだ。おそらく俺の事を焼き尽くしたいのだろう」


そう言うザールさんの表情は引きつっている。


「そう言えばあの翼、どうなってるか見せてもらっても良いですか?」


俺が話題の変える為にそう言うと、ザールさんが少し体を動かす。

そして、ザールさんの防具には何もなかった…。


「あれ?」


俺がそう言うと、ザールさんが苦笑する。


「すまないな。あれは魔力を注いだ時に生える物だから、今はダメなんだ」


俺にそう説明してくれる。

そう言えば、魔力の消耗も激しい的なことを言っていたな。


「いえ、あれ凄いですね」

「そんな事ない。君は翼が無くても空を飛んでいたじゃないか」

「あ、あぁ。まぁ、そうですね」


俺とザールさんはそう言い合って、互いに笑う。

その後、ザールさんが完全に回復するのを待ってから、俺達はヴェルーズに帰った。

ギルドに入ると、ヤニックがまたお酒を飲んでいる…。

アルベールさんは?

俺はそう思い、アルベールさんを探すと、受付にいるフェリアンさんと何やら話しているようだ。


「全くあいつは…」


ザールさんがそう呟いて、ヤニックの所へ行ってしまう。


「あ~…ひひょお~」


ヤニックはもはや、呂律が回っていない。


「いい加減にしろ!」


あ、殴られた…。

ヤニックがザールさんによる鉄拳制裁を見た後、俺はフェリアンさんとアルベールさんの所に行く。


「おや?シュウさん、飲んでますか?」

「いえ、飲んではいませんけど」


フェリアンさんが俺に気づいてそう言ってくる。

仕事しなくて大丈夫なのだろうか?

いや、ザールさんが帰って来たお祝いなんだ、羽目を外しても良いだろう。


『シュウ、あの男がまた吐いてるわ』


ヤニック…。

その後、俺もフェリアンさんとアルベールさんに交じって色々と話し合う。


「なるほど。つまり魔族達の所に行く場合、ザール達と一緒にシュウさんも行ってしまうんですか…」

「そう言う事です」

「ヤニックも付いて行くと言いますね~。言ってはダメだと言っても聞かないと思いますし…」


俺が魔族達の城に行く事を伝えると、フェリアンさんは考え込む様に、アルベールさんは浮きながら少し震えている。

どうやら、フェリアンさんはその時の事について考えている様だ。

アルベールさんは、これから確実に起きる事を思って悩んでいる様だ。


「ふむ、ヤニックとアルベールさんが残ってくれたら何とかなりそうですけど…」


フェリアンさんがそう言うと、浮きながら震えているアルベールさんを見る。

すると、


「そうですね。2人でヤニックを説得してみましょうか」


アルベールさんがそう言って、フワフワ飛ぶ。

ヤニックがそんな簡単に折れるとは思わないけど…。

その後、夜になるまで俺はギルドで皆と交流した。

それまでにヤニックは、飲んでは戻して、飲んでは戻してという風になっていて、その度にザールさん怒られていた。

今は家に帰るために、ヴェルーズから出発して歩いている。


『そう言えばリーシャ、人の姿に戻らないの?』

『たまには、ずっとこうしているのも良いかなと思ったの…良い?』

『良いよ。最近はあまりこうして無かったね』

『えぇ。シュウ、魔拳を使って』

『?良いよ』


俺はそう言って、魔素を圧縮して腕に纏わせる。

すると、


『この感じ好きなの…。シュウに抱きしめられている感じがして。安心するわ』


リーシャがそう言う。

それから少し、俺とリーシャはゆっくりと夜道を歩いた。


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