装備
ザールさんにそう言われた俺は二つ返事で了承すると、すぐに移動となった。
冒険者ギルドを出る時にヤニックも付いて来ようとしたが、アルベールさんに止められて渋々引き下がっていた。
アルベールさんはヤニックの世話をするからと言って、ギルドに残った。
今は、俺と腕になっているリーシャ、それにザールさんでヴェルーズから少し離れた草原に来ている。
それにしても、今回のザールさんの装備を見ると、どんなドラゴンだったんだろう?
俺がそう思っていると、
『あれは黒竜の素材を使ってるわ』
リーシャがそう答えてくれる。
『黒竜って?普通のドラゴンとは違うの?』
『えぇ。前に使っていたドラゴンの素材はただのドラゴンの素材だったわ。でも今回の素材に使われてるのは黒竜の素材。ドラゴンの中でも上位種の素材よ』
俺の質問にリーシャが教えてくれる。
つまり、前の時より更に強くなっているって事か…。
気を引き締めないとな。
俺がそう思っていると、前を歩いているザールさんが止まる。
「ここら辺で良いだろう」
そう言って振り返るザールさん。
「よろしくお願いします」
「よろしく頼む」
俺とザールさんは互いにそう言って、距離を取る。
ここからは、気を抜いてはいけない。
ザールさんからは殺気とまではいかないけど、闘気が漲っている。
気を抜いたら、ただの怪我では済まないだろう。
俺はそう思いながら、魔素を圧縮してリーシャを覆う。
『この感じ…良いわ』
リーシャがそう言うが、何が良いんだろう?
とりあえず、魔拳を使っているが、どうすれば良いだろうか考える。
下手に剣で攻撃するのもわからないから、接近する事はなるべくしたくない。
俺がそう思った瞬間、ザールさんが大剣を構える。
魔視を発動して、ザールさんの様子を伺った瞬間!
「ハァァ!!」
ザールさんが大剣を振るうと、黒い炎が俺に迫ってくる!
俺は慌てて、炎を避ける!
速い、魔視の反応とほぼ同時に剣を振ったんだ。
おかげで、まだあの炎がどういうものかわからない。
『シュウ、手伝う?』
『ううん。大丈夫だよ』
リーシャが心配そうな声を出す。
駄目だ!
心配させる様な俺じゃ駄目なんだ。
「魔翔大剣!」
俺は魔素を圧縮して大剣を作る。
ザールさんには見えていないだろうが、俺の動きに気づいたのか剣を構え直している。
俺も剣を構え、脚に力を籠める。
そして、一気に地面を蹴り、ザールさんの懐に入ろうとする!
だが、ザールさんはそれを見越していたのか、少し後ろに下がっている!
これじゃあ弾かれる!
もう一歩前に出ないと!
俺がそう思って、更に地面を蹴った瞬間!
ザールさんが俺に体当たりをしてきた!
「グッ…」
俺の口から苦痛の息が出てしまったが、何とか持ちこたえ様とする。
だが体勢が崩れた隙を、ザールさんは見逃さない!
更に俺に斬りかかってくるが、俺も一方的にやられるつもりはない!
俺は地面の魔素を操って、俺の下の地面を盛り上がらせて、ザールさんの足元を沈ませる!
「うおッ!?」
一瞬で立場が変わった俺とザールさん。
そのまま俺は魔翔大剣を握りしめ、ザールさんに斬りかかる!
だが何度も大剣を振るうが、ザールさんの大剣に防がれてしまう。
圧倒的な力なら魔人化が1番だが、下手に力を入れてザールさんを傷つける訳にはいかない…。
どうすれば、ザールさんに勝てるんだ!?
俺がそう思っていると、
『シュウ、少し良いかしら?』
リーシャが声を掛けてくる。
『な、何?』
俺は剣を振りながら、リーシャの問いかけに答える。
『私が見た感じ、この男が使っている大剣から出てくる黒い炎は、火、雷、闇の3つの魔法が混ざっているわ。それが出来た黒竜だと思うんだけど』
リーシャがそう教えてくれる。
あの黒い炎に3つの属性魔法か…。
凄いな…、それなら俺も少しだけ本気を出しても良いだろう。
俺はそう思い、腕だけを魔人化させる。
更に連撃の速度が上がり、一撃一撃が重くなっているだろう。
「ぬッ…くぅ…」
俺の攻撃を受け止めているザールさんが、苦しそうに声を出す。
すると、ザールさんの背中から翼が生える!
「へ?」
俺も、突然の事で変な声を出して動きを止めてしまう。
その隙に、ザールさんが俺から一気に距離を取る。
『ど、どういう事?』
リーシャも予想できない事だったのか、困惑している。
どういう事だ?
俺はそう思いながら、空中にいるザールさんを見る。
ザールさんも一度態勢を立て直したいのか、すぐに斬りかかってくる事をしない。
だが、俺だって空は飛べる。
俺はそう思いながら、足に魔素を集中させて空中を駆け上がる。
ザールさんは、俺が自分と同じ高さまで来た事に驚いている様だ。
「それは、どういう仕組みなんですか?」
俺がそう聞くと、ザールさんは後ろの翼を見て、
「新しい防具の力だ。防具も新調して良い物になったんだ。MPの消費は大きいが、速さにおいては中々なものだ」
そう言う。
凄い装備を作れる人がいるんだな…。
俺がそう思っていると、ザールさんが大剣を構え直す。
その瞬間に、俺に斬りかかってくる!
「グッ…」
速さに大剣の重さ、ザールさんの腕力でとても重い一撃になっている。
受け止めた時に気づいた。
この攻撃は防いでいたら、俺が押し負けると…。
「負けるもんか!」
俺はそう叫んで、脚にも魔素を浸透させて魔人化をする。
これで俺も速さがある!
俺は思い、ザールさんの一撃を最小限の動きで躱して、ザールさんに斬りかかる!
だが、ザールさんも連撃を躱していく。
その瞬間、ザールさんの握っている大剣の周りの魔素に変化が起きる!
俺は慌てて、ザールさんから距離を取る!
「流石に気づいたか」
そう言って、大剣を高く上げるザールさん。
大剣からは、黒い炎が燃え上がっている!
『あれはマズいな。リーシャ、迎え撃つのに手を貸して欲しい』
俺がそう言うと、
『任せてシュウ!どんな魔法でも良いわ』
リーシャがそう返してくれる。
「これを使ったら、MPが切れる。それが決着だ」
ザールさんが俺にそう言う。
ザールさんの攻撃を耐えれば、俺の勝ちは確定される。
だが…。
「なら、俺も、全力でいかないといけませんね」
それでは、全力で戦ってくれるザールさんに申し訳ない。
「黒極呪爆焔!!」
ザールさんが、大剣を振り下ろす!!
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