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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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ザールさんの姿が、今までとは違う。

身に着けている防具が、高級そうな防具になっている。


「少し時間が掛かってしまってすまない」

「いえいえ、俺もつい最近まで修行してましたから」


俺がそう言うと、ザールさんの周りを飛ぶアルベールさん。


「ザールが無事で良かったですよ」


そう言うアルベールさんの声は、何というか、心配など最初からしていない様だった。

アルベールさんはザールさんが無事に戻ってくると信用してるんだろう。


「うぅ~師匠~。良かったですご無事で~」


ザールさんに抱き付いて、涙を流すヤニック。


「待て待て!お前が酔って涙を流したら、次は必ず吐くだろう!離れろ!」


そして、そんなヤニックを全力で引き離そうとするザールさん。

ザールさんの腕力で、簡単に引き剥がされて地面に崩れ落ちるヤニック。


「うぅ~し…師匠~、良かった~…うっぷ…」


ヤニックの反応を見て、周りの冒険者達がヤニックを外に連れ出す。

その瞬間、ヤニックの粗相をする声とヤニックを外に運んだ冒険者達の悲鳴が聞こえてきた。

どうやら、冒険者達に悲劇が襲ったらしい…。


「ここに来ると落ち着きがない…」


ザールさんはそう言ってため息をつくが、顔は苦笑しており少し嬉しそうだ。

やはり、少し騒がしくてもここが落ち着くのだろう。


俺がそう思っていると、ザールさんが、


「そう言えば、新しくなった俺の剣を見てくれ」


そう言ってくる。

そう言えばザールさんの背中には、武器が見えない。


「良いんですか?」

「当たり前だ。ここで皆に見せる為にわざわざああやって持って来たんだ」


ザールさんはそう言って受付カウンターの端を指差す。

ザールさんの指差した方を見ると、そこには布に被っている物が見えた。

どうやら、あれがザールさんの新しい武器なのだろう。

ザールさんがカウンターの端に行って、武器を持ってくると、ギルド内に残った冒険者達が盛り上がる。

その声を聞いて、ヤニックの世話をしに外に出て行っていた冒険者達がギルド内になだれ込んでくる。


「…ぅ…ししょ~…俺も…」


ヤニックまで中に入ってきてしまった…。


「大丈夫かヤニック?」

「うぅ…大丈夫に…決まってるだろ…」


俺がヤニックにそう聞くと、ヤニックは口に手を当てながら俺にそう言ってくる。

本当に大丈夫なのだろうか…。

ザールさんの武器をお披露目と同時に、ヤニックのアレもお披露目は止めて欲しいが…。


「これが…」


おっ!ザールさんが武器の布を手に掴む。

皆が注目する中、遂に最強の冒険者の武器が!


「俺の新しい武器だ」


姿を現す!

ザールさんの手に持たれているのは、前回の竜焔剣と同じくらいの大きさで全体的に黒い。

竜焔剣は刃の銀色とドラゴンの素材を使っていた部分の赤い部分があったが、今回の大剣は全体が黒い。

防具も黒いし、真っ黒だ。


「うぅ…師匠、カッコいいっす…」


ヤニック…。


「凄いですね。武器も防具も全てドラゴンの素材を使ってるんですか?」


俺がそう言うと、ザールは自分の身に着けている防具を見て、少し苦笑いをする。


「若作りしているように見えるか?」

「そんな事ないですよ」

「そうか」


俺がザールさんの質問にそう返すと、少し安心したような表情をする。

すると、


「そうだ。前にシュウと一緒にいた女性にお礼を言っておいてくれないか?本当なら俺から言いたいんだが…」


ザールさんが、申し訳なさそうに俺に言ってくる。

ザールさんが言っているのは、おそらくアルの事だろう。


「わかりました。言っておきますけど、また会う事が出来たら、ザールさんからもお願いします」

「あぁ、大丈夫だ。よろしく頼む」


俺達がそう言っていると、ザールさんは、


「もう1つ報告があった。実は少しだけ、故郷の人達を見つける事が出来た」


そう言った。


「そうだったんですか!それは良かったですね!」


俺がそう言うと、ザールさんが笑う。

それからザールさんと少し話していると、獣人の貴族の人がヴァランス帝国や違法な奴隷を片っ端から買っている人がいて、その人の所に数人の知り合いがいたらしい。

その人は善意で奴隷を買っては、生活環境を整えて解放する良い人らしい。

故郷の人も、解放してくれると言われたらしいのだが、ザールさんが自分の事が済んだら迎えに行くと言って、援助のお金を置いてその人の所に置いてもらっていると説明してくれた。

そうしていると、


「ザール、これからどうしますか?」


アルベールさんが俺とザールさんの所に来て、ザールさんにそう聞く。


「決まっている。あの魔族の男に奪われた竜焔剣を取り返さないといけない」

「なるほど、でもどうしたら良いんでしょうか?」

「確か、魔王を名乗っていた。つまり、魔族達の本拠地に行けば良いのだろう」

「そこまで行っても、あの手練れを何人も相手にするのは厳しいですよ」


ザールさんとアルベールさんの話を聞いていて、俺はなるべく遮らない様に声を出す。


「実は、俺達もザールさん達と同じでそこに乗り込もうと思っているんですよ。だから、良かったら一緒にどうですか?」


俺がそう言うと、2人はキョトンとした表情をする。

あ、あれ?もしかして、的外れな事言ったかな?

俺がそう思っていると、


「元から君は誘うつもりでしたよ?」


アルベールさんがそう言ってくる。


「え?どうして?」

「どうしてって、シュウさんがいれば、戦力になりますからね」

「だな」


俺の言葉にアルベールさんがそう返して、ザールさんが頷く。


「私はヤニックの御守りで大変ですから、戦力は多い方が良いですしね」

「俺の事~、呼びました~?」


アルベールさんがそう言うと、ヤニックが俺達の所にフラフラやって来る。


「何でもない。向こうで大人しくしていろ」

「あ~い!」


ザールさんにそう言われて、ヤニックはまたフラフラしながら帰って行く。


「そうだシュウ。頼みがあるんだが」


俺がヤニックを見ていると、ザールさんがそう言ってくる。


「何ですか?」

「剣と防具の具合を見るために、少し戦ってくれ」


俺の質問に、ザールさんはそう答えた。


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