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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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腕輪

その後、アルが持っている袋から、小さな酒瓶が取り出しておじいさんに渡すと、おじいさんは栓を抜き豪快にお酒を飲み始める。


「ふむ、確かに良い酒だ。すぐ作ろう」

「ありがとさん」


おじいさんはそう言うと、すぐに持っている金槌を変え、叩いていた物も変える。

アルはそこら辺の岩に腰掛けると、俺にこっちに来いと手を振ってくる。

アルに従い、彼女の元に行くと、


「ここ座れ。下手にうろちょろしてると、金槌が飛んでくるからな」


そう言ってアルは自分の横に俺を座らせる。

アルと2人で肩を並べておじいさんの仕事の様子を見ていると、凄まじい。

あの小柄な体からは予想できない重い一撃を金属に叩き付けている。

どんどん形が変わっていく金属を見て、少しワクワクしてしまう。

あの形から、どんな形に変わるのだろう。

そう思ってしまう。

それから少しして、おじいさんが出来た物を俺とアルの所に持って来てくれる。

近くで見ると、おじいさんは顔にしわがあり、髭も凄い。


「ほれ出来たぞ」


おじいさんはそう言って、まだ少し温かい腕輪を俺に渡してくれる。


「ありがとうございます」


俺がおじいさんにお礼を言うと、おじいさんは俺の事を睨んでくる。

俺、何か気に障る事してしまったか…。

俺がそう思っていると、


「大丈夫だぞシュウ。ジジイは別に怒ってないからな。目つきが悪いだけだ」


アルが俺にそう言ってくる。


「そ、そうなの?」

「あぁ!すげぇコエ~だろ」


アルはそう言って、おじいさんの髭を引っ張る。


「…痛いぞ、抜ける」


おじいさんがアルにそう抗議すると、アルがおじいさんの髭から手を放す。

どうやら、顔は強面だけど優しい人のようだ。


「あの、自己紹介が遅れました。シュウと言います」


俺がそう言うと、おじいさんはアルに引っ張られていた自身の髭を撫でながら、


「ドワイだ」


短くそう答えてくれる。


「よろしくお願いします」


俺がそう言うと、ドワイさんはアルに渡された酒瓶を俺に差し出してくる。

流石に断る事が出来ないな。


「いただきます」


俺はドワイさんから酒瓶を受け取り、少しだけ傾ける。

口に含んだ瞬間、喉が焼ける様に熱くなる!


「す、凄いですね…これ」


俺はそう言いながら、ドワイさんに酒瓶を返す。

すると、ドワイさんが俺から返された酒を飲む。

凄いな、俺にまで聞こえてくるくらい、ごくごく飲んでいる。


「大丈夫かシュウ?」


アルが俺にそう言ってくるが、体調に問題はなさそうだ。


「大丈夫だよアル、ありがとう」


俺がそう言っていると、ドワイさんが酒瓶に入っているお酒を飲み干してしまう。


「じゃ、ジジイ。ありがとうな。今度また良い酒手に入ったら持って来てやるよ」

「わかった。儂も何か良い物が出来たら渡してやる」


2人はそう言って、握手する。


「失礼しました」


俺がそう言って頭を下げると、ドワイさんは髭を撫でながら、


「また来い。今度は人でも飲める酒を用意しておく」


そう言ってくれる。

その後、俺とアルは洞窟から出る。


「ねえアル、ドワイさんはいつもあそこにいるの?」


洞窟から出て、少しだけ歩いている途中で俺はアルに質問する。


「あぁ、あいつはドワーフの中でも変わり者だからな」

「ドワーフ?」


俺がそう聞くと、アルは立ち止まる。


「ドワーフって言うのは、何て言うかな…。とりあえず皆外見が年取ってるって言えば早いな。鍛冶技術が凄くて、頑固者なんだ。酒が大好きだから、金より酒の方で取引する事が多い。ちなみに宝石とか鉱石も好きだな」


アルがそう言って説明してくれる。


「そう聞くと、ドワイさんも一緒の様に聞こえるけど、ドワイさんは何が皆と違うの?」


俺がそう聞くと、アルは笑って、


「ジジイは武具や防具の他に、装飾品なども作るんだ。他のドワーフは装飾品は作らないんだよ。ジジイだけは、宝石をあしらった宝飾品を作ったりしている。そのせいで、他のドワーフと争ってここに住みついちまったんだ。それからは、ほとんど他のドワーフとも交流はないらしい」


そう言った。

そこで俺はドワイさんに渡された腕輪を思い出す。

あれが出来るのは、ドワイさんだけなのか。


「そう言えばアル?ドワイさんが作ってくれて渡してくれたあの腕輪、何なの?」


俺がそう聞くと、アルは背負っている袋から腕輪を取り出す。

彼女はそれを自分の腕に付けると、もう1つを俺に渡してくる。

俺はそれを受け取り自分の左腕に受ける。

だが、特に変わったことは無く、どうすればいいのか困惑する。

すると、


「少し離れるからな」


アルがそう言って歩き出して、少し離れた所で止まる。

そして、


「共鳴せよ」


アルがそう言った瞬間、アルの腕輪から光が放たれる。

そして、腕輪から出た光が俺の腕輪とアルの背負っている袋に当たる。

どうやら、この腕輪はお互いに反応して光を出すようだ。


「これがあれば、互いにどこにいるか分かるだろ」


アルが歩いて来てそう言ってくる。


「凄いねこの腕輪。これって魔力を込めれば使えるの?」


俺がそう聞くと、


「そうだぞ。だから簡単に使える」


アルがそう答える。

試しに魔力を込めると、腕輪から光が出てアルの腕輪に当たる。


「これ、どんな素材が使われてるの?」


俺がそう聞くと、アルは腕輪を見ながら、


「シュウが修行をしている時に、リーシャと一緒にダンジョンに行って取ってきたんだよ」


そう答える。

そして、


「さ、これを皆にも渡さないとな」


アルが俺の手を握ってそう言うと、アルが一気に走り出す!

その後、アルの脚力のおかげでサンレアン王国に着く事が出来た。

城下町を見ると、たまにエルフの人達が見える。

そのすぐ傍には、騎士達が辺りを警戒しながら立っている。

あそこまで厳重なら、大丈夫だろう。

俺はそう思いながら、アルと2人で家に帰る。

家に着くと普通に皆が家に帰って来ていて、俺とアルを出迎えてくれた。

その後、すぐに夕食となり皆で食堂でご飯を食べた。

ちなみに今回の食事の担当はルリィとエルミールさんの最強コンビだ。

2人が作る料理は家の皆に好評で、早い者勝ちになってしまう。

大体アルが、食べる事に関しては最強だ。


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