逢瀬
あれから俺は、2人に待っていてくれと頼み、1人でエルフの森のあったところに来て後片付けを開始した。
全て綺麗…とはいかなかったが、ある程度出来たのでサンレアン王国の方へ帰ると、
「おいシュウ」
ティシール様に声を掛けられた。
「はい。何ですか?」
俺が返事をすると、ティシール様は俺に耳に顔を近づけて、
「これから…大変だな」
そう呟いて、俺の肩をポンッと叩く。
どういう事だろう?
そう思っていると、
「シュウ君!」
「シュウ!」
リザベルトさんとエルネットさんが、こっちに向かって歩いてくる。
2人共、顔が…怒っている。
「えっと…どうしたんですか?」
俺がそう言った瞬間、
「いつの間に結婚していたの!」
「聞いて無い、酷い」
2人が俺にそう言ってぶつかってきた!
何とか2人の衝撃に耐えて立っていると、
「しかもあんなにいっぱいの若い娘と結婚してたなんて…シュウ君の馬鹿!」
リザベルトさんがそう言って、ぺチぺチ叩いてくる。
そして、
「酷い…酷い」
俺にピッタリとくっ付いているエルネットさんがそう言ってくる。
見ると、皆がこっちを見てやっぱりか…と思っている様な呆れた表情をしている。
怜華さんと秋沙姉、春乃は久しぶりに瞳がドロドロと濁っているが…。
「あの…2人共離れた方が…」
俺がそう言うと、2人は更にヒートアップする。
2人の安全の為にも…少し離れた方が良いのだろう…。
だが俺にくっ付いている2人は、後ろに漂う空気に気づいていないようだ…。
2人は俺にくっ付いて、俺の体をポカポカ叩いてくる…。
「…柊ちゃん」
あ~…怜華さんが魔法の準備を始めてしまった…。
「り、リザベルトさん!エルネットさん!一旦落ち着きましょう」
俺がそう言うと、慌ててそう言うと、
「うへへ…シュウ君の体…」
「離れない」
2人がそう呟いている。
それからは大変だった。
怜華さんが魔法を使って俺達は離れる事が出来たのだが、それと同時に怜華さんがリザベルトさんとエルネットさんを魔法領域に監禁してしまい、誤解を解くのに大変だった。
何とか怜華さんを落ち着かせて、2人を解放する事に成功した。
少しして落ち着いたリザベルトさんとエルネットさんも、今はヴェルーズ近くの森の木々の調査に向かってくれた。
リーシャや怜華さん達も、とりあえず家に帰る事にしたらしいが、
「帰ってきたら、お話しましょうね…柊ちゃん」
怜華さんが別れ際にそう言った。
今夜は…大変だな。
俺はそう思いながらリザベルトさんとエルネットさんの様子を見に行く。
「この木はもう駄目ね。生き返す事も、切り刻んで肥料にする事も出来ないわ」
「母上、この木は大丈夫です。…精霊よ」
森には、他のエルフの人達も木を見て調査している。
邪魔するのもダメだな。
俺はそう思い、騎士の人にエルフの人達は任せてヴェルーズに行く事にした。
すぐ近くにあるので、時間は掛からなかった。
ギルドに行くと、ヤニックの雄叫びが聞こえる。
ん~、これは行ったら夜まで捕まってしまいそうだ。
俺はそっとヴェルーズから離れる。
家に帰ろう。
俺はそう思い、怜華さん達に何をされても頑張ろうと決意をして、サンレアン王国の家に帰る。
家に着くと、何やら騒がしい。
「…ただいま~」
おそるおそる家に入り、小さい声でただいまと言うが、誰も気づいて…。
「おかえりなさいませ」
エルミールさんは気づいたようだ。
スッと現れて、心臓がキュッとした…。
「エルミールさん、どうかしたんですか?なんか皆騒がしいんですけど」
「はい。シュウさんとの約束の時間で争っています」
「どういう事ですか?」
俺がそう聞くと、
「誰が最初にシュウさんとの時間を堪能出来るかという話し合いです」
エルミールさんがそう答えてくれる。
「エルミールさんは良いんですか?」
俺がそう質問すると、エルミールさんは微笑んで、
「今の時間は私とシュウさんの時間なんです。運良くルリィさんも話し合いに集中していて、シュウさんの気配に気づいていないようです」
エルミールさんはそう言って、俺の隣に寄り添い、
「あのエルフの2人とも、くっ付いて眠っていたらしいですね」
そう聞いてくる。
「…はい。それってアルが教えてくれたんですか?」
「そうです。ハルノさんが羨ましがっていましたよ」
「え?春乃が?」
「はい。そのスキルがあればシュウさんの監視がもっと出来ると言ってました」
「春乃がアルのスキルを使ったら…」
俺はそう呟いて想像するが、俺にとっては全然良い事が無い…と思う。
「仕方ないですよ、シュウさん」
「何がですか?」
エルミールさんが俺にそう言ってきて、俺は質問する。
俺が質問すると、エルミールさんは俺の隣から移動して、俺の目の前に立つ。
そして、俺に抱き付いてきた。
すると、
「愛する人の全てを知りたくなるのは、仕方がない事です」
エルミールさんが俺の耳元に顔を近づけてそう言う。
「シュウさんも、そうではないですか?」
エルミールさんにそう言われて、つい納得してしまう。
俺だって、リーシャやアルの昔の事を聞きたいと思うし、怜華さんや秋沙姉、春乃の前の世界での普段の生活とか聞きたいと思う。
ルリィの事だって、これからもっと知りたいと思う。
ティアやコレットさんの小さかった頃の事を知りたいと思う。
そして、
「そうですね。俺も…エルミールさんの事、もっと知りたいです」
俺はそう言って、エルミールさんを抱きしめ返す。
「…嬉しいです」
更にエルミールさんの抱き付いている力が強くなる。
そうだな、春乃は俺の事を大切に想ってくれているから、監視したいというんだ。
もう少し…春乃の監視癖を許そう。
俺がそう思っていると、何やら視線を感じる。
だが、周りを見ても誰の姿も見えない。
すると、
「シュウさん、知っていますか?」
俺に抱き付いているエルミールさんが声を出す。
「何をですか?」
俺がそう聞くと、
「ハルノさんのスキルで、今も私達のこの逢瀬も見られてしまっているんですよ」
エルミールさんが俺にそう言って、俺の耳にキスをした。
その瞬間、春乃の怒号が家に響き渡った。
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