引っ越し
その後、リーシャや皆が手伝おうかと聞いてくれたが今日は見ていてと言って、俺はティシール様と打ち合わせをした。
エルフの森はヴェルーズ近くの森のサンレアン王国により近いところに移動する事になった。
その方が、何かあった時にすぐに駆けつける事が出来るからだ。
それと同時に、移動時間を少なくして、変な者達との接触を遮るためでもあるらしい。
当分の間は、サンレアン王国の騎士団がエルフの人達の護衛をすると言ってくれたので安心だ。
話し合いと確認を終えて、俺は皆に挨拶をしてエルフの森に向かって駆け出す!
そして、エルフの森に到着した。
俺がエルフの村に小走りで向かうと、エルネットさんが村の入口で待っていた。
「エルネットさん!今からやりますから、村の皆を一度集めて下さい!」
俺がそう言うと、エルネットさんはこくり…と頷いて、村の皆に声をかけ始めてくれる。
俺は近くに生えているエルフの森の立派な木に触れて、木の根がどこまで生えているのかを感じ取る。
「ん?こんな立派な木なのに、根は普通の木と同じくらいだな」
俺がそう独り言を言っていると、
「シュウ、集めた」
後ろからエルネットさんが声を掛けて来た。
「ありがとうございます」
俺はそう言って、エルネットさんが集めてくれた村の皆に向かって、移動先の事とか待遇について話した。
最初はこれからの事に怯えていた村の皆も、だいぶ安心してくれている。
「じゃあシュウ君、お願いしても良いかしら?」
「はい。任せて下さい!でも、少しだけ手伝ってくれるとありがたいです」
俺がそう言うと、
「何をすれば良い?」
エルネットさんが聞いてくる。
「森の外に数人、配置してくれるとありがたいです」
俺は、エルフの人達から何人か森の外で魔法を発動していて欲しいと頼んだ。
本当に発動しないで、準備段階だけで良いと伝えると、リザベルトさんとエルネットさんも含めて、8人のエルフの人達が森の外で魔法を準備をする事になり、村にいる者達は自由で大丈夫だということを伝える。
そうして、俺はエルフの村から出て森の外に出て、魔視を発動する。
見ると、まだ皆魔法の準備をしていないようで、魔法の反応が見えない。
それから少しして、魔素に反応があった。
少しずつ数が増えていき、8つの魔素の反応が見えた。
準備は出来た。
「よし!始めるか」
俺はそう呟いて、魔素を体に浸透させていく。
「…魔人化」
体に力が漲る感覚。
だがそれと同時に、破壊衝動が出てくる…。
魔族もこんな感じなのだろうか…。
いや、今は気にしちゃいけない。
「魔翔剣」
俺は魔素を操り、普段作っている魔翔剣の数倍の大きさの物を空中に浮かせて、俺と森の外で魔法の準備をしているエルフの人達の少し離れた地面に突き刺す!
後は簡単だ。
「鋼魔拳」
魔素を操り、腕を作る。
地面に空いた穴に手を入れて、持ち上げる!
流石に、森は重いな…。
そう思いながら一気に持ち上げると、木の根を傷つけないで地面を持ち上げる事に成功した。
だが、流石に土が崩れている。
俺は魔素を操り森の下半分を固めて、崩壊を止める。
すると、
「シュウ君、森が!森が!」
リザベルトさんが俺の元にやって来た。
「リザベルトさん、村に戻っててください。後は俺が運んでいきますから」
俺がそう言うと、
「わ、わかったわ。よろしくね」
リザベルトさんは精霊術で俺に持ち上げられている森に入っていく。
皆も乗り込んだようで、周りには誰もいない。
俺は脚に魔素を纏い、力を溜める。
そして、地面を踏み込んで一気に加速する!
後ろで轟音がしたけど、地面が割れたくらいだろう。
後で直しに来たら、ついでに直しておこう。
俺はそう思いながら、どんどん加速していく。
森の中が大変になっているかもしれないよな…。
俺はそう思って、森の外側に魔素の壁を作り森に風が通らないようにする。
「これで大丈夫かな」
俺はそう呟いて、更に加速する!
それからすぐに、サンレアン王国に辿り着く事が出来たのだが…。
「見ろあれを!魔法を使わないで森を持って来たぞ!」
ティシール様がお腹を抱えて笑っている。
確かに持ってきた方法はあれだけど、そこまで笑う事かな?
すると、
「ひ~ッ!面白いもの見せてもらった。おいシュウ!こっちに持ってこい!」
ティシール様がそう言って空中に跳ねる!
俺も彼女の後を追うために地面を蹴ると、地面を砕いてしまった…。
その後、ティシール様の指示に従ってエルフの森を陥没している地面に置く。
どうやらこの穴は、ティシール様が作った穴らしい。
掘るなんて事は面倒だから、殴ったと言っていた。
少し穴の方が大きいから土を森と穴の隙間に入れないといけないな。
そうしていると、森からリザベルトさんが出てきた。
「シ、シュウ君?もう着いたの?」
リザベルトさんが俺にそう聞いてくる。
「はい。着きました」
俺がそう言うと、ティシール様が俺の隣に来る。
「貴女がエルフの王か?」
ティシール様がそう聞く。
「王というか、村長です」
リザベルトさんがそう答えて、森から出てティシール様の前に立つ。
そして、
「これから、よろしくお願いします」
リザベルトさんはそう言って、ティシール様に頭を下げる。
すると、
「私達は対等の関係です。頭を上げて下さい。こういう時は…」
ティシール様はそう言いながら、リザベルトさんに手を出す。
リザベルトさんも頭を上げて、差し出された手を掴む。
「互いに、良い関係を築いて行きましょう」
「はい。全力を尽くします。私達は少し臆病と言いますか、人や他種族に怯えている所がありますけど、よろしくお願いします」
「誰でも初めはそうです。仕方がない事、気にしないで下さい」
ティシール様とリザベルトさんがそう言う。
良かった。
さて、エルフの森の跡地の修繕でもやりに行こうかな。
俺がそう思った瞬間、
「シュウ~!」
「シュウ」
リーシャが飛行魔法で飛んできて、エルネットさんが森から出てくる。
だが、リーシャとエルネットさんはお互いの顔を見て、俺の顔を見る。
そして、エルネットさんはもう一度リーシャの顔を見て、
「誰?」
そう呟いた。
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