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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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往復

部屋に入ると淀んだ空気が漂い、部屋の中は暗い。


「それで、仕事っていうのは?」


ティシール様は椅子にドカッと座り、俺にそう聞いてくる。


「実は、エルフ…」

「待て、エルフと言ったか?」

「は、はい」


ティシール様が俺の言葉を遮ってそう言ってくる。


「エルフは他種族との交流が無いと聞く。どこで知り合った?」


ティシール様が質問してくる。


「冒険者の依頼でエルフの村に行ったんです」


俺がそう言うと、ティシール様は机に置いてある数枚の紙を眺める。

俺はその様子を黙って見ていると、


「シュウ、エルフの人達をサンレアン王国に連れて来る事は出来ないか?」


ティシール様が予想外の事を言う。


「実は、俺も同じ様な事を頼みに来たんです!」

「何?どういうことだ?」


俺がそう言うと、ティシール様が机に身を乗り出して聞いてくる。


「エルフの人達は魔波の時に危険な状況になるところだったんです。そこで、それを危惧したエルフの村の村長が、他種族との交流が重要ということで話があったんです。けれど、村の他のエルフの人達が、代々受け継いできた森を手放したくないという事になってしまったんです」


俺がそう説明すると、ティシール様が、


「では、エルフ達は森から移動できないな」


そう言う。


「そこで思い付いたのが、ヴェルーズの近くに森があるじゃないですか。あそこにエルフの森を移動させるのはどうかと思ったんです」


俺がそう言うと、ティシール様が腕を組んで、


「私もその森の事で話があったんだ。あの付近に家を建てて欲しいとシュウが言ったのを、出来ないと言ったが、それには理由がある」


そう話してくれる。


「何があったんですか?」

「実は、あの森の木々が病に侵されて死にかけていたり腐っていたりしている。そこで、森の賢者であるエルフにどうにかしてもらおうと思っていたのだが…。なるほど、エルフの森ごと移動か…。その考えは無かったな。とても…面白そうだ」


ティシール様はそう言って笑う。


「だが、そうなるとエルフの森に人が通る様になるな。それは大丈夫なんだろうか?」


ティシール様が聞いてくる。


「どうなんでしょうか…そうだ!ティシール様、書状を書いて下さい。そうすれば俺が走って届けますよ」


俺がそう言うと、


「そうか。なら書いてみよう」


ティシール様は机の上にあった紙の束を下に落とす…。

豪快に…。

俺はティシール様が豪快に下に落とした書類を集める。

あまり見てはいけない物の可能性もある故、極力見ない様にする。

そうして紙をある程度整えていると、


「書けたぞ。持っていってくれ」


ティシール様が俺の頭の上に手紙を乗せてくる。


「わ、わかりました。あと、これ」


俺はそう言って、ティシール様に書類の束を渡すと、


「すまないな。あまりにも面白そうな事に、血が騒いだ」


ティシール様はそう言って、書類の束を受け取る。


「では行ってきます」


俺はそう言って、部屋から出ようとすると、


「待てシュウ。これからは窓から入って来い」


ティシール様がそう言う。


「どうしてですか?」

「わざわざ城の中を歩くのは面倒だろう。窓を開けてある時は、そこから入って来い。閉まっていれば、会う事が出来ないという事だ」

「わかりました。そうします」


俺はそう言って扉を開けて、部屋から出る。

その後、今度はサンレアン王国からエルフの森まで走る事になったのだが…。


「さ、流石に…疲れるな」


大口を叩いておいて情けない。

これからは基礎体力も上げないといけないな…。

俺はそう思いながら、ルリィ特製回復薬を3本一気に飲み干すと、魔素を纏い駆け出す。

それからすぐに、エルフの村に辿り着いた。

そして、エルフの村の人達が集まっている。


「シュウ君!こっち来て!」


リザベルトさんが俺の事を呼ぶ。

俺がリザベルトさんの元に行くと、


「シュウ君が今回の問題に協力してくれるのよ。人でも、シュウ君は信用できるでしょ?」


リザベルトさんは、俺の手を握ってそう言う。


「ま、まぁそうだが。他の者達はわからないだろう!」

「わからないからこそ、話し触れ合わないといけないのよ」


どうやら、みんな不安なのだろう。

交流が無かった者とどう接すればいいのか、接して何か問題が起きないか。

様々な不安があるはずだ。


「すみません。話し合いの途中なんですけど、俺の信頼している王妃様から手紙を預かってきたんです」


俺はそう言って、ティシール様に渡された手紙をリザベルトさんに渡す。

手紙を受け取った彼女は、手紙を開けて中を見る。

すると、何やら顔が真剣な表情から悪戯を考えている子供のような笑みを浮かべ始めた…。


「なるほどね~。読んでみなさい」


リザベルトさんは手紙を他の人に渡す。

その手紙を1人が受け取り、周りの皆が覗き込む。

その光景を黙って見ていると、皆が安心した様なほっとした顔つきになる。


「わかりました。その方法でお願いします」


そして、反対していた人達の代表の様な人がそう言った。


「よし!シュウ君、お返しの手紙書くから、持っていってくれない?」


俺にそう言ってくるリザベルトさん。


「わかりました。任せて下さい!」


俺はそう言って、リザベルトさんから手紙を受け取る。

その後、俺はすぐにサンレアン王国に走る!

今日だけで凄く走っている…。

そして、サンレアン王国に着いた時には陽が傾いて夕方になっていた。


「早くしないといけないな」


俺はそう呟いて、王城のティシール様の部屋の位置を見ると、窓が開いている。

俺は空中を歩いて、ティシール様の部屋の窓から入ると、


「む!早いな」


ティシール様が振り返って俺にそう言ってくる。


「頑張りました。これ、返事の手紙です」


俺はそう言って、リザベルトさんから預かった手紙をティシール様に渡す。


「確かに受け取った」


ティシール様はそう言って手紙を受け取り、開けて手紙の中に目を通す。

そして、


「ふむ。話は決まった。シュウ、明日にエルフの森をヴェルーズ近くの森に移動しろ」


リザベルトさんは俺にそう言う。

どうやら、話は問題なく進んだようだ。


「はい!」


俺はティシール様の言葉に、決意を込めて返事をする。


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