旅
あれからリーシャと離れたんだが、
「恥ずかしい…」
リーシャは剣になっている。
相当恥ずかしかったようだ。
俺も恥ずかしかったけど…。
「リーシャ…その…元に戻らないの?」
「戻りたいけど今は無理よ…」
剣がベッドの上でバタバタしている姿もなかなか見る事ないだろう。
「うぅ…362年生きて来たけどこんな恥ずかしい事はなかったわ」
それからリーシャが元に戻るまで30分経過した。
「それでシュウ、これからどうするの?」
「俺は…」
「どうせセンパイの力になりたいって言うんでしょ?」
「うん」
「でも、今のシュウじゃ役に立つどころか足手まといになるわ」
「そう…だよな」
俺の今の実力じゃ先輩の力になれない。
「リーシャ、俺はどうしても強くなりたいんだ。どうすればいいのか教えてくれないか?」
「簡単よ、魔物を倒しまくればいいのよ」
「じゃあ、冒険者ギルドに加入すれば依頼があるから、それを受けて達成すれば大丈夫?」
「まぁ、そうね」
「よし!なら冒険者ギルドに入ろう!少しでも強くならないと」
「…じゃあ、私が送ってあげるわ。ちょうどステータスカードを更新しないといけないから、ギルドに行かないといけないし」
「本当か!ありがとう、リーシャ!」
リーシャにはお礼しきれないな。
それから俺とリーシャは準備をしている。
と言っても俺には持ち物なんて無いからリーシャの支度を待っている。
「召喚、双子の鏡」
ん?リーシャが魔法を使って大きな鏡を出している。
「シュウ、こっちに来て」
リーシャに呼ばれてリーシャの傍に行くと、
「シュウ、鏡の前に立って」
「うん」
リーシャに言われ鏡の前に立つと、鏡に俺が映っている。
すると。鏡の映っている俺が動き出した!
俺は動いていないのにだ。
鏡の中の俺は手を前に出すと手が鏡から出てくる。
怖っ!軽いホラーだ。
そうしているうちに鏡から俺の偽者が完全に出てくる。
「ご主人様、お呼びですか?」
偽者の俺がリーシャに話しかける。
声も一緒なのか~。
だが、表情と声に感情がない。
「えぇ、私はこれから出かけるからこの辺の警戒をしてほしいの」
「はい、わかりました」
リーシャがそう言うと、俺の偽者は外に出て行ってしまった。
「リーシャ、今のは?」
「あれは私が契約した双子の鏡という魔物よ。映った者の姿になるの、強いからここを空ける時はいつも留守を任せるの」
「何で俺の姿なんだ?」
「私の気分よ」
そう言ってリーシャが俺の左隣に来る。
「手を出して」
「あ、あぁ。はい」
リーシャがそう言って俺が左手を出すと、リーシャが握ってくる。
手、すべすべしている。
「じゃ、行くわよ」
「え?うん」
「転移!」
リーシャがそう言った瞬間、景色が変わり丘の上に立っていた。
「え?ここは一体?」
「魔法で一瞬でここに来たの」
なるほど。
瞬間移動みたいなものか。
「さ、シュウ。ここから少し行ったら町に着くわ。行きましょ」
そう言ってリーシャが歩き始めた。
俺もリーシャに続いて歩き始める。
「リーシャ、こう思うとリーシャって魔法を使う時に詠唱しないよね?」
「私は、スキルで無詠唱にしているのよ。どんな魔法でも詠唱しなくていいの」
「凄いんだな」
「魔法戦では有利よ。ただ、私以外にも無詠唱で魔法を使う人もいるから、それは気をつけないといけないけれど」
ふむふむ、リーシャほど強くても油断をしてはいけないということか。
そんな事を思っていると、灰色の狼のような魔物が7匹こちらに向かってくる。
「あれは、血黒狼ね」
「血黒狼?どういう意味だ?」
「あの魔物は餌の返り血で体がどんどん黒くなっていくのよ。体の色が赤黒ければ強いわ。あの色はそこまで強くはないわ」
「そうか、なら俺も…」
「ダメよ、今のシュウじゃ甘噛みで死んじゃうわ」
そう言ってリーシャが1歩前に出た。
俺って甘噛みで死ぬのか…
ま、まぁ魔物なんだから甘噛みですら凄い顎の力なんだろう。
「風刃」
リーシャが手を出し魔法を使うと、リーシャの手のひらに小さい竜巻ができる。
グルァァァ!!
血黒狼が鳴き声をあげて迫ってくる!
「…斬り刻め」
リーシャが呟いた瞬間、リーシャの手から凄まじい量の風が血黒狼に向かって飛んでいく。
ガッ…
血黒狼は鳴き声をあげる事も無く、リーシャの風に細々に斬られてしまった。
地面に広がっている血の海に、転がっている細かく斬られた血黒狼の肉。
「さてと、行きましょ。あともう少し歩けば街に着くわ」
「う、うん」
それから俺とリーシャは森に入ったが、特に何もなく森を出ると建物が見える。
「あそこが目的の町よ」
リーシャが建物がある方を指さす。
「早く行きましょ!」
そう言ってリーシャは俺の手を掴んで歩き始めた。
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