権利書
あの後、リーシャはすぐに魔法を解除してくれたが、リーシャが監禁魔法を使えることになったのは素直に喜んでいいのかと思ってしまった。
その後、皆でサンレアン王国に帰る事になった。
リーシャの転移魔法で帰り、訓練場に転移した後、皆はまた訓練を始めた。
俺も負けてられないと思い、訓練を始めようとしたのだが、メイドさんに呼び出されてしまった。
何でも、ティシール様が呼んでいるらしい。
俺は急いでメイドさんにティシール様のいる所を聞き、城内を走っている。
やがてティシール様の部屋に辿り着く。
息を整えて、扉のノックする。
「入れ」
部屋の中からそう聞こえて、俺は扉を開ける。
「失礼します」
扉を開けるのと同時にそう言って部屋の中に入る。
ティシール様は机の上の紙を見ている。
「来たか。呼び出して悪い」
「いえ、それでどうしたんですか?」
俺がティシール様にそう聞くと、ティシール様は立ち上がり俺の近くに来る。
「実はシュウの家の事で話がある」
「家って言いますと、前に話した報酬の事ですか?」
「そうだ。実はヴェルーズの近くには家が建てられそうにない。申し訳ない」
ティシール様がそう言って、頭を下げる。
「そ、そんな!頭を上げて下さい!大丈夫ですよ!家ならこれから探し…」
「という事で、実は城下町に私達の別荘がある。そこに住んでくれて構わない」
「え?城下町にですか?」
「そうだ。実は王族としてではなく平民か貴族の様に店巡りなどがしたい時に、そこに一時的に隠れ家の役割をさせていたんだが、今回の穴埋めではないがその屋敷を譲り渡したいと思っている」
ティシール様の言葉に俺は驚く。
そんな簡単に家の1つを譲り渡して良いものなのだろうか。
俺がそう思っていると、
「足りないか?」
ティシール様がそう言ってくる。
「い、いえ!そんな事ないです!」
俺がそう言うと、
「じゃあこれが屋敷の権利書だ」
ティシール様が机に置いてある紙を俺に差し出してくる。
俺は差し出された紙を受け取り、
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」
俺はそう言って頭を下げる。
「頭を上げろ。下げたいのは私の方なんだからな」
ティシール様の言葉に従い、俺は頭を上げる。
「家具とかはそのまま使っても良いし、気に入らないのなら交換しても良い」
俺が頭を上げるとティシール様がそう言ってくる。
「いえ、流石に勝手に変えるような事はしませんよ」
「…好きにしろ。あの屋敷はシュウ、お前の物だ」
「お暇が出来た時に、よろしければ来てください」
「そうだな。買い物するときに寄らせてもらおう」
「はい!」
その後、ティシール様はまだ仕事が残っている様だったので、邪魔にならない様に俺は挨拶をして部屋を出る。
ティシール様に渡された紙を見ると、契約書の様だ。
そこには屋敷の権利など書かれていて、住所も書かれている。
どうやら東側の方だ。
そう言えば、東側は露店とか買い物に行くには適している場所だが、西側には行った事がなかったな…。
今度行ってみよう…。
俺はそう思いながら、訓練場に戻ると、
「こうするともっと上手く魔法の詠唱を省略する事が出来るわ」
「なるほど。参考になるわ」
リーシャは怜華さんに魔法の話をしている。
他の皆を見ると、
「そうそう良い感じだぞ。ハルノはもっと精度を上げれば一撃で殺す事も出来るな。マナミはもう少し身体能力を上げれば良いな」
アルが春乃と真海ちゃんの訓練を見て、そう助言している。
そして、
「…こう縛ると、とても良い」
「なるほど、このような縛り方があったんですね。他の者にも教えておきます」
「でもそれって凄く恥ずかしそうじゃない?」
「…わ、私は何も見ていません」
姉さんが実演して縄の縛り方をエルミールさんに説明している。
そのすぐ側で、そんな2人を見てティアは目を手で隠しているが、指の隙間からチラチラ見ている…。
コレットさんは、単純に縄の縛り方に疑問を感じているようだ。
「…恥ずかしいのが、良いもの」
そして、コレットさんの質問に姉さんが力強く答える。
コレットさんにソッチの世界の事を教えないで姉さん…。
どうやら皆それぞれの事に集中しているらしく、俺が来たことにまだ気づいていないようだ。
今のうちに少し行きたいところがあったんだ。
俺はそう思い、走り出す。
城を出て空中に駆け出し、一気に加速する!
魔素の扱いが上手くなってきているおかげで、ヴェルーズがすぐに見えてきた。
俺は検問所の前で下り、普通に歩き出す。
目的地は、冒険者ギルドだ。
いつも通りの町並みを歩いて冒険者ギルドに辿り着く。
扉を開けると、
「「「…」」」
いつもは騒がしい冒険者達がとても静かだった。
俺は中に入り、受付嬢の所へ行き、
「ギルド長と話がしたくて来ました。冒険者のシュウです」
俺がそう言うと受付嬢は、
「少々お待ちください」
そう言って奥のギルド長の部屋に行く。
それにしても、皆静かすぎる…。
いつもの様子を知っていた分、不気味に感じてしまう。
俺がそう思っていると、
「シュウさん、ギルド長の許可が通りました。どうぞ」
受付嬢が戻ってきて、俺にそう言う。
「ありがとうございます」
受付嬢にそう言って、俺は奥へと進む。
奥の部屋の扉を叩くと、
「どうぞ」
中から声が聞こえる。
「失礼します」
俺はそう言って扉を開けて中に入る。
「シュウさん、お久しぶりです」
「すみません。挨拶も連絡もしないで」
「良いんですよ。元々冒険者とはそういうものです。それに今回はリザベルトが手紙を送ってきたので大丈夫でしたよ。ありがとうございます」
フェリアンさんがそう言って、軽く頭を下げる。
「いえ、俺もエルフの皆を救えて良かったです。でも、ザールさん達の事はすみません」
俺もそう言って、頭を下げる。
「…シュウさんが謝る事ないですよ。あの場合は予想外でした。アルベールが行方不明なのは聞いていますが、ザールとヤニックが生きているだけでも良かった」
「…そうですか。そう言えば、他の冒険者の人達が凄く静かだったんですけど、どうかしたんですか?」
「あぁ、ザール達がいないから活気が無くなっただけですよ。3人が戻ってきたらまたうるさくなりますよ」
フェリアンさんはそう言って苦笑いをした。
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