連れ去り
あれから3人の話を詳しく聞くと、春乃と真海ちゃんが買い物で城下町を歩いていたら、エロイーズさんが慌てた様子で跳んでいたらしい。
跳んでいた?
どうやら、エロイーズさんは夕食を買いに出掛けて帰ってきたら、部屋が荒らされて獅子原がいなくなっていたらしい。
獅子原は怜華さんの拘束魔法で身動きが取れなくなっていたはずだ。
そこでふと思ってしまった…。
怜華さんの魔法が違う事に。
そこで、怜華さんに拘束魔法はどうなったか聞くと、
「修行の成果で無くなっちゃったわ。今はこの魔法、監禁魔法しか使えないわ」
怜華さんがそう答えた。
つまり、怜華さんの拘束魔法が無くなったから、獅子原を拘束していた鎖が無くなり、獅子原は逃げたのではないか…。
俺がそう思っていると、ティアが慌てた様子で俺達の所にやって来る。
ティアの話を聞くと、地価の牢屋に拘束しておいた魔王ヴィネが、いつの間にか脱獄していたらしい。
見張りの騎士の人は、縛られて身動きが取れなくなっていたらしい。
怜華さんに聞くと、魔王ヴィネの魔法は自然魔法である事がわかった。
リーシャに聞くと、自然魔法を使って人を殺す事は難しいと言っていた。
どうやら自然魔法は人を殺める力はないらしい。
すると、皆の話を聞いていた真海ちゃんが口を開く。
「もしかして、エロイーズさんの家の強盗って魔王ヴィネなんじゃないですか?それであの妄想野郎を連れ去ったって事じゃないですか?」
真海ちゃんの発言に、皆が固まる。
「そうね。あのクズなら、ここに逃げてくると思うし…。ここに来ていないって事はあのクズに何かあったのかもしれないわ」
怜華さんがそう言うと、
「…何であのカスを連れて行くの?」
姉さんが怜華さんに聞く。
姉さんにそう聞かれた怜華さんはハッとして、
「勇者…そうだわ。確か魔王達は勇者を連れ去ると言っていたわ。一応あんなのでも勇者だったわ。つまり、魔王ヴィネはアレを連れ去る意味はあるわ」
そう説明してくれる。
つまり、魔王ヴィネは城の牢屋から脱獄した後、城の中にいた勇者達ではなく、獅子原を狙ってエロイーズさんの家に行ったって事か?
俺がそう思い、悩んでいると、
「今見たところだが、魔王ヴィネがその何とかっていう男を連れてるのが見えたぞ。なんか魔王ヴィネにめっちゃ話しかけてるな。鬱陶しそうにしてるぞ」
アルが空中を見ながらそう言う。
どうやらアルがスキルの力で見ているようだ。
じゃあやはり、今獅子原と魔王ヴィネは一緒にいるという事だ。
「怜華さん、魔王ヴィネが勇者を捕まえる意味は何か言ってましたか?」
俺が怜華さんにそう聞くと、怜華さんは首を振る。
「詳しくは何も言ってなかったわ。ティアリスさんは尋問か何かで口を割らす事は出来てましたか?」
首を振りながら怜華さんはそう言って、ティアの方を向いてそう聞く。
「いえ、頑なに何も言いませんでした。すみません、お力になれず」
ティアがそう言って表情を暗くする。
「ティアリスさんが謝る事は無いわ。大丈夫よ」
ティアにそう言う怜華さん。
その後、皆は獅子原の事をどうでも良いように修行を再開し始めてしまった。
「アル、俺は何かが起きる前に獅子原を取り戻そうと思ってるんだけど、どこにいるかはわかる?」
俺がアルにそう聞くと、
「放っとけシュウ。魔王ヴィネはともかく、男の方は魔王の体見て喜んでいるんだからよ」
アルは呆れたようにそう言ってくる。
すると、
「シュウ、それで修行の成果はどんな感じなんだ?」
アルが俺にそう聞いてくる。
「ん~、個人的にはもう少し改善できるかなと思ってるけど、結構自信あるよ」
俺がアルの言葉にそう返すと、アルは好戦的な笑みを浮かべて、
「久しぶりにオレと闘わないか?」
そう言ってきた。
すると、
「シュウとアル戦うの?私も…」
「ダメだ、リーシャは脇で見てろ」
リーシャが手を上げて言おうとするが、アルの言葉によって遮られてしまった。
「アル?意地悪は良くないと思うわ」
「リーシャが出てきたら殺し合いになるだろうが!オレはシュウの成長具合が見てえんだよ」
「…それなら仕方ないわね。少しだけシュウを貸してあげるわ」
「…実はお前、単純に寂しかったからシュウと2人っきりになりたいだけだろう」
「そうよ」
「誤魔化しもしないのか…」
リーシャとアルがそんな会話をする。
すると、
「私も柊ちゃんの戦う姿見たいわ」
いつの間にか怜華さんが俺の後ろに立ってそう言う。
怜華さんの言葉に続いて、皆も見たい見たいと言ってくる。
その後、すぐに俺達は移動する事になった。
そして現在、サンレアン王国から少し離れた草原に来ていた。
見ると、大人数になっていた。
今ここにいる人は、俺、リーシャ、アル、ルリィ、怜華さん、姉さん、春乃、真海ちゃん、ティア、コレットさん、エルミールさんの合計11人だ。
しかも、
「ティアリス様、コレット様、紅茶が出来ました」
「お姉ちゃん?何してるの?」
「…柊の犬として地面に座ってる」
「このお肉美味しい~!」
何故か布を敷いて、皆ピクニックになっている…。
姉さんも布の上に乗って欲しい…。
「頑張ってシュウ~!」
「柊ちゃ~ん!」
リーシャと怜華さんが俺に手を振ってくれる。
俺が手を振り返すと、もっとブンブン手を振ってくれる…。
リーシャ…突風が巻き起こってるよ…。
「よし、やるぞシュウ!」
俺が皆の事を見ていると、アルが声を掛けてくる。
「うん。よろしくお願いします」
「そんなに畏まるなよ。普通にやろうぜ」
俺が頭を下げると、アルがそう言ってくる。
それから皆がいる所から少し離れた所に行き、アルと向かい合う。
「最初から全力でいくからな」
「俺だって本気出すからね」
俺とアルはそう言い合い、構える。
アルは腕、足を変化させる。
魔視を発動して、アルの魔素の動きを見る。
それと同時に、修行の成果で得られた魔力の動きを見る。
アルの魔素と魔力の動きを見て、俺は考える。
アルは基本的に近接攻撃も遠距離攻撃も出来る万能の力がある。
俺はそう思いながら魔素を操り脚全体に魔素を纏わせる。
そして、
「「ハァァッ!!」」
俺とアルの拳がぶつかり合う!
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