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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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勇者と魔神

柊が修行している一方、リーシャとアルはあるダンジョンに潜っていた。


「それで?ここに何の用があったの?」


リーシャが隣を歩いているアルにそう聞くと、


「ここにある鉱石が必要なんだ。たまには2人で来たかったしな」


アルは笑いながらリーシャの質問にそう答える。


「…そう」

「それに、リーシャからシュウを離したかったていう理由もある」


アルがそう言うと、リーシャはアルの方を向いて、


「どうしてそんな事するの?」


アルにそう言う。

リーシャの目が少しジトッとしている。

そんな目で見られたアルは、苦笑いしながら、


「シュウの修行にリーシャがいたら、絶対甘やかしちまうと思ったからだよ」


そう言うと、リーシャは特に悪びれる様子も無く、


「絶対甘やかすわ」


アルにそう言う。


「おいおい…。それじゃあシュウの成長にならないだろ?」

「そ、それはそうだけど…」


アルの言葉に、リーシャの歯切れが悪くなる。


「シュウの為にも、我慢しろ」

「…わかったわ」


アルに説得されて、渋々承諾するリーシャ。

ちなみに普通に会話しているように見えるが、この間にリーシャとアルは歩きながら自分達に襲いかかってくる魔物を八つ裂きにしている。

2人は歩くのを止めずに、ただ黙々とダンジョン攻略を進めていく。


「なぁリーシャ、1つ聞いていいか?」

「どうしたの?」

「シュウの事、好きな女達がいるじゃねえか?それは今後どうするつもりなんだ?」


アルがリーシャの事を見ながらそう言ってくる。

アルにそう言われたリーシャは、苦笑しながら、


「そうねぇ。私的には独占したい気持ちがあるわ。でも一夫多妻制が認められているから、無理に止めるつもりはないわね。シュウや皆の稼ぎを考えると、一夫多妻も現実的だし…」

「あ~、確かにな。貴族じゃねえ普通の男が多くの女を妻にして、その後金がなくて女達は娼婦に、男は野垂れ死んだ奴らもいたなぁ」


リーシャの言葉に、アルが昔を懐かしむ感じでそう言う。


「レイカさん達も悪い人には見えないもの」

「毒盛ってきた奴らに言う言葉じゃねえな」

「あれは少し暴走してしまっただけよ。あの人達のシュウの事を見る目は、純粋な想いだけに見えるわ」

「…」

「何よ?」


突然黙ったアルが気になり、リーシャは隣にいるアルの事を見ると、アルは驚いている表情をする。


「いや、リーシャも女みたいな事言うんだなと思ってよ」

「待ちなさい。私は女よ」


アルの言葉にそう言い返すリーシャ。

すると、アルは笑いながら、


「だって昔のお前との会話内容なんて、魔物の効率的な殺し方とかだったじゃねえか」


リーシャにそう言うと、


「うぐっ…。それはそうだけど…」


アルにそう言われたリーシャは、顔をしかめながらアルの言葉を肯定する。


「あの魔物はこう殺した方が楽だし早いわよって言って、惨殺されまくった魔物達のかわいそうな叫び声が今でも思い出せるぜ」


リーシャの真似をして、更にリーシャの事を弄るアル。

その表情はとても良い笑顔だ。


「アルだって、狂った顔で魔物達を殺しまくってたじゃない」


アルにそう言い返すリーシャ。

その後も、リーシャとアルの2人で順調にダンジョンの奥へと進んでいく。

2人の歩いた道には、彼女達が築いた魔物達の死体が無数に転がっていた。

やがて2人は最下層の広い空間に辿り着く。


「ここにその欲しい鉱石があるの?」


リーシャがアルにそう聞くと、アルは周りを見回しながら、


「そのはずなんだがな…見当たらねえな」


そう答える。

アルがそう言った瞬間、地響きが起こる!


「なんだ?」

「どうせこのダンジョンの主か何かでしょ」


冒険者なら一斉に警戒態勢になる場面であるが、2人は全く気にしていない。

すると地面が割れて、亀裂から魔物が這い出して来た!


「…こいつって確か?」

「そうね。前に倒した事があるわね」


どんな状況にも動揺する事も無く、冷静に魔物の様子を窺う2人。

そして、


「ガァァァ!」


出てきた魔物が咆哮する!

その声に耳を抑える2人。

見るとその魔物は、岩でできた体をし、人の形をしている。

岩の巨人で、大きさは高さは5m程あり、大きい。

並の冒険者なら咆哮を聞いた瞬間、逃げ出すような事態だが…。


「リーシャ、オレがやっちまっていいか?」

「どうぞ」


アルは笑いながらリーシャに確認し、リーシャは退屈そうにアルに岩の巨人を譲る。


「ガァァァ!」


もう一度魔物は咆哮して2人に殴りかかる!


「よっと」


だが、岩の巨人の拳はいとも簡単にアルの力で動きを止める。


「今度はこっちの番だぜ。オラァッ!」


アルが拳を握り、岩の巨人の腕を殴った瞬間!

アルの力の前に、巨人の腕は簡単に砕け散ってしまう。

自身に起きた事に驚いたのか、それとも怒ったのかはわからないが、岩の巨人が大声を出す。


「…うるさい」


リーシャがそう呟くが、岩の巨人の咆哮でかき消されてしまう。

アルは巨人に手を振り、


「今度はテメェの番だ。さっきのと違って全力で来いよ?」


巨人にそう言う。

岩の巨人は最初の一撃すら本気で殴っていたのだが、アルは簡単に防ぐ事で様子見で殴ってきたのかと思っている。

その後、何回もアルの事を殴る岩の巨人であったが、攻撃は届かず、アルの剛腕によって破壊されてしまった…。


「終わった?」

「…歯応え無いな…」


リーシャがアルと粉々になった岩の巨人の残骸を見て声を掛ける。

アルは満足していなさそうにそう呟くが、


「おぉ!終わったぞ!…ん?」


後ろにいるリーシャに振り返ってそう言う。

そして、何かに気が付いたように岩の巨人の残骸に手を伸ばす。


「何してるのよ?」


アルの行動にそう聞くリーシャ。


「あったぞ!これだよこれ!」


アルが手に持っている物を上に掲げる。


「…それがアルの欲しがっていた鉱石なの?」


リーシャがアルの手に握られている鉱石を見て、そう質問する。


「そうだぜ、これで用事は済んだ。ありがとよリーシャ」

「良いわよお礼なんて。帰りましょう」

「あぁ!」


リーシャがアルにそう言って歩き出す。

アルは持って来ていた袋の中に鉱石を入れて、リーシャの隣に追いつくように駆け出す。

その後、来た道を戻っていると、


「ところで、その石は何に使うの?」


リーシャが隣を歩くアルにそう質問する。

そしてアルは笑いながら、


「これを持っている者同士は、互いにどこにいるか石が反応して教えてくれるんだ」


そう言った。

この石の恩恵をフル活用する者達がいるのは、言うまでもないだろう…。


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