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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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お茶会

柊が決意を胸に修行している頃、サンレアン王国の一室でティアリス・サンレアンがため息をついていた。


「はぁ…」

「どうしたのお姉様?」


私がため息をつくと、コレットが心配そうに声を掛けてくる。

私がため息を吐く意味は今の現状についてだ。

勇者様達が修行を開始して数日が経ったのだが、シュウさんがいなくなってしまったが故に、皆の機嫌が悪い…。

私だって…シュウさんともっと会話したいと思っていたのに…。

ただ、今はリーシャ様とアルネウス様も不在。

皆とシュウさんの情報交換をしたいと思っていたのに、重要な2人がいないと皆が昔の話しか出来ない。

それも機嫌が悪い原因かもしれない。

私がそう思っていると、コレットの専属騎士でメイドのエルミールが紅茶を淹れてくれる。


「ありがとうございます」


私はエルミールにお礼を言って紅茶の香りを楽しんだ後、少し口に含む。


「どうしたら…勇者様達の機嫌が治るかしら?」


私がそう言うと、コレットとエルミールが考える素振りをする。


「コレット様の様に、買い物に言って見て回るだけで機嫌が良くなるのと違いますからね」


エルミールがそう言うと、


「ちょっとエルミール!それじゃ私が単純みたいな言い方になってるわよ!」


コレットが大きな声を出してそう言う。


「コレット様は…単純ですよね」

「ムキィ~!」


コレットとエルミールのいつもの会話を聞きながら、私は考える。

そして、思いついた。

機嫌が良くなるかは分からないが、意識を逸らすくらいは出来るのではないかと。


「エルミール、勇者様方を連れて…いえ、私達から行きましょう」


私はそう言って椅子から立ち上がり歩き出す。


「何するの?」


コレットが立ち上がりながら、私にそう聞いてくる。

その質問に、私は胸を張って、


「お茶会を開きます」


そう言った。

それからレイカさん、アキサさん、ハルノさん、マナミさんを探す。

皆城の訓練場で修行の成果で得る事が出来た新しい魔法やスキルの力を互いに確かめ合っている。

4人の汗を流す姿に騎士の人達やメイド、他の勇者様が見とれている。

私は訓練に励んでいる4人の側に行くと、


「あれ?ティアリスさんだ。どうしたの?」


マナミさんが私に気が付いて声を掛けてくれる。


「お忙しい中申し訳ありません。根を詰めすぎるのもどうかと思いまして、休憩しませんか?紅茶を用意しましたから、お茶会でも」


私がそう言うと、マナミさんが笑顔で、


「それ良いね!怜華先輩!秋沙先輩!春乃!休憩しよ!」


3人に声を掛ける。

すると、声を掛けられた3人は動きを止め、


「「「コクッ」」」


静かに頷いた。

その後、4人に汗を流したいと言われて、私達は先に準備を進めることに。


「エルミール、茶葉は良い物にしなさい」

「わかりました」


そんな感じで部屋の準備をしていると、汗を洗い流した4人が部屋に入ってくる。

それからすぐにお茶会は始まった。


「どうしたのティアリスさん?いきなり皆を集めて」


皆で紅茶を飲んでいると、マナミさんが私にそう聞いてくる。


「皆様、シュウさんがいない所為で気分が優れていないようなので、気分転換になればと思ったんです」


私がそう言うと、


「大丈夫よ。柊ちゃんがいないのは柊ちゃんが頑張っているからだもの。妻として、しっかり待っているわ」


レイカさんがそう言う…、シュウさんの妻はリーシャ様では…。


「ご主人様の帰りを大人しく待っているのが、犬の務め」


アキサさんがウットリとした表情でそう言う…。

犬って…。


「監視できないのは…つまんないなぁ~」


ハルノさんが頬を膨らませてそう言う。

ハルノさんは気配を消すのが上手なんですよね…、気がついたら真後ろにいる事もありましたし…。


「先輩早く帰ってきてほしいですよね」


マナミさんがそう呟く。

マナミさんにはとてもお世話になってしまっていますね。


「そう言えばシュウって、今どこにいるの?」


コレットの一言で皆が固まる。

何故なら、私も含めてここにいる皆はシュウさんがどこで修行しているのか知らないから…。

知っているのは、リーシャ様とアルネウス様の2人だけ。


「もしかしたら女のいる所じゃないですか?」


マナミさんがそう言うと、途端に部屋の空気が暗く重くなる…。


「ま、まぁ、村などには女性はいるでしょうし…」

「現地妻ですかね?」


私の言葉を遮ってマナミさんがそう続ける。

更に肌に纏わり付くような空気になってくる…。

おかしい、以前のマナミさんだったらこんな火に油を注ぐような事は言わなかったはずなのに…。


「そんな人はいないと思いますよ。リーシャ様がいますし」


私がそう言うと、マナミさんがにんまりと笑い、


「エルフの母子と仲が良いって言ってましたよ」


そう言った。

その言葉を聞いた瞬間、部屋にいる全員がマナミさんの事を凝視する。

皆黙ってはいますが、表情で詳しく話せと言っています。


「…せ、先輩が帰ってきたら尋問しましょうよ!皆で!」


マナミさんが顔を青くしながら私達にそう言ってきます。


「…柊ちゃんに聞かないとね…。私の檻の中で…ふふ」


レイカさんがそう呟く。

その後、シュウさんの尋問方法を皆で話し合いをしながら紅茶を飲む。

皆黒い笑顔で紅茶を飲みながら話し合う姿は、悪事を企む者達の会議の様でした…。

やがて気がついた時には外が暗くなっており、解散する事になりました。

夜も深くなり皆が寝静まっている頃、私は訓練場で剣を振るいます。

昼間は国のお仕事で剣を握る事が出来ないので、私は夜に1人で黙々と剣を振っています。

体が熱くなり、肌から汗が出てくるのは、嫌いではありません。

すると、


「踏み込みが甘いよ。もっと地面を踏み締めな」

「お母様!」


声を掛けられて、その声がお母様の声で驚いてしまう。


「ティアが夜中に剣を振るっているのは知ってたよ」

「…そうだったのですか」

「…ティアが剣を握る理由は?」

「…国民を護るためです。私は護られているだけでは嫌です。国民の皆様と共に支え合い、共に笑い合って生きていきたいです」

「…ティアはあいつの押しの強さと私の戦闘好きが遺伝してるな。…無理はするんじゃないぞ。無理をして体を壊しては意味がない」

「ありがとうございますお母様」


私にそう言って、お母様は城に帰って行く。

跳んで窓から入るのは行儀が悪いって注意しているのに…。

それでも、お母様が気遣ってくれたと思うと、私はつい剣を握り締めてしまう。

尊敬する母の様に強くなりたいと願いながら、私は地面を踏み締める事を意識しながら、剣を振るう。


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