挑戦
あれから色々試してみたが、どれも魔素を操って作れる数が増えていた。
だが、これだけでは足りない。
どうすれば強くなれるんだろう。
とりあえず、基本的な魔素を扱い方と持久力が必要だな。
俺はそう思い、今作り出せるだけの魔翔剣を作る。
今俺が一度に作り出せる魔翔剣の数は、全部で12本。
これが今俺が無理せず作り出せる数だ。
それから俺は、更にもう1本魔翔剣を作り出す。
途端に魔素を操るのが苦しくなってくる…。
空中に浮いている魔翔剣が、消えかけている…。
それからしばらくの間俺はその状態を維持しているが、魔翔剣を動かそうとすると言う事を聞かないで変な方向に動き出す…。
俺は一旦作っていた魔翔剣を消す。
もっと効率的に作る事は出来ないかな…。
魔視を発動しながら、俺はもう一度魔翔剣を作る。
魔素の動きを改めて確認すると、改善する事がありそうだ。
今握っている魔翔剣は魔素を集めて圧縮した物だが、無駄がありそうだ。
やたらに魔素を集めて圧縮しただけの姿を見て、もっと魔素の節約を出来る気がする。
俺はその後、試行錯誤して魔翔剣を作り続ける。
すると、より少ない魔素で魔翔剣を作る事に成功した。
ただし問題は、前に作っていた魔翔剣より少し脆くなっている。
ただ、これは戦う相手によって使い分ける事が出来る。
単純に魔物と戦うなら、新しく作った少しだけ脆い魔翔剣で十分だろう。
固そうな敵や強そうな敵には、臨機応変に対応していこう。
俺はそう思いながら、新しく作れるようになった魔翔剣を一斉に作り出す。
魔素を節約すると、一度に作り出せる量も増えるようだ。
今空中に浮いている魔翔剣は22本だ。
魔力の量は作り出せる量に関係ないらしい…。
魔素の扱いを極めるしかないようだ。
それからしばらく、俺はただひたすら魔翔剣を作り出していく。
すると、
「お疲れ様です」
「ッ!!」
後ろから突然声を掛けられてビクッとする。
声がした後ろを向くと、セエレさんが微笑みながら、
「申し訳ありません。驚かせるつもりはなかったんですよ」
そう言ってくる。
「いえ、どうしたんですか?」
何でセエレさんがここにいるんだろうと思いながら、彼女にそう聞くと、
「気づいてないんですか?シュウさんが修行を開始してから既に10時間が経過してますよ」
「10時間!そんなにですか…。全く気が付きませんでした」
セエレさんの発言に驚きながら、上を見る。
「でも、陽が傾いていませんね」
俺がそう言うと、
「レクシシュ様がそこまで細かく作らなかったからですね。すでに夜ですよ」
セエレさんがそう教えてくれる。
「ここはただの箱庭。時間は経過せず、生き物も存在しない所です」
「そうなんですか…」
俺がそう言うと、セエレさんは手に持っていた包みを俺に手渡してくる。
「これは?」
「夕食です。ここでは狩りすら出来ないので、食べ物も無いんだと言っていました」
「わざわざすみません。今度何かお礼をさせて下さい」
「そうですね。ではレクシシュ様のお仕事を手伝ってもらえると嬉しいです」
セエレさんはそう言って、クスクス笑う。
「俺が手伝っても良いんですか?」
「はい。書類の分別だけでも助かります」
「それぐらいだったら、いつでも手伝うので声を掛けて下さい」
俺がそう言うと、セエレさんは、
「はい」
そう答えて、扉の方へ歩いて行ってしまった。
セエレさんが遠くで扉を通ったのを確認して、包みを開くとそこには焼き菓子が包まれていた。
俺は土の上に座り、
「いただきます」
そう言って口に運ぶ。
食べている最中も、魔素の使い方や動きを見て工夫する。
そう言えば、どれぐらいの大きさまで作る事が出来るんだろう…。
俺はそう思い、試しに自分の限界まで大きい魔翔剣を作り出す。
どんどん形作られていく魔翔剣…。
マズい…。
大きすぎてバランスが取れない!!
そう思った瞬間、大きすぎる魔翔剣が倒れていく!
制御も出来ず、慌てて霧散させようとするが、解除が間に合わず、魔翔剣が地面に衝突する!
激しい轟音が響き、突風が巻き起こる!
土煙で目をやられない様に目を閉じる。
少ししてから目を開くと、柄の部分は霧散させたから近くの地面に被害は無いが、刃の部分は霧散する事が出来ずに地面に当たったのだが、地面に亀裂が出来ている…。
完全な地形破壊攻撃だ…。
俺は地面の亀裂に近づいて下を見ると、暗い空間が出来ている…。
「やり過ぎた…。これは制御できるまでやらないようにしよう」
俺がそう言った瞬間、地面の亀裂がどんどん塞がっていく!
もしかして、どんなにこの空間を傷つけても修復していくのか…。
俺は改めて、レクシシュ様の異次元な力に驚愕する。
それから少しして、地面の亀裂は完全に跡形も無く元通りになった。
これなら、どれだけ破壊しても大丈夫なんだ。
そう考えると、今まで試したいと思っていた事とか沢山ある。
それは環境破壊になる可能性があり、もしそれをしてしまったらリーシャに迷惑が掛かると思って出来ずにいたことだ。
何度も試して、周りに被害が出ずに相手に攻撃出来るようになってみせる!
俺は新たな魔素の力を使うために、意識を集中させる。
その頃、レクシシュとセエレは、シュウの話をしていた。
「どうじゃった?あの男は?」
「そうですね。今は少し頼りないですが、これからの成長が楽しみで仕方ないです」
レクシシュの質問にそう答えて、クスクス笑うセエレ。
「セエレがそこまで気にすると言うことは、お主のあの事か?」
クスクス笑うセエレに、ニヤニヤした顔でそう聞くレクシシュ。
「そうですね。あの人に似ています。あの人は道を踏み外してしまいましたけど、彼は心配無いですね」
「それは何でじゃ?」
「たくさんの人に好かれているじゃないですか。あの人とは大違い」
セエレは愛しむ表情で、遠い彼方を見る。
「お主の愛も重いのぅ」
セエレを見て、レクシシュがそう言うと、
「軽い想いより良いじゃないですか」
セエレはそう言い返す。
「…そこまで良い男なのか?私にはそうは見えんが」
「長い付き合いだからこそわかる魅力と言うモノがあるのですよ」
「…わしにはわからんのぅ」
「レクシシュ様はまだ子供ですから、お菓子と甘い飲み物があれば良いんですよね?」
「わしを子ども扱いするな~!」
セエレの一言に、レクシシュが大声を出す。
その反応の仕方も子供の様ですよ…、そう思いながらクスクス笑うセエレ。
セエレは自身の右腕に触れる。
異常に冷たくなっている白い肌の右腕を…。
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